トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発表から2連騰だが乱調な展開(22/6/28)

トルコリラ円の6月27日は8.37円から8.01円の取引レンジ、28日早朝の終値は8.16円で先週末終値の8.00円からは0.16円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発表から2連騰だが乱調な展開(22/6/28)

トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発表から2連騰だが乱調な展開

〇トルコリラ円、6/27午後8.37へ一段高、その後8.06までいったん反落するも夜には8.27へ反発
〇深夜以降は8.18を挟んだ揉み合いで落ち着いたが、2日間で0.39円の円安リラ高となる急伸
〇対ドル、6/27午後15.90へ一段高、その後16.75まで反落する乱高下
〇深夜以降は16.55を挟んだ揉み合いで、高値圏維持
〇外貨保有規制と新規融資禁止の影響で投機的なリラ買い殺到、揺れ返しの下落の可能性に要注意
〇8.10を上回るうちは一段高余地ありとし、8.25超えからは8.40台を目指す上昇を想定する
〇8.10割れを弱気転換注意とし、8.00割れからは7.80台(7.89から7.81)への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の6月27日は8.37円から8.01円の取引レンジ、28日早朝の終値は8.16円で先週末終値の8.00円からは0.16円の円安リラ高となった。
6月24日夜にトルコの銀行調整監視機構(BDDK)が企業の外貨保有基準により新規融資を停止すると発表したところからリラ買いが殺到したために24日は高値で8.19円をつけて前日比0.23円の大幅高となったが、週明けも混乱は続いて午後高値で8.37円へ一段高、その後に8.06円までいったん反落したところも買い戻されて夜には8.27円へ反発、深夜以降は8.18円を挟んだ揉み合いで落ち着いたが、2日間で0.39円の円安リラ高となる急伸ぶりとなった。
ドル安リラ高に加えてドル円も6月23日夜に134.25円まで下げたところからの持ち直しを継続して135円台を回復しており、トルコリラ円はリラ急伸に円安も重なっての連騰となった。

【外貨保有規制策でのリラ買い戻し続き対ドルで2連騰】

ドル/トルコリラの6月27日は16.89リラから15.90リラの取引レンジ、28日早朝の終値は16.52リラで先週末終値の16.89リラからは0.37リラのドル安リラ高となった。
6月24日夜のトルコ銀行規制当局による企業の外貨保有基準による新規融資停止政策の発表からリラ買いが殺到して直前の1ドル17.37リラ近辺から16.47リラへと急伸し、リラ買い一服でいったん反落したものの24日は前日比0.46リラのドル安リラ高となった。27日もこの流れは継続して午後にこの日の高値となる15.90リラ(ベンダーによっては16.00リラ)へ一段高となり、いったん16.75リラまで反落するなど乱高下となったが、深夜以降は16.55リラを挟んだ揉み合いで高値圏を維持している。
終値ベースでは昨年12月17日の16.41リラを5月26日に超えたところから史上最安値の更新が続き6月23日終値は17.35リラと最安値を更新したところだったが、新たな融資禁止を含む外貨保有規制を発表したことでリラ売り攻勢も半ば強制的にストップした印象だ。

【外貨保有規制と新規融資禁止の影響度】

今回の規制は1500万リラ(6月24日終値時点の換算で凡そ89万ドル)をハードルとして超えた企業へのリラ建て融資を禁止するというものであり輸出企業の大手が対象となる。自己資金で100%の運営ができていれば影響を受けないのだろうが、大半は国内銀行からの融資により運転するものであり、外貨保有基準を超えた企業にとっては突然の規制導入と新規融資停止という企業存続にかかわる強圧的な措置のためにパニック的な外貨売りが発生し、それに乗じた投機的なリラ買いも殺到したという印象だ。

トルコ政府は昨年12月20日にトルコリラ円での史上最安値6.17円を付けた直後に国民のリラ預金における為替差損を国家が補填するというリラ預金保護政策を発表し、この時もサプライズ反応でリラ買いが殺到して12月23日高値11.14円まで急伸した経緯がある。しかしその時は12月20日から12月23日まで4営業日の急騰に終わり、揺れ返しのリラ売りから1月3日には8.13円まで急落し、その後も8円台でほぼ横ばいの推移を続けた。今回も該当する企業の外貨売り調整が一巡すれば昨年12月の急騰時のようにリラ高も収まって揺れ返しの下落に転じる可能性があると注意すべきだろう。

昨年後半からの高インフレ進行中の利下げやインフレが一段と悪化する中での利上げ拒否による金融政策への不信がリラ安の背景であり、リラ暴落に対して本来なら無理筋の為替差損補填や突然の外貨保有規制と融資禁止による恫喝的な政策発表でリラ暴落再開を阻止する手法はサプライズ的に短期的なリラ買いを誘発するものにとどまるのではないかと思われる。リラのファンダメンタルズが弱ければトルコ企業による外貨売りよりも海外勢による投機的なリラ売りが勝る結果へと進むのではないかと思われる。しかし、いずれにせよ当面は乱高下が落ち着くところを見定めたい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月16日夜安値をサイクルボトムとした上昇が22日朝高値で一巡となり弱気サイクル入りしていたが、6月16日夜安値から5日目となる23日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて下げ渋りに入り、6月24日夜の急騰により強気サイクル入りしたと思われる。
高値形成期は27日朝から29日朝にかけての間と想定されるのですでに反落警戒期にあるため、27日午後高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りしている可能性があるが、乱高下しているためにまだ一段高の余地も残る。このため8円以上を維持するうちはもう一段高の可能性ありとし、8円割れからは弱気サイクル入りとして28日夜から30日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、6月24日夜からの急騰と乱高下により遅行スパンは好転しているものの悪化しやすい位置にあるが先行スパンを大きく上抜けた状況にある。このため先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は急騰一巡による反動安入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は6月24日夜高値から27日午後高値への一段高に際しては指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるためいったん反動安を入れやすいところと注意する。50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとみて70ポイント超えからは80ポイントを試すとみるが75ポイント以上は反落警戒圏とする。50ポイント割れからは反動安入りとみて40ポイント割れを試す流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.10円を下値支持線、8.25円を上値抵抗線とする。
(2)8.10円を上回るうちは一段高余地ありとし、8.25円超えからは8.40円台を目指す上昇を想定する。8.40円以上は反落警戒とするが、8.20円以上での推移なら29日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)8.10円割れを弱気転換注意とし、8.00円割れからは7.80円台(7.89円から7.81円)への下落を想定する。7.89円以下は反騰警戒圏とするが、8円を割り込んでの推移が続く場合は29日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月29日
 16:00 6月 経済信頼感 (5月 96.7)
6月30日
 16:00 5月 貿易収支 (4月 -61.1億ドル)
 20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
 20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 グロス (6/17時点 594.5億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 ネット (6/17時点 73.8億ドル)
7月1日
 16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 49.2)
7月4日
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 2.98%)
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 73.5%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 8.76%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 132.16%)



注:ポイント要約は編集部

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