ドル円見通し 参院選与党大勝による円安一服で136円台後半、日米財務相共同声明は口先(22/7/13)

11日午前からの買い一巡と高値警戒感から12日の日中は上値が重くなり137円台前半で推移した。

ドル円見通し 参院選与党大勝による円安一服で136円台後半、日米財務相共同声明は口先(22/7/13)

参院選与党大勝による円安一服で136円台後半、日米財務相共同声明は口先

〇ドル円、7/12日中137円台前半で推移、深夜136.46まで安値切り下げる
〇6月本邦PPI過去最高値更新、円安による輸入インフレ、消費低迷という「悪いインフレ」助長
〇日米財務相会談、円安けん制は口先介入と市場は受け止める、為替介入に関する議論なし
〇ユーロドル、7/12夕刻一時的にパリティを割り込む、景気後退懸念で先安観ぬぐえない状況
〇欧米株安に伴うクロス円下落、ドル円が下げる可能性に注意
〇米10年債利回り続落、終盤安値から反発して2.97%、NYダウは3営業日続落
〇IMFが米国景気見通し公表、22年GDPは2.3%に下方修正、景気大幅減速は避けられない見解
〇136.46割れからは136円前後への下落を想定する
〇137.20超えからは上昇再開とみて、137.75超えを目指す上昇を想定する

【概況】

ドル円は7月10日の参院選における与党大勝を受けて7月11日午前に137.27円をつけて6月29日夜高値137円を超えて一段高に入り、11日夜にはユーロ安等によるドル全面高を背景に137.75円まで高値を伸ばしたが、11日午前からの買い一巡と高値警戒感から12日の日中は上値が重くなり137円台前半で推移した。夜はユーロが1ユーロ1ドルを一時的に割り込むところまで下げてからやや持ち直したことでドル高一服となり、日米財務相による共同声明での円安けん制や欧米株安もあって深夜には136.46円まで下げた。その後は136円台後半での推移となっている。

【日米財務相の円安けん制も口先、PPI上昇で輸入インフレと円安感は継続】

日銀が7月12日朝に発表した6月の国内企業物価指数は前年同月比9.2%上昇の113.8となり3か月連続で過去最高値を更新、9%台の上昇を6か月連続とした。世界規模のインフレ進行が背景だがそれをさらに押し上げているのが円安であり、円安による輸入インフレが貿易収支と経常収支の悪化を招き、インフレによる消費低迷が鈍い景気回復を一層鈍化させ、日本の経済力を弱めるという「悪い円安」感を助長している。
6月の輸入物価指数は円ベースで175.7となり1983年2月以来39年ぶり高水準に達したが、前年比は46.3%上昇で過去最大を記録した。契約通貨ベースでは前年比25.8%であり、円安がインフレ率を倍増させている状況を示している。

イエレン米財務相来日に伴う日米財務相会談において急激な円安ドル高に対して共同声明による牽制を行ったが、市場は口先介入に過ぎないと受け止めてる。イエレン米財務長官は日米の金利差が非常に大きいが、最近の円相場の下落は金利差から予想されうる規模を上回っているとして行き過ぎであると市場を牽制したが、為替介入については「めったにない例外的状況でのみ容認しうる」とし、会談では介入について議論しなかったと述べた。インフレに悩む米国にとっては円安ドル高は輸入インフレ抑制要因となる。かつてのような円安による日本の輸出攻勢への懸念はないと思われるが、日本の事情を考慮して共同声明に付き合ったということだろう。

【ユーロドル、一時パリティを割る】

ユーロドルは7月12日午前に1.0004ドルをつけたところではパリティ割れをいったん回避したものの夕刻には0.9998ドルをつけて一時的にパリティを割り込んだ。その後は突っ込み警戒感から深夜高値1.0073ドルまで買い戻されたものの1.010ドルには届かず、13日早朝にかけては再び軟調な推移となっている。
2002年12月にパリティ超えへ反騰していたところ以来凡そ20年ぶりの安値水準にあり、2017年1月3日底1.0341ドルを割り込んだことでリーマンショック前の2008年7月15日天井1.6035ドル以降の最安値を更新中だが、主要国の金融引き締めによる景気後退、ロシアから欧州向けの天然ガス供給停止長期化への懸念、インフレによる消費低迷等によりリセッション入りへの懸念が強まっている状況でユーロが売られ、それにつれてポンドや豪ドル、新興国通貨も売られており、12日夜にかけてはドル高もやや一服で主要通貨が戻したものの勢いに欠けて先安感がぬぐえない状況が続いている。
ユーロ安を先導役としてドル高感が強まればドル円も上昇しやすいというのが基本だが、欧米株安を伴う場合はクロス円の下落による円高が勝りドル円も下げる可能性があると注意する。

【米10年債利回りは続落するも安値から反発】

12日は欧米株安、中国株安等による景気後退懸念が安全資産としての債券買いを優勢として米長期債利回りは総じて低下した。
指標の10年債利回りは前日比0.03%低下の2.97%で3%を割り込んだ。6月14日の3.50%をピークに7月6日の2.75%まで低下したところから3連騰で7月8日には高値で3.10%まで戻したが、今後の利上げを織り込んでの利回り上昇反応よりも株売り債券買いによる利回り低下が勝ったことで週明けの7月11日は前日比0.09%低下となり、12日も一時は2.90%まで下げた。しかし終盤は切り返して下げ幅を削っている。
2年債利回りは前日比0.03%低下の3.05%に終わったが、2年債と10年債の利回り逆転=逆イールドが続いている。

景気減速懸念からNYダウは前日比192.51ポイント安となり7月8日から3営業日続落となった。ナスダック総合指数も前日比107.87ポイント安となり11日の262.71ポイント安からの続落。感染再拡大報道を嫌って中国の上海総合株価指数も先週末から3営業日続落であり、欧米株安と共に中国株安も顕著になり始めている。
国際通貨基金(IMF)は7月12日の年次経済審査による米国景気見通しを公表したが、2022年のGDP見通しは2.3%とされて6月時点の2.9%から下方修正され、2023年も6月の1.7%から1.0%へと大幅下方修正された。金融引き締めによるリセッション入りは回避されるとしているものの景気の大幅減速は避けられないという見方のようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月6日夜に135円割れを買い戻されて136円台に到達したために7日午前時点では7月6日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして8日午前から12日午前にかけての間への上昇を想定した。
7月11日夜に一段高してからも137円台を維持していたので12日午前時点では上昇余地ありとしたが、137円割れを弱気転換注意として136.70円割れからは弱気サイクル入りとした。
7月12日夜に136.46円まで失速したため、11日夜高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしていると思われる。ボトム形成期は7月12日夜から13日夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあるが、137円台回復へ進めないうちは13日夜にかけてもう一段安する可能性がある。
137.20円超えからは強気サイクル入りとして14日夜から18日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では7月12日夜への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからの転落はぎりぎりで回避している。先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落して切り返せない場合は下げ足がさらに早まる可能性もあると注意する。

60分足の相対力指数は7月12日夜に30ポイント台へ低下してから戻したものの50ポイントに届かずにいるため、40ポイント割れからは下落継続として30ポイント台序盤を試すとみるが、50ポイント超えから続伸し始める場合は上昇再開とみて60ポイント台中後半へ向かう上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、136.46円を下値支持線、137.20円を上値抵抗線とする。
(2)137.20円を下回るうちは一段安余地ありとし、136.46円割れからは136円前後への下落を想定する。136円以下は反発注意とするが、137円以下での推移が続く場合は14日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)137.20円超えからは上昇再開とみて7月11日夜高値137.75円超えを目指す上昇を想定する。137.50円以上では戻り売りも出やすいとみるが137円台を維持しての推移なら14日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

7/13(水)
休場、タイ
バイデン米大統領、中東歴訪(7/16迄)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル建て (5月 787.6億ドル、予想 768.5億ドル)
未 定 (中) 6月 貿易収支・人民元建て (5月 5028.9億元、予想 4300.0億元)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 2.00%、予想 2.50%)

15:00 (独) 6月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (独) 6月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 7.6%、予想 7.6%)
15:00 (英) 5月 月次GDP 前月比 (4月 -0.3%、予想 0.0%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.6%、予想 0.0%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 0.7%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 5月 貿易収支・物品 (4月 -208.93億ポンド、予想 -205.50億ポンド)
15:00 (英) 5月 貿易収支・全体 (4月 -85.03億ポンド、予想 -85.00億ポンド)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.4%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -2.0%、予想 0.3%)

21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 1.0%、予想 1.1%)
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 8.6%、予想 8.8%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前月比 (5月 0.6%、予想 0.6%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 6.0%、予想 5.7%)
23:00 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 1.50%、予想 2.25%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 -662億ドル)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

7/14(木)
08:01 (英) 6月 RICS住宅価格指数 (5月 73、予想 70)
10:30 (豪) 6月 新規雇用者数 (5月 6.06万人、予想 3.00万人)
10:30 (豪) 6月 失業率 (5月 3.9%、予想 3.8%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -7.2%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -2.8%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 0.0%)
15:00 (独) 6月 卸売物価指数 前月比 (5月 1.0%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.8%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 10.8%、予想 10.7%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前月比 (5月 0.5%、予想 0.5%)
21:30 (米) 6月 生産社物価コア指数 前年同月比 (5月 8.3%、予想 8.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.5万件、予想 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 137.5万人、予想 138.8万人)

注:ポイント要約は編集部

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