『安値圏から持ち直すも戻りは鈍い。CPIは24年ぶり高水準へ』
〇今週のトルコ円、週明け早々7.71まで下落、北欧諸国NATO加盟にかかわる軋轢が重石に
〇その後は市場のリスクオン再開の流れ、トルコの外貨準備増加等に週後半にかけ7.97まで上昇
〇トルコ円上方に複数のテクニカルポイント控え、強い売りシグナルも揃いテクニカルの地合い弱い
〇ファンダメンタルズも、地政学リスク、中銀の特異な政策運営下の高インフレ等売り材料多い
〇引き続きトルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.65ー8.15
今週のレビュー(5/30−6/3)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初7.83円で寄り付いた後、@トルコ・NATO同盟国間における軋轢懸念の高まり(トルコ政府はフィンランドおよびスウェーデンのNATO加盟に猛烈に反対)や、A米FRBによるタカ派傾斜を背景としたリスク回避ムードの再燃が重石となり、週明け早々に、週間安値7.71円まで下落しました。しかし、5/26に記録した約5ヵ月ぶり安値7.68円をバックに下げ渋ると、B中国上海市によるロックダウンの解除発表や、C上記Bを背景としたリスクオン再開(中国経済を巡る過度な悲観論後退→市場心理改善→リスク選好の円売り圧力→トルコ円上昇)、Dトルコ第1四半期GDP(結果+7.3%、予想+7.2%)の市場予想を上回る結果、Eトルコ中銀の純外貨準備高の6週間ぶり増加が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値7.97円まで上昇しました。
もっとも、心理的節目8.00円をバックに伸び悩むと、Fトルコ5月消費者物価指数(結果+73.50%、前回+69.97%)の伸び率加速や、Gトルコ5月生産者物価指数(結果+132.16%、前回+121.82%)の伸び率加速、H上記FGを背景とした実質金利の急低下が重石となり、本稿執筆時点(日本時間6/4午前3時30分現在)では、7.95円前後で推移しております。
来週の見通し(6/6−6/10)
トルコリラの対円相場は4/28に記録した約4ヵ月ぶり高値8.90円をトップに反落に転じると、先週5/26にかけて、一時7.68円(昨年12/20以来、約5ヵ月ぶり安値圏)まで急落しましたが、今週は幾分持ち直す動きとなりました。但し、上方に複数のテクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲上下限など)が控えていることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表の三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォーク」の全てが揃っていることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(上値余地は限定的。一巡後の反落リスクに要警戒)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナはトルコの親密先であるため、両国の地政学的リスクの長期化はトルコ経済に下押し圧力)や、Aトルコ・NATO同盟国間の軋轢懸念(トルコ政府は北欧2カ国のNATO加盟を反対)、Bトルコ中銀による独特な金融政策スタンス(今週発表されたトルコ5月消費者物価指数は約24年ぶり高水準となる前年比+73.5%を記録したが、エルドアン大統領の利上げを忌み嫌う独自理論を背景に、トルコ中銀は利上げのカードを切ることができず)、C上記Bを背景としたトルコリラの実質金利急低下、D米FRBによるタカ派傾斜観測(トルコから米国への資金流出懸念)、Eトルコ経済の先行き不透明感(トルコ5月製造業PMIは3カ月連続で好不況の分かれ目となる50を下回る冴えない結果)、
F経常赤字拡大に伴う構造的なリラ売り圧力(トルコ5月貿易収支はエネルギー輸入コストの増加を背景に赤字額が前年比+157%増加)、G外貨準備減少に伴うリラ売り防衛能力低下(今週は6週間ぶりに外貨準備が増加に転じたが引き続き低水準)、Hエルドアン大統領に対する求心力低下、I資本規制の効果剥落(昨年12月以降、強引な資本規制でリラ安を封じてきたが、副作用の顕在化を通じて足元で資本規制の効果が剥落)など、トルコリラ円相場のダウンサイドリスクを連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(心理的節目8.00円をバックに戻り売りが強まる展開を想定)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.65ー8.15
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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