下げ継続もパリティトライは来週以降か
〇先週のユーロドル、一時安値1.0075まで切り下げる、景気後退懸念背景にユーロ売り目立つ
〇今週は欧州株が一段安となる可能性高い、ユーロドルの下げも続く流れか
〇7/21予定のECB理事会に向け、パリティトライは来週以降とみる
〇今週は独仏6月CPI、ユーロ圏7月ZEW景況感、主要国中銀総裁講演などを予定
〇今週は1.0050レベルをサポートに1.0225レベルをレジスタンスとする週とみる
先週のユーロドルは、これまでもくすぶり続けていた欧州の景気後退懸念が週を通して悪材料とされユーロ売りが目立ちましたが、特に火曜にはこれまで何度か試した2017年安値1.0340レベルを明確に下抜けたことで、ユーロの下げが確定的となった一日でした。その後も上値の重たい流れを続け金曜欧州市場では一時1.0075レベルまで安値を切り下げましたが、雇用統計前でパリティまで仕掛ける動きには繋がらず、いったん1.01台後半へと切り返す動きとなりました。
欧州の景気後退懸念はロシアによるウクライナ侵攻が始まった時から言われ続けてきましたが、ECBもFRB同様に景気を犠牲にしてもインフレ退治を優先する姿勢を明確にしてきたことで、スタグフレーションが現実のものとなる懸念が欧州株とユーロの上値を今後も抑えるであろうという見方です。これまでもいつ崩れてもおかしくない流れでしたが、それが先週起きたというに過ぎません。雇用統計の週末を前にいったん売り仕掛けた短期筋は買い戻したようですが、7月21日のECB理事会前にパリティ(1ユーロ1ドル)を試しに行く動きになってくると見られます。
テクニカルには、まずユーロドルの月足チャートをご覧ください。
2018年高値を起点とした逆N波動を考えると既に100%エクスパンションは抜けていますので、心理的な節目としてパリティ1.0000とともに127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションの0.9907、つまりパリティは一度は試しに行く流れは十分にありそうなチャートと言えます。
いつもの日足チャートもご覧ください。
サポートは2017年安値(赤の太い水平線)、レジスタンスは年初来高値からのレジスタンスライン(青の太線)ですが、先週の下げで下抜けてきました。短期的には6月高値を起点とした逆N波動(ピンク)を想定できますが、127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションが1.0087とほぼ先週安値と一致、161.8%エクスパンションが0.9943と月足ターゲットと近い水準にあり、テクニカルにはパリティよりも0.99台前半がターゲットとなりやすい水準と考えることができます。
今週のところは先週安値を再トライできるかどうかという状況だと思いますが、先週のように下げる時には一気に下げる可能性は常に考えておく必要はあります。今週は上値は重たいもののパリティトライはお預けと見て1.0050レベルをサポートに1.0225レベルをレジスタンスとする週を見ておくこととします。
今週のコラム
今週はS&P500とDAXの比較チャートです。
景気後退懸念も米国と欧州の株価の違いを見るとよくわかります。以下のチャートは米国の主要株価指数であるS&P500(青)と欧州で最も経済規模が大きいドイツDAX(茶)の週足による比較です。2022年はどちらも大幅に下げていますが、2021年初を起点として比較するとS&P500がまだプラス圏にあるのに対して、DAXはマイナス圏です。
しかもDAXは2022年3月安値を7月に入り改めて下抜けてきたことからテクニカルにも弱いチャートとなっています。米国は好景気を経ての後退懸念という段階ですが、欧州は好景気と言えるほどの回復を経ずに後退懸念、というよりも既に後退し始めているという差が株価指数にも表れているといってよさそうです。
今後欧州株が一段安となる可能性が高い中で、ユーロドルもパリティをターゲットに下げが続く流れにあると考えてよいでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
7月11日(月)
23:15 英中銀総裁議会証言 ☆
25:30 ドイツ連銀総裁講演 ☆
7月12日(火)
08:01 英国6月小売売上高
18:00 ドイツ7月ZEW景況感 ☆
18:00 ユーロ圏7月ZEW景況感 ☆
19:15 フランス中銀総裁講演 ☆
26:00 英中銀総裁講演 ☆
7月13日(水)
15:00 ドイツ6月CPI ☆
15:00 英国5月鉱工業生産、貿易収支
15:45 フランス6月CPI ☆
18:00 ユーロ圏5月鉱工業生産
21:30 米国6月CPI ☆
27:00 ベージュブック ☆
7月14日(木)
08:01 英国6月住宅価格
23:00 ポルトガル中銀総裁講演
7月15日(金)
11:00 中国4〜6月期GDP ☆
18:00 ユーロ圏5月貿易収支
19:00 フィンランド中銀総裁講演
**:** G20(〜16日)☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月4日(月)
ユーロドルはNY市場が休場だったこともあり全般に鈍い動きが続きました。東京市場では動かず、欧州市場では一時的な上下は見られたもののその後は再び全く動かなくなり一日の値幅も47pipsに留まる動意薄の一日でした。
7月5日(火)
ユーロドルは東京市場では若干底堅い動きとなっていましたが、欧州市場序盤に仕掛けと見られるユーロ売りが入りました。その後NY昼前までは欧州株とユーロドル双方の下げがお互いの下げを加速させ、NY昼過ぎに1.0235レベルの安値をつけ、引けにかけては若干戻して引けました。
7月6日(水)
ユーロドルは東京時間は動かず、欧州市場に入ると改めて欧州の景気減速を材料にしたユーロ売りが入り、NY市場前場には1.0161レベルの安値をつけました。NY市場では動きは鈍く安値圏でもみあいのまま引けました。
7月7日(木)
ユーロドルは東京市場では若干買いが目立ったものの上値が重たい展開を続け、欧州市場序盤以降は改めてじり安の展開となりました。NY市場に入り前日安値を下抜けると1.0144レベルまで水準を下げ、そのまま安値圏での引けとなりました。ジョンソン首相辞任のニュースは英国の政治が落ち着くとの見方から買い材料となりましたが、ユーロドルへの影響は見られませんでした。
7月8日(金)
ユーロドルは東京市場では動きが見られませんでしたが、欧州市場序盤に今後の欧州の景気後退懸念を嫌気してのユーロ売りがテクニカルな売りも引っ掛けて一時1.0072レベルの安値をつけました。しかし米国雇用統計前ということもあり急速に下げる前の水準へと戻しましたが、強い数字への反応は鈍くユーロドルはほぼ横ばいのままで週末を迎えました。
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