ドル円見通し 137円到達、1998年8月天井翌月以来の高値(22/6/30)

ドル円は6月29日夜に137円丁度(ベンダーによっては136.99円)を付けて1998年8月11日天井147.63円直後の1998年9月以来の高値水準に達した。

ドル円見通し 137円到達、1998年8月天井翌月以来の高値(22/6/30)

137円到達、1998年8月天井翌月以来の高値

〇ドル円29日夜に137円到達、1998年9月以来の高値水準、昨年1/6底102.57からの上昇幅は34.43円
〇29日ECB主催フォーラム、パウエル米連銀議長「米経済は非常に強く金融引き締めに十分耐えられる」
〇米商務省発表の1-3月期GDP確定値は年率換算前期比で1.6%減、7四半期ぶりのマイナス成長
〇景気後退リスクによる安全資産買いで29日の米10年債利回りは前日比0.09%低下の3.09%に
〇137円超えからは138円以上を目指す上昇期に入るとみる
〇136.25割れを弱気転換注意とし、135.77割れからは135円前後への下落を想定

【概況】

ドル円は6月29日夜に137円丁度(ベンダーによっては136.99円)を付けて1998年8月11日天井147.63円直後の1998年9月以来の高値水準に達した。2021年1月6日底102.57円からの上昇幅は34.43円となり、1999年11月から2001年1月への2年間で33.93円の上昇時を超える規模となった。
6月29日は米GDP確定値が下方修正されたものの材料にはならず、ECBフォーラムでのパウエル米連銀議長による「景気よりもインフレ抑制」との発言が景気後退リスクを踏まえつつも強い金融引き締め姿勢と受け止められた為、米国債は安全資産買いされて米長期債利回りは総じて低下したものの突出した米連銀の引き締め姿勢により為替市場はドル全面高の様相となりドル円も押し上げられた。

【パウエル米連銀議長、「景気よりも物価抑制」を強調】

6月29日のECB主催フォーラムにおいてパウエル米連銀議長は「利上げによる景気悪化リスクより物価安定を回復できないほうが大きな過ち」と述べた。議長は「インフレを低下させるために我々は極めて強くコミットする」とし、「経済成長をプラスに保つのが理想的」としたものの「より大きな過ちは物価安定を回復できないことだ」と述べた。「強い労働市場を保ちつつインフレ抑制を目指しているが達成できる保証はない」とし、「ある程度痛みを伴う可能性が高い」が「最悪の痛みは高インフレに対処できず持続してしまうことだ」、「米経済は非常に強く金融引き締めに十分耐えられる」と述べた。
6月22日と23日の米上下院における半期に一度の議会証言においてもパウエル議長は景気後退リスクに言及している。1970年代のオイルショック以来のインフレ深刻化をソフトランディングさせようとしてそれがうまくいっても痛みは伴い、最悪の場合はリセッションの可能性も否定できないというところだが、米連銀はそれでも7月FOMCで0.50%ないし0.75%の大幅利上げを行いその後も利上げを継続してゆく見通しだ。

【米1-3月期GDPは7四半期ぶりマイナス成長で確定】

6月29日に米商務省が発表した2022年1-3月期GDP確定値は年率換算前期比で1.6%減となり改定値の1.55%減から小幅下方修正となった。2021年10-12月期の6.9%増から大幅な低下となり7四半期ぶりのマイナス成長だったことが確定した。
GDPの凡そ7割を占める個人消費は改定値の3.1%増から1.8%増へ大幅な下方修正となったこと、GDPデフレーターが改定値の8.1%上昇から8.3%上昇へと上方修正されたことが目立った。個人消費支出(PCE)は7.0%から7.1%へと若干の上方修正で設備投資も9.2%から10.0%へ上方修正されたことは経済の底固さを示したともいえる。

GDPは速報値から改定値、さらに確定値と発表が続いているためサプライズ感はなく市場の反応は限定的だったが、米連銀の金融引き締め姿勢が強調される中での下方修正だったために株式市場にとってはパウエル米連銀議長発言と共に上値を抑える要因となった印象だ。
NYダウは前日比82.32ドル高と3日ぶりにプラスだったが、28日に前日比491.27ドル安と大幅下落した後だけに下げ渋りにとどまる動きだった。ナスダック総合指数は前日比3.65ポイント安で6月27日から3日続落に終わっている。

【米長期債利回りは低下、利上げペースよりも景気後退懸念を反映】

6月29日の米10年債利回りは前日比0.09%低下の3.09%となった。パウエル米連銀議長が景気よりもインフレ抑制を優先する姿勢を鮮明にしたことで先行きの利上げペースがさらにアップする可能性も強まっているが、景気後退リスクによる安全資産買いで債券買い・利回り低下が見られた印象だ。10年債利回りは6月14日に3.50%を付けて一昨年来の最高値を更新してから6月23日に一時3.00%まで低下し、その後は再び上昇してきたところだが、29日の失速により再び6月23日安値を試す可能性も出てきた印象だ。
ドル円にとっては米長期債利回り低下が一段と進む場合には円安にブレーキを掛けるきっかけとなるが中長期的な米長期債利回り上昇と円安の継続感は変わらないと思われる。
6月29日の米30年債利回りは0.06%低下の3.22%、2年債利回りは0.07%低下の3.04%だった。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては6月23日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして高値形成期を6月27日朝から29日朝にかけての間と想定してきた。6月29日朝高値136.38円から夕刻安値135.77円まで小反落を入れて一段高しているため、29日夕安値で直近のサイクルボトムを付けて新たな強気サイクル入りした可能性がある。このため29日夕安値を割り込まないうちは7月2日朝から6日朝にかけての間への上昇を想定する。
6月29日夕安値を割り込む場合は29日夜ないしは直前高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りと改めるが、ボトム形成期を30日深夜までの間としてその後に136.50円を超えるところからは新たな強気サイクル入りとする。

60分足の一目均衡表では6月27日夜への上昇で遅行スパンが好転し、28日未明には先行スパンを上抜けたが、その後も両スパンろそっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが悪化するところからはいったん下げに入るとみて安値試し優先とするが、先行スパンからの転落を回避して遅行スパンが再び好転する場合は上昇再開入りとする。ただし先行スパンから転落する場合は下げ足が早まり調整安も深くなりやすいと注意したい。

60分足の相対力指数は6月29日夜に70ポイント台後半へ上昇、その後の反落でも50ポイント台を維持しているので65ポイント超えからは一段高へ進む流れとし、50ポイント割れから続落に入る場合はいったん下げるとみて40ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、136.25円を下値支持線、137.00円を上値抵抗線とする。
(2)136.25円以上での推移中は一段高余地ありとし、137円超えからは138円以上を目指す上昇期に入るとみる。138円到達ではいったん売られやすいとみるが高値から1円を超える反落が発生しないうちは押し目買いから次の上昇へ向かいやすいとみる。
(3)136.25円割れを弱気転換注意とし、135.77円割れからは135円前後への下落を想定する。135円台序盤以下は押し目買い有利とし、その後に136円台を回復するところからは上昇再開と考える。

【当面の主な予定】

6/30(木)
OPECプラス閣僚級会合
10:00 (NZ) 6月 ANZ企業信頼感 (5月 -55.6)
10:30 (中) 6月 国家統計局製造業PMI (5月 49.6、予想 50.5)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 2.2%、予想 1.7%)
15:00 (英) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -73億ポンド、予想 -398億ポンド)
15:00 (英) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 8.7%、予想 8.7%)
15:00 (独) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 1.8%、予想 1.5%)
15:00 (独) 5月 輸入物価指数 前年同月比 (4月 31.7%、予想 31.5%)
15:00 (独) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -5.4%、予想 0.8%)
15:00 (独) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 2.5%、予想 -1.8%)
15:00 (英) 6月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (5月 0.9%、予想 0.5%)

16:55 (独) 6月 失業者数 前月比 (5月 -0.40万人、予想 -0.60万人)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 5.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 5月 失業率 (4月 6.8%、予想 6.8%)
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 0.4%、予想 0.5%)
21:30 (米) 5月 個人消費支出(PCE) 前月比 (4月 0.9%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 PCEデフレーター 前年同月比 (4月 6.3%、予想 6.4%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前月比 (4月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (4月 4.9%、予想 4.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件、予想 22.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 131.5万人、予想 131.0万人)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部協会景況指数 (5月 60.3、予想 58.0)

7/1(金)
休場、香港、カナダ
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -8.5%)
08:30 (日) 6月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (5月 1.9%、予想 2.1%)
08:30 (日) 5月 失業率 (4月 2.5%、予想 2.5%)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (1-3月 14、予想 13)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業先行き (1-3月 9、予想 13)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (1-3月 9、予想 13)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (1-3月 7、予想 16)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (1-3月 2.2%、予想 8.3%)

10:45 (中) 6月 財新製造業PMI (5月 48.1)
16:55 (独) 6月 製造業PMI改定値 (速報 52.0、予想 52.0)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI改定値 (速報 52.0、予想 52.0)
17:30 (英) 6月 製造業PMI改定値 (速報 53.4、予想 53.4)
18:00 (欧) 6月 HICP消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 8.1%、予想 8.5%)
18:00 (欧) 6月 HICP消費者物価指コア指数速報値 前年同月比 (5月 3.8%、予想 3.9%)
22:45 (米) 6月 製造業PMI改定値 (速報 52.4)
23:00 (米) 6月 ISM製造業景況指数 (5月 56.1、予想 55.0)
23:00 (米) 5月 建設支出 前月比 (4月 0.2%、予想 0.4%)

注:ポイント要約は編集部

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