外貨保有企業への融資規制発表からの乱高下は落ち着く
〇トルコリラ円、円安による押し上げで高値8.24へ上昇後、ドル円の上昇落ち着き8.22を挟んだ揉み合い
〇対ドルではパニック的なリラ買い一巡、16.70前後で買われ16.50台で売られる狭いレンジで小動き
〇トルコ統計局発表の6月経済信頼感指数は93.6、昨年9月以降で最低
〇外貨保有企業への融資規制によるリラ買い戻しはひとまず2日間の乱高下で落ち着いた印象
〇4日の6月トルコ消費者物価上昇率の発表に注目、新たなリラ売りのトリガーとなる可能性も
〇8.15を上回るうちは上昇余地あり、8.26超えからは8.30台序盤を目指すとみる
〇8.15割れからは下落期入りと仮定し8.00台後半を試すとみる、8.05以下は反騰注意
【概況】
トルコリラ円の6月29日は8.24円から8.13円の取引レンジ、30日早朝の終値は8.21リラで前日終値の8.16リラからは0.05リラの円安リラ高だった。
6月24日夜にトルコの銀行調整監視機構(BDDK)が企業の外貨保有基準により新規融資を停止すると発表したことからドルとユーロが売られてリラの買い戻しが殺到する状況となり、6月23日夜安値7.73円から6月27日高値8.37円へと急伸したが、発表直後のややパニック的な動きはひとまず落ち着いて28日は8.10円台後半中心でほぼ横ばいの動きにとどまった。
6月29日はECBフォーラムにおけるパウエル米連銀議長発言等により為替市場がドル全面高の様相となりドル円が137円丁度を付けて昨年1月底以降の最高値を更新する一方、ドル/トルコリラが膠着状態のままだったためトルコリラ円は円安による押し上げで午後安値8.13円から夜高値8.24円(ベンダーによっては8.27円)へ上昇したが、ドル円の上昇が落ち着いた後は8.22円を挟んだ揉み合いとなった。
ドル円が1998年8月天井147.63円を付けた翌月の1998年9月以来の高値水準に達する一段高となったが、さらに円安継続でトルコリラ円も押し上げられやすいところではある。
【ドル全面高でもトルコリラは動かず、融資規制ショックのリラ買いは落ち着く】
ドル/トルコリラの6月29日は16.71リラから16.51リラの取引レンジ、30日早朝の終値は16.64リラで前日終値の16.67リラからは0.03リラのドル安リラ高だった。
6月24日夜の外貨保有企業に対する融資規制政策の発表からドル売りリラ買いが殺到して発表前の1ドル17.37リラ近辺から16.47リラへ急伸、27日もこの流れを継続して15.90リラへ高値を更新して2連騰となったが、ややパニック的なリラ買いも一巡したことで27日夜以降は16.70リラ前後で買われて16.50リラ台では売られる狭いレンジで小動きに入っている。
6月29日はパウエル米連銀議長による「景気よりもインフレ抑制を優先」との発言からドル全面高の様相となりユーロやポンド、豪ドルや南アランドなども売られたが、トルコリラは乱高下一服で落ち着いたままの動きにとどまった。
【経済信頼感は昨年9月以降で最低】
トルコ統計局が発表した6月の経済信頼感指数は93.6となり5月の96.7から低下した。パンデミック発生前の2020年1月に98.3だったところから発生直後の2020年4月に52.4へ急低下し、その後は景気回復と共に持ち直して来たが、2021年9月に103.0まで回復したところからインフレ進行中の連続利下げでトルコリラが暴落したことで2021年12月には98.2へ低下、その後も一時的な戻りを入れながら右肩下がりの展開で昨年9月以降の最低に落ち込んできている。
インフレとリラ安が続く中で輸出企業にはプラス効果もあるところだが仕入れの輸入物価高騰とインフレによる消費低迷、最近ではロシア制裁や欧米の金融引き締めによる景気鈍化懸念もあり経済への信頼感も徐々に低下している状況にある。
【外貨保有企業への融資規制によるリラ買い戻しは一巡で様子見に】
6月24日夜にトルコの銀行調整監視機構(BDDK)がドルやユーロなどを1500万リラ(凡そ90万ドル)を超えて保有している場合は国内の新規リラ建て融資を禁止すると発表したことから6月24日夜、27日と外貨売りとリラの買い戻しが殺到したのだが、この政策に対する反応はひとまず2日間の乱高下で落ち着いた印象だ。
昨年12月にリラが円やドル及びユーロ等に対して史上最安値を更新したところでリラ建て預金の為替差損を国家が補填するという預金保護政策を発表した時には12月23日まで短期間のリラ急騰が発生したが早々に落ち着いた経緯もある。
あくまでもインフレ抑制のためには金融引き締め=利上げが必要であり、エルドアン政権とトルコ中銀が利上げを拒否する中で強引なリラ買いを政策的に仕向ける姿勢は突然の政策発表による一時的なパニックによるリラ買いを発生させても長続きしないものだ。
6月30日はトルコの5月貿易収支と週次の外貨準備高の発表がある。外貨準備高は6月24日時点のため今回の融資規制による外貨売りリラ買いを反映していないと思われるが、中国の感染抑制へのロックダウンが長期化したこと、欧米の金融引き締め化による景気鈍化やロシア制裁の影響等が貿易収支にみられる場合はリラ売り材料になりやすいところとして注目したい。
ただし、直近で最重要な指標は7月4日の6月トルコ消費者物価上昇率の発表であり、前年同月比では5月の73.5%から78.35%へさらに悪化すると見込まれており、新たなリラ売りのトリガーとなる可能性もあると注意したい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月23日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとしていたが、27日午後への急騰が一巡して反落となりその後を横ばいで推移していたために6月29日午前時点では6月27日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は28日夜から30日夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあるとした。
6月29日午後へやや下げてから8.24円へ戻して横ばいから上抜けてきたため、6月29日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は30日午後から7月4日午後にかけての間と想定されるので29日午後安値割れ回避のうちは上昇余地ありとするが、29日午後安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして7月4日午後から6日午後にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、遅行スパンが好転を維持して先行スパンも上回っているので遅行スパン好転中は一段高余地ありとみる。先行スパンから転落する場合は下げに入る可能性ありと注意するが、29日午後安値割れを回避してその後に先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開とみる。
60分足の相対力指数は6月29日夜に60ポイント台後半へ上昇した後はやや下げている。50ポイントを割り込んでも回復するうちは60ポイント超えからの上昇再開余地ありとするが、45ポイント割れからは一段安へ向かう可能性ありと注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.15円を下値支持線、8.26円を上値抵抗線とする。
(2)8.15円を上回るうちは上昇余地ありとし、8.26円超えからは8.30円台序盤を目指すとみる。8.30円以上は反落注意とするがドル円が急伸する場合などは8.30円台中盤へ上値目途を引き上げる。また8.20円以上での推移なら1日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.15円割れからは下落期入りと仮定して8.00円台後半(8.10円から8.05円)を試すとみる。8.05円以下は反騰注意とするが8.15円を割り込んでの推移なら1日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6月30日
16:00 5月 貿易収支 (4月 -61.1億ドル)
20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 グロス (6/17時点 594.5億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 ネット (6/17時点 73.8億ドル)
7月1日
16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 49.2)
7月4日
16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 2.98%、予想 5.38%)
16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 73.5%、予想 78.35%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 8.76%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 132.16%)
注:ポイント要約は編集部
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