ドル高リラ安が一段と進行、リラ安と円安の綱引き
〇トルコリラ円、13日は7.94から7.85の取引レンジ、前日終値からは0.03円の円高リラ安
〇対ドルでは米CPI上昇で大幅利上げ観測強まりドル高リラ安加速、17.45で昨年12月以降の安値更新
〇13日発表のトルコ5月失業率は10.9%、4月の11.2%から改善
〇21日のトルコ中銀金融政策決定会合、現状維持にとどまると推察される
〇7.88以上での推移中は上昇余地あり、7.94超えからは7.98前後への上昇を想定
〇7.88割れからは7.82前後を目指す下落を想定、7.82前後では買い戻しも入りやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の7月13日は7.94円から7.85円の取引レンジ、14日早朝の終値は7.87円で前日終値の7.90円からは0.03円の円高リラ安となった。
ドル円が7月10日の参院選における与党大勝から11日午前に137円を突破して11日夜には137.75円へ一段高した局面でトルコリラ円は円安に押し上げられて7.94円まで戻したが、ドル円が12日夜に136.46円まで反落したことで上値が抑えられていた。
7月13日夜は米6月CPIが予想を上回ったことで米連銀による超大幅利上げ観測が強まったためにドル円が137.86円へ一段高となったが、一方ではドル/トルコリラにおけるドル高リラ安が一段と進行したためにトルコリラ円は13日夜にかけてはドル高リラ安に圧されて下落、ドル円の一段高の局面でいったん戻したもののその後はやや乱高下気味の推移となった。
7月14日午前序盤はドルトルコリラの動きがやや鈍る中でドル円の上昇により7.90円台を回復して13日午前高値に迫っている。
【ドル高リラ安が進行、12月23日以降の安値を更新】
ドル/トルコリラの7月13日は17.45リラから17.25リラの取引レンジ、14日早朝の終値は17.40リラで前日終値の17.30リラからは0.10リラのドル高リラ安となった。
6月24日夜にトルコ政府により外貨保有企業に対する新規融資規制策が発表されたところで狼狽的なドル売りリラ買いが発生したために6月22日安値17.40リラから6月27日高値15.90リラへ一時的に反騰したものの、材料消化とリラの先安感は変わらないとして再びドル高リラ安基調での推移へ戻り、7月9日のフィッチレーティングズによるトルコ格下げにより7月11日には17.40リラを付けて6月27日への上昇幅を解消した。
7月12日はリラ安一服でやや戻したものの13日は米CPIが予想を上回ったことによる大幅利上げ観測の強まりでドル高リラ安が加速して17.45リラへ安値を切り下げて昨年12月23日以降の安値を更新、終値ベースでは史上最安値を更新している。
7月13日に発表されたトルコの5月失業率は10.9%で4月の11.2%から改善、労働参加率も22.4%となり4月の21.6%から改善した。
【米連銀の利上げペース加速感がリラ安を助長】
7月13日夜に米労働省が発表した6月の消費者物価指数は前年同月比9.1%上昇で市場予想の8.8%を上回って5月の8.6%から加速、1981年11月以来凡そ40年ぶりの高水準となり、前月比も1.3%上昇で市場予想の1.1%を上回り5月の1.0%から伸びが大幅に加速した。コア指数には頭打ち感もあるものの、CPI発表を受けてバイデン米大統領が物価抑制が最重要課題と強調したことで、米連銀の7月26-27日におけるFOMCでは従来想定の0.50%ないし0.75%の利上げではなく1.0%の超大幅利上げが決定される可能性もあるのではないかと取り沙汰されている。
7月13日にはカナダ中銀も市場予想の0.75%利上げを超えて1.0%利上げを決定しており、インフレ進行を利上げペースを上げて抑え込もうという姿勢が強調されている。
パンデミック発生後に感染拡大の波が繰り返される中で景気回復が進んだためにサプライチェーンが混乱して人手不足とモノ不足による世界規模のインフレが進行し、そこにウクライナ戦争勃発とロシア制裁による混乱が輪をかけた状況にあるが、一向に改善の見通しが立たない中で主要国は毎月の利上げを強いられている。しかしトルコは「利下げがインフレを抑制して経済を活性化させる」とのエルドアン大統領による持論を背景に昨年9月から12月まで4会合連続で利下げを強行し、その結果でリラは昨年12月に史上最安値を更新し、日々の終値ベースでは6月から最安値更新が続いてインフレ率も6月時点で80%に迫るところまで深刻化したものの、インフレ抑制とリラ防衛のための利上げをしない姿勢を繰り返し強調している。
トルコ中銀の次回金融政策決定会合は7月21日に予定されており、市場の事前予想はまだまとまっていないもののインフレが収まらない状況では現状維持にとどまるのだろうと推察される。一方で7月26-27日の米連銀FOMCにおいて0.75%ないし1.0%の大幅利上げが決定されれば米連銀とトルコ中銀の政策スタンスの差が強調されてドル高リラ安が進行しやすくなると思われる。
【当面は円安とリラ安の綱引き】
ドル円は7月11日に137.75円へ上昇してからいったん下げたものの13日夜に137.86円を付けて昨年1月6日底102.57円以降の最高値を更新した。13日深夜に137円を試す小反落が入ったものの14日午前にはさらに高値を更新して138円に迫っている。
1998年8月11日天井で147.63円を付けた翌月以来、24年ぶりの円安水準にあるが、イエレン米財務相来日時に日米共同声明として円安けん制姿勢が示されたものの市場介入には否定的だったために口先介入の効果も薄かった。日銀の金融緩和政策は参院選の与党大勝や安倍元首相死亡等によっても当面は大きく変えようもなく継続するものと思われ、中長期的なドル高円安は継続してゆくと思われる。
ドル/トルコリラの動きが落ち着いているところでドル円の上昇が顕著になればトルコリラ円は円安効果で持ち上げられやすいが、リラ安が強調される局面では円安で支え切れずに下落しやすいと思われる。
現状のトルコリラ円は8円を下回った状況での下げ渋り型の持ち合いで推移しており、8円に迫るところでは戻り売りも出やすく、この間の安値を更新する場合は6月27日高値を起点とした下落期の継続として7円台序盤へ向けて下げ足が早まることも懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月6日夜と8日夕の両安値をダブルボトムとして上昇したが、7月12日午後高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたとして13日夕から15日夕にかけての間への下落を想定した。
7月12日夜安値から13日午前へ戻したものの12日午後高値には届かず、13日夕刻へ下落して12日夜安値を割り込んだもののその後の反騰で13日午前高値に迫っており、方向感の定まらない騰落が続いている。
このため7月8日夕安値から3日目となる13日夕刻安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避のうちは15日午後から19日午後にかけての間への上昇余地ありとし、13日夕安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして18日夕から20日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、7月13日夕安値からの反騰により遅行スパンが好転して先行スパンも上抜きかえしているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は7月13日夕に30ポイント台序盤へ低下したところから60ポイント超えへ戻しているので、50ポイント以上での推移中は上向きとして70ポイント超えを試すとみる。50ポイント割れからは反落に入るとみて40ポイント割れを試す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.88円を下値支持線、7.94円を上値抵抗線とする。
(2)7.88円以上での推移中は上昇余地ありとし、7.94円超えからは7.98円前後への上昇を想定する。7.97円以上は反落警戒とするが、7.92円以上での推移なら15日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)7.88円割れからは7.82円前後を目指す下落を想定する。7.82円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、7.88円を割り込んでの推移なら15日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月14日
16:00 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.0%)
16:00 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 10.8%)
16:00 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.7%)
16:00 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 14.7%)
7月15日
17:00 6月 財政収支 (5月 1439.8億リラ)
7月19日
16:00 7月 消費者信頼感 (6月 63.4)
7月20日
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 グロス (7/1時点 597.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 ネット (7/1時点 75.1億ドル)
23:30 6月 中央政府債務 (5月 336億リラ)
7月21日
20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会) 週間レポレート (現行 14.0%)
注:ポイント要約は編集部
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