ドル高リラ安継続だが円安の勢いで押し上げられ、リラ安と円安の攻防
〇トルコリラ円、4日早朝終値7.97で前日から0.09円の円安リラ高に
〇対ドルでは3日夕刻のトルコ5月消費者物価発表後に16.50の壁を超えリラ売りが進行
〇4日早朝にかけてのリラの反発はトルコ中銀による介入との憶測もあるが定かではない
〇消費者物価上昇率は前年同月比73.50%、凡そ24年ぶりの高水準に
〇4日早朝7.99超えからは8.00円台前半を目指すとみる、8.05以上は反落警戒
〇7.90割れからは6/2夜安値7.86試し、安値更新からは7.80前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の6月3日は7.99円から7.86円の取引レンジ、4日早朝の終値は7.97円で前日終値の7.88円からは0.09円の円安リラ高となった。
6月3日は夕刻にトルコの5月消費者物価上昇率の発表があり、消費者物価の前年比が73.50%となり4月の69.97%を上回ったことでドル高リラ安が進行して1ドル16.50リラの壁を超えたもののドル円の上昇に支えられたことでトルコリラ円は7.80円台後半で底固さをみせた。3日夜の米雇用統計が堅調な内容だったことで米長期債利回りが上昇してドル円が深夜に131円へ迫るところへ続伸したため、トルコリラ円は円安に押し上げられて7.90円台回復へと切り返した。さらに対ドルでのリラ売り一巡感からリラの買い戻し優勢へと流れが変わったためにトルコリラ円は3日深夜以降のドル安リラ高に押し上げられて4日早朝には8円に迫ったが、8円には届かずその後はやや失速している。
週間では5月27日終値7.82円から0.15円の円安リラ高だった。
【1ドル=16.50リラを超えた後はリラ買い戻し優勢に】
ドル/トルコリラの6月3日は16.54リラから16.37リラの取引レンジ、4日早朝の終値は16.41リラで前日終値の16.48リラからは0.07リラのドル安リラ高となった。
1ドル16.50リラ手前での攻防が続く中、6月3日夕刻のトルコ5月消費者物価発表後に16.50リラの壁を超えてリラ売りが進行したが、米雇用統計を通過した後にこの日の安値16.54リラを付けたもののリラ売り一巡から買い戻し優勢となり4日早朝には16.37リラまで反発した。ただし、4日早朝にはいったん16.46リラへ反落するなど戻り売りの動きも見られた。
6月4日早朝にかけてのリラの反発についてはトルコ中銀による介入との憶測もあるが定かではない。トルコ中銀は介入を公式表明することはまれであり、為替市場においては国内金融機関とのスワップ取引でのリラ買いポジションを拡大することで実質介入を行うケースが多い。
週間では5月27日終値の16.18リラから0.23リラのドル高リラ安であり、昨年12月の乱高下による12月23日高値10.06リラ以降の最安値更新となった。
【トルコ5月消費者物価上昇率は1998年以来24年ぶり高水準】
6月3日にトルコの5月物価上昇率の発表があった。
消費者物価上昇率は前月比で4月の7.25%から5月は2.98%へと伸びが鈍化して市場予想の4.80%を下回ったが、前年同月比は4月の69.97%から73.50%へとなり市場予想の76.55%を下回ったものの1998年10月の76.6%以来凡そ24年ぶりの高水準となった。コア指数の前月比は3.4%で4月の4.5%から伸びが若干鈍化、前年比は56.0%で4月の52.4%から上昇した。
消費者物価の部門別の前年同月比では運賃が107.62%、食料品とアルコール外飲料が91.63%、生活用品が82.08%と前年からほぼ倍増となっている。
生産者物価上昇率は前月比が4月の7.67%から5月は8.76%へと伸びが加速、前年同期比では4月の121.8%から5月は132.16%へとさらに上昇した。生産者物価の部門別の前年同月比では、電気ガス・スチームが360.30%、燃料等エネルギーが300.16%となっている。
トルコ国内の物価調査をしている独立系のエコノミストグループでは実際のインフレ実態は160.8%で公式発表の二倍だとしている。トルコの統計局責任者が更迭されてからは公式物価統計への疑念も大きく、既にハイパーインフレの様相という見方もされている。
6月3日にはNY原油先物が一時120ドル台を付けて週明けの6月6日朝には120ドル台後半へ高値を切り上げている。4月半ばの92ドル台を底として上昇基調にあり、3月序盤にウクライナ戦争とロシア制裁強化の中で130.50ドルまで急伸した後の調整も消化して再び騰勢が強まってきている。トルコ国内では6月から電気ガス料金の値上げも決まっており、インフレは止みそうになく、国民の生活苦と不満も拡大する一方と思われ、来年の大統領再選へ向けてエルドアン政権のインフレ対策への消極姿勢への批判も強まりかねないところだ。
【中勢のポイント、円安とリラ安の綱引き】
トルコリラ円は円安とリラ安という、いずれも弱い通貨同士の掛け合わせでの展開となっており、3月11日安値7.76円から4月28日高値8.88円にかけての上昇期では、1ドル=15リラを壁としてリラ安が落ち着いている中でのドル円の歴史的な大上昇が押し上げ要因となった。
ドル円は4月28日に日銀がマイナス金利と量的緩和の継続及び毎営業日における指値オペによる長期金利抑制姿勢を示したことで131.24円を付け、いったん調整安を入れた後に米長期債利回りの上昇を見て5月9日高値131.34円を付けた。二度の131円台到達でダブルトップ型を形成して5月24日夜の126円台まで下げたところから切り返しに入り、既に直前の下げ幅の大半を解消しており、歴史的な円安基調の継続感が強まっている。
一方でドル/トルコリラでは3月11日に付けた1ドル=15リラの壁を5月5日の4月CPI発表をきっかけとしたリラ売り攻勢により突破され、5月20日には1ドル=16リラも超えて勢い付き、先週末には16.50リラも超えて5月に入ってからのリラ安基調が継続している。
トルコリラ円にとっては、ドル高リラ安が一服するかドル高リラ安が進行してもそれを超える円安なら5月26日安値を当面の底として持ち直しに入る可能性があるが、円安よりもリラ安が勢い付く場合には8円台へ乗せても維持できずに失速して4月28日以降の下落基調を継続する可能性がある。また131円台で再び円安にブレーキがかかって円高となりリラ安がさら勢いを増す場合には昨年12月に付けた史上最安値を再び試す下落期の拡大というケースもあり得るところだ。
当面は円安を主たるテーマで動くか、リラ安をテーマに動くのかを見定めながらの展開が続く。次回の米連銀FOMCは6月14-15日、日銀金融政策決定会合は6月16-17日、トルコ中銀金融政策決定会合は6月23日にある。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)現状は6月2日未明高値7.94円から2日夜安値で7.86円まで下げたところで押し目買いされて4日早朝に7.99円まで一段高となり、その後も7.90円台中盤を維持しているため、5月26日を起点とした上昇基調の範囲にある。このため、6月2日安値を割り込まないうちは上昇基調継続としてさらに高値を更新する可能性も維持していると思われる。
(2)7.90円台序盤(7.93円から7.90円)までを下値支持帯とし、6月4日早朝高値超えからは8.00円台前半(8.01円から8.05円)を目指すとみる。8.05円以上は反落警戒とするが、リラ安一服で円安が加速するケースでは8.05円を超える可能性もあると注意する。
(3)7.90円割れからは6月2日夜安値7.86円試しとし、安値更新からは7.80円前後への下落を想定する。6月2日夜安値割れからは5月26日以降の上昇トレンドからの転落となるため、先行きは7.70円台前半を向かう流れとみる。特に円安が減速してリラ安が勢い付く場合は5月9日から5月26日安値への下落時並みの下げ方となる可能性もあると注意する。
【当面の主な予定】
6月7日
23:30 5月 財務省現金残 前月比 (4月 -436.7億リラ)
6月9日
20:30 週次 外貨準備高 6/3時点 グロス (5/27時点 612.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 6/3時点 ネット (5/27時点 121.9億ドル)
6月10日
16:00 4月 失業率 (3月 11.5%)
6月13日
16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -1.8%)
16:00 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 9.6%)
16:00 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.3%)
16:00 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 2.5%)
16:00 4月 経常収支 (3月 -55.54億ドル)
6月15日
17:00 5月 財政収支 (4月 -517.7億リラ)
注:ポイント要約は編集部
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