トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発表から2連騰だが乱調な展開(22/6/29)

トルコリラ円の6月28日は8.21円から8.15円の取引レンジ、29日早朝の終値は8.16円で前日と変わらずだった。

トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発表から2連騰だが乱調な展開(22/6/29)

トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発表から2連騰だが乱調な展開

〇トルコリラ円、外貨保有規制発表による2連騰やや落ち着く、6/28は8.21から8.15の狭いレンジで推移
〇対ドルでのリラ急伸も一服、16.70前後で買われ16.50リラ台で売られる
〇今回政策についての評価は定まらず、リラ安継続感からのリラ売り攻勢再開を警戒
〇来週6月トルコ消費者物価上昇率の発表予定、市場予想5.38%、5月2.98%から伸び加速か
〇8.25を下回るうちは下向きとし、8.10割れからは8.00前後への下落を想定する
〇8.25超えからは急騰後の一服終了で上昇再開に入るとみて、8.30円台中盤を試すとみる

【概況】

トルコリラ円の6月28日は8.21円から8.15円の取引レンジ、29日早朝の終値は8.16円で前日と変わらずだった。
6月24日夜にトルコ銀行調整監視機構(BDDK)が企業の外貨保有基準により新規融資を停止すると発表したところからリラ買いが殺到し、6月24日には高値で8.19円をつけて前日比0.23円の大幅高となり、週明けの27日もこの流れが続いて8.37円まで高値を切り上げてからはやや乱調な展開となったものの前日比0.16円の大幅続伸で2連騰となった。
しかし突然の融資規制報道による狼狽的な外貨売りとリラ買いは2連騰でやや落ち着き、6月28日は8.15円台で買われつつ8.20円台では戻り売りにつかまる狭いレンジでの推移にとどまった。
昨年12月20日にリラ預金の為替差損補填政策が発表されたときには12月23日まで急伸したが、その後は揺れ返しの急落に見舞われており、今回もややパニック的な動きが見られたもののひとまずはこの政策によりリラ高が継続的なものとなるのかどうかを見定めようと市場も落ち着いた印象だ。

【対ドルでのリラ急伸も一服】

ドル/トルコリラの6月28日は16.68リラから16.50リラの取引レンジ、29日早朝の終値は16.67リラで前日終値の16.52リラからは0.15リラのドル高リラ安だった。
6月24日夜の外貨保有企業に対する融資規制政策の発表からドル売りリラ買いが殺到して24日は発表前の1ドル17.37リラ近辺だったところから16.47リラへ急伸して前日比は0.46リラのドル安リラ高となり、週明けの27日も15.90リラまで高値を更新して前日比0.37リラのドル安リラ高での続騰となった。
6月28日は先週末からのややパニック的な動きが落ち着いて16.70リラ前後で買われて16.50リラ台では売られる狭いレンジで小動きとなった。

昨年末のリラ預金保護政策発表から乱高下した経緯や、その後も外貨保有企業に対する中銀への預託義務などによるリラ防衛的な奇策が繰り返されているものの、高インフレの進行中における利下げや利上げ拒否というトルコ中銀及びエルドアン政権の金融政策への不信感も根強いため、今回の政策についての評価はまだ定まらないところだ。仮にトルコの輸出関連を中心とした外貨保有企業による外貨売りとリラ買い戻しが続いたとしてもリラ安継続感からの投機筋によるリラ売り攻勢が再開されることも警戒しておくべきだろう。

【市場の関心は来週の6月消費者物価上昇率へ】

6月30日にトルコの5月貿易収支と週次の外貨準備高の発表がある。米国の個人消費支出デフレーターの発表もあるので動意付きやすいポイントになるが、トルコリラにとっては7月4日の6月トルコ消費者物価上昇率に関心が向いてゆく。
市場の事前予想が出始めており、6月消費者物価の前月比に対する市場予想は5.38%で5月の2.98%から伸びが加速し、前年同月比は78.35%で5月の73.50%からさらに伸びると見込まれている。前年同月比に対する予想レンジは72.30%から81.80%とまでとやや広いが、80%に迫るか超える場合にはインフレが一段と深刻化しているとして利上げ催促的なリラ売りがぶり返す可能性もあると思われる。
消費者物価のコア指数伸び率については市場予想が出ないが、前年比は5月の56.0%からさらに伸びる可能性、生産者物価の前年比も5月の132.16%から伸びることも懸念される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月16日夜安値から5日目となる6月23日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて下げ渋りに入り、6月24日夜の急騰により強気サイクル入りしたとして高値形成期を27日朝から29日朝にかけての間と想定した。
6月27日午後へ一段高したところからいったん下げて28日はほぼ横ばいにとどまっているので、27日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は28日夜から30日夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期に入っているため、8.25円を下回るうちは一段安余地ありとし、8.25円超えからは強気サイクル入りの可能性ありとみて27日午後高値8.37円超えを試すとみる。

60分足の一目均衡表では、6月24日夜からの急騰と乱高下が一服したことで遅行スパンは実線と交錯しており、先行スパンの上部にやや食い込み始めている。8.25円を超えないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンについてはその下限では下支えが効きやすいとみるが、先行スパンから転落するような下落の場合は急騰に対する揺れ返しの下落発生で下げ足が早まると考える。8.25円を超えるところからはもう一段高へ進む可能性もあるとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は6月24日夜高値から27日午後高値への一段高に際しては指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られ、その後はジリ安の推移で50ポイント前後へ低下してきている。65ポイント超えからは上昇再開とみるが50ポイント前後で揉み合ううちは一段安警戒とし、45ポイント割れからは30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.10円を下値支持線、8.25円を上値抵抗線とする。
(2)8.25円を下回るうちは下向きとし、8.10円割れからは8.00円前後への下落を想定する。8.00円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が早まる場合は7.90円台中盤への下落を想定する。また8.10円以下での推移なら30日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.25円超えからは急騰後の一服終了で上昇再開に入るとみて8.30円台中盤(8.33円から8.37円)を試すとみる。8.37円手前は戻り売りにつかまりやすいと注意するが、8.25円を超えた後も8.20円以上での推移なら30日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の主な予定】

6月29日
 16:00 6月 経済信頼感 (5月 96.7)
6月30日
 16:00 5月 貿易収支 (4月 -61.1億ドル)
 20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
 20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 グロス (6/17時点 594.5億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 ネット (6/17時点 73.8億ドル)
7月1日
 16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 49.2)
7月4日
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 2.98%、予想 5.38%)
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 73.5%、予想 78.35%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 8.76%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 132.16%)

注:ポイント要約は編集部

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