トルコリラ円見通し 円安とリラ安の綱引き続き7.80円台中心の持ち合い
〇トルコリラ円、7/9早朝終値7.88、前日比わずかにプラスで週を終える
〇対ドル、米雇用統計発表後17.20到達、ドル高の流れに一服感
〇円安による押し上げ効果が鈍る一方、ドルトルコリラ下落基調は継続中
〇リラ安に圧され、7.59を割り込めば先安観強まりやすい
〇格付け会社フィッチがトルコ格下げ、リラ暴落とインフレ深刻化状況での政策金利維持を批判
〇7.83割れから続落に入る場合は7.80から7.75へ向かう流れとみる
【概況】
トルコリラ円の7月8日は7.89円から7.76円の取引レンジ、9日早朝の終値は7.88円で前日終値の7.87円からは0.01円の円安リラ高だった。
7月6日夜にかけてのドル全面高とドル円の反落が重なった局面で7.83円へ急落し、ドル全面高がやや一服する中でドル円が反発したために7月7日午前に7.91円まで戻し、その後は7.90円手前を上値抵抗とした揉み合いで推移していたところ、7月8日昼の安倍首相銃撃報道から円高に振れたことで夕刻安値7.83円へ下落したが、事件に対する初期的な反応一巡でドル円が戻したことで7.88円へ持ち直して米雇用統計へ向かった。
米雇用統計が概ね予想を上回る堅調な数字だったことで発表後はいったんドル高反応となりドル円の上昇と共にトルコリラ円も反発したが、ドル高反応は長続きしなかったためにドル円も上昇一服で失速、一方で雇用統計通過後のドル/トルコリラはドル安リラ高へとやや振れたためにトルコリラ円は強弱入り交じりつつ小動きのまま、前日比ではわずかにプラスとして週を終えた。
週間では7月1日終値8.06円から7.88円まで0.18円の円高リラ安、日足は6月30日から7月7日まで6営業日続落したところで8日に下げ一服した。
週明けの7月11日午前は参院選での自民圧勝による政策安定感から日経平均が上昇、ドル円も上昇気配となりトルコリラ円も7.90円超えを伺う動きを見せている。
【ドル高に一服感あるもののユーロ安とリラ安続く】
ドル/トルコリラの7月8日は17.32リラから17.20リラの取引レンジ、9日早朝の終値は17.27リラで前日終値と変わらずだった。
6月24日夜に外貨保有企業に対して基準を超えればリラ建て融資を禁止すると報道されたため狼狽的な外貨売りリラ買い反応となり、直前の17.38リラ近辺から6月27日高値15.90リラへドル安リラ高となったが、週をまたいだ2日間でリラ買いも一巡となり、その後はほぼ連日のドル高リラ安で推移、6月30日から7月7日まで6営業日連続のリラ安となった。
7月8日も米雇用統計発表後に17.32リラへ安値を切り下げていたが、ドル高反応は長続きせずにドル安へと揺れ返してユーロやポンド等が戻したためにリラ買い戻しがやや優勢となって17.20リラ台へ持ち直した。
週間では7月1日終値16.76リラから0.51リラのドル高リラ安。
【フィッチがトルコを格下げ】
大手格付け会社のフィッチレーティングスは7月9日にトルコ政府の政策がインフレの急上昇を招き資本流入を阻止しているとしてトルコのソブリン債務格付けを従来までの「B+」から「B」に引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。同社は政治的配慮によりトルコ中銀は急速なインフレの上昇で主要先進国が金融引き締めへ進んでいるにもかかわらずに2021年12月以来その政策金利を14%に維持していると批判的な見解を示した。また政府の政策は高成長を維持することに焦点を当てているものの外貨準備の減少、リラへの減価圧力、インフレの急伸を招き、経常赤字を補填するための資本流入を阻害しているとした。
同社は2017年1月にトルコを投資適格から外し、さらに4回の格下げを行ってきた。
大手格付け会社としてはS&Pが2022年4月4日に「BB−」から「B+」へ格下げして見通しを「ネガティブ」としている。またムーディーズは2020年9月11日に既にジャンク級である「B1」としていたところから「B2」へ格下げ、見通しを「ネガティブ」とし、2021年12月3日時点では「B2」に据え置き、見通しも「ネガティブ」のままとしている。
【円安相場としてのトルコリラ円の上昇力鈍り、ドル高リラ安基調に圧される】
エルドアン大統領による「利下げがトルコ経済を強くしてインフレを抑制する」という政策姿勢により、政権からの独立性を保てないトルコ中銀は昨年9月から12月まで4会合連続の利下げを行い政策金利の週間レポレートを19%から14%まで引き下げたが、その結果はリラ暴落とインフレの深刻化であった。政権はリラ預金保護政策や企業の外貨保有規制等によるリラ防衛策を図りつつ、付加価値税を8%から1%へ引き下げ、最低賃金も今年に入って2回引き上げてきたが、リラ安基調とインフレが一層深刻化することへの懸念はぬぐえず、年末からは対ドルでのリラ安基調が続いている。
トルコリラ円は歴史的な円安による押し上げ効果もあって3月11日安値7.76円からから4月28日高値8.87円まで上昇したものの、戻り一巡により6月16日安値7.59円まで失速した。企業の外貨保有と融資への規制策発表で6月27日に8.37円まで戻したところも勢いを続けられず失速気味だ。
ドル円は歴史的な大上昇基調の範囲にあるものの136円突破後は137円をピークとして134円台を何度か試す等上値が重くなりトルコリラ円を大きく押し上げる力がやや鈍っている。一方でドルトルコリラの下落基調は6月27日への一時的な反騰を消化して継続中であり、トルコリラ円としてはドル円の上昇が再び勢い付くなら円安相場として持ち直しを図る可能性もあるものの、ドル円の上昇が鈍いままだとドル高リラ安に圧されることとなる。6月16日安値7.59円を割り込めばは4月28日高値からの下落は二段目に入り先安感も強まりやすいと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.85円を下値支持線、7.91円を上値抵抗線とする。
(2)7.87円前後までで確りするうちは上向きとし、7.91円超えからは7.93円台、勢い付く場合は7.95円を試す上昇を想定するが、7.93円以上は反落警戒とみる。
(3)7.87円割れを弱気転換注意とし、7.85円割れの場合は7月6日夜と8日午後につけた7.83円によるダブル底ラインを試すとみる。底割れ回避かわずかに割り込んでも7.85円を超える場合はボックス型持ち合いの継続として再び上値抵抗線突破を試す上昇を想定するが、7.83円割れから続落に入る場合はダブル底が崩れての一段安に入るため7.70円台後半(7.80円から7.75円)へ向かう流れとみる。また7.82円を割り込んだ後も7.85円を超えない状況が続くうちはさらに一段安へ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月13日
16:00 5月 失業率 (4月 11.3%)
7月14日
16:00 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.0%)
16:00 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 10.8%)
16:00 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.7%)
16:00 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 14.7%)
7月15日
17:00 6月 財政収支 (5月 1439.8億リラ)
7月19日
16:00 7月 消費者信頼感 (6月 63.4)
7月20日
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 グロス (7/1時点 597.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 ネット (7/1時点 75.1億ドル)
23:30 6月 中央政府債務 (5月 336億リラ)
7月21日
20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会) 週間レポレート (現行 14.0%)
注:ポイント要約は編集部
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