来週の為替相場見通し:『日米金利差拡大でドル円急伸。年初来高値更新が射程圏内に』(6/4朝)

ドル円は5/24に記録した直近安値126.36(4/18以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時130.99まで急伸しました

来週の為替相場見通し:『日米金利差拡大でドル円急伸。年初来高値更新が射程圏内に』(6/4朝)

『日米金利差拡大でドル円急伸。年初来高値更新が射程圏内に』

〇ドル円、週初126.86まで下落後、リスク選好回復、米指標好調と米長期金利上昇に反発
〇週末の米雇用統計、ISM非製造業景況指数発表後に130.99まで上昇、高値圏で越週
〇ユーロドルECB関係者のタカ派発言、市場のリスク選好回復等に週明け1.0788まで上昇
〇その後は米指標好調、米長期金利上昇等に週央1.0626まで反落、週末は1.07台に持ち直す
〇ドル円、主要レジスタンスポイント上抜け、来週は三役好転の可能性、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いや米経済の悲観論後退等がサポートに
〇引き続きドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):129.00ー133.00

今週のレビュー(5/30−6/3)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初127.07で寄り付いた後、早々に週間安値126.86まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、@中国上海市によるロックダウン解除のポジティブサプライズ(中国上海市は2ヵ月間に亘って続けたロックダウンを6/1に解除→中国経済を巡る過度な悲観論後退)や、A上記@を背景としたリスク選好ムード再開(市場心理改善→クロス円上昇→ドル円連れ高)、B本邦輸入企業と思しき実需のドル買い・円売り(月末・月初公表相場のドル不足)、C米経済を巡る過度な悲観論後退(米5月シカゴ購買部協会景気指数、米5月コンファレンスボード消費者信頼感指数、米5月ISM製造業景況指数、米5月雇用統計などが軒並み市場予想を上回る力強い結果)、D米FRBによるバランスシートの圧縮開始(計8兆9000億ドルに膨らんだバランスシートの圧縮を6/1よりスタート。当初の月間上限は米国債が300億ドル、エージェンシー債と住宅ローン担保証券が175億ドルの計475億ドル)、

E米当局者によるタカ派的な発言(ウォーラーFRB理事による「9月以降も50bpのペースで利上げを継続する可能性」との発言や、サンフランシスコ連銀デイリー総裁による「政策金利を中立水準にする必要がある」「年末までに2.50%に引き上げたい」「リセッションに陥るとは思わない」との発言、セントルイス連銀ブラード総裁による「会合ごとに50bpの利上げは良い道筋」「迅速に利上げを行うべき」との発言、ブレイナードFRB副議長による「9月に利上げを休止する理由を見出すのは極めて難しい」との発言など)、F上記CDEを背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは5/18以来、約2週間ぶり高水準となる2.98%へ急上昇)、G心理的節目130.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、H原油先物価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念(経常収支の悪化懸念→構造的な円売り圧力)などが支援材料となり、週末にかけて、週間高値130.99(5/9以来、約1ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/4午前4時00分現在)では、130.80前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0737で寄り付いた後、@レーンECB理事による「7月・9月の25bp利上げが基準ペース」とのタカ派的な発言や、Aドイツ5月消費者物価指数(結果7.9%、予想7.6%、前回7.4%)の市場予想を上回る結果、B上記@Aを背景とした欧州債利回りの急上昇(ECBによるタカ派傾斜観測→ユーロ買い)、Cユーロ圏5月経済信頼感指数(結果105.0、予想104.9)の良好な結果、D中国上海市によるロックダウン解除のポジティブサプライズ(中国上海市は2ヵ月間に亘って続けたロックダウンを6/1に解除→中国経済を巡る過度な悲観論後退→市場心理改善→欧州株上昇)が支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0788まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、Eユーロ圏5月消費者物価指数(結果8.1%、予想7.8%)の伸び率加速(過去最高水準を更新)や、F上記Eを背景とした欧州経済のスタグフレーション懸念(これまで見られていた「インフレ加速→ECBによるタカ派傾斜観測→ユーロ買い」といったシンプルな波及経路から、「インフレ加速→スタグフレーション懸念→欧州経済の先行き懸念→ユーロ売り」の波及経路にシフト)、

G米経済を巡る過度な悲観論後退(米5月ISM製造業景況指数の力強い結果)、H米当局者によるタカ派的な発言(ウォーラーFRB理事、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、セントルイス連銀ブラード総裁など)、I米金利上昇に伴うドル買い圧力、J欧州最大の資産運用会社アムンディのビンセント・モルティエ最高投資責任者による「テクニカル的にもファンダメンタルズ的にもユーロは恐らくドルと等価になるだろう」との弱気発言が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0626(5/23以来の安値圏)まで急落しました。もっとも、一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると、KECBによる金融引き締め観測の高まり(ドイツ10年債利回りが2014年7月以来、約8年ぶり高水準となる1.28%へ急上昇)や、LECB理事会を翌週に控えたポジション調整が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/4午前4時00分現在)では、1.0720前後まで持ち直す動きとなっております。

来週の見通し(6/6−6/10)

<ドル円相場>
ドル円は5/24に記録した直近安値126.36(4/18以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時130.99まで急伸しました(5/9高値131.36→5/24安値126.36→6/3高値130.99。直近1ヵ月間は5円下がって、4.63円上がるボラタイルな相場展開)。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する移動平均線のパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます(来週前半には、遅行線の26日前のローソク足突破と一目均衡表転換線と基準線のゴールデンクロスを経て、一目均衡表三役好転の再点灯が見込まれることから、ドル高・円安基調はもう一段強まる公算大)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる金融引き締めスタンスの明確化(計8兆9000億ドルに膨らんだバランスシートの圧縮が6/1より開始された他、米FRB当局者によるタカ派的な発言を受けて、先週まで沈静化していた9月以降の大幅利上げ観測が再燃)や、A日銀による金融緩和政策の長期化姿勢(今週は若田部副総裁より「金融緩和の粘り強い継続によって着実に経済の好循環を支え、賃金が上がっていく環境を維持することが必要になる」「ちゅうちょなく必要な追加的措置を講じることも排除すべきではない」との発言あり)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C資源価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念(経常収支悪化に伴う構造的な円売り圧力)、D米経済を巡る過度な悲観論の後退(米5月ISM製造業景況指数や米5月雇用統計が力強い結果を記録→米経済のリセッション懸念後退)など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週は既にブラックアウト期間(米当局者が金融政策についての発言を控える期間)に突入しているため、米当局者発言などは予定されておりません。このため、市場参加者の関心は6/10に予定されている米5月消費者物価指数に集まりそうです。現時点では市場予想が前年比+8.2%と前回の+8.3%からの鈍化(コア指数は予想+5.9%、前回+6.2%)が見込まれるなど、インフレのピークアウトが市場コンセンサスとなっているものの、今週発表された米経済指標をみる限り、リセッション入りの懸念は乏しく、インフレはピークアウトどころからまだまだ上がる余地が残されているようにも感じられます。このため、来週は米5月消費者物価指数の予想比上振れ→米6月・7月50bp利上げ+9月以降の大幅利上げ観測再燃→米長期金利急上昇→米ドル独歩高の波及経路に特に注意が必要でしょう(5/9に記録した約20年ぶり高値131.36を上抜けできれば、次は2002年1月31日に記録した高値135.18がターゲット。短期的にも中長期的にもドル高・円安トレンドの継続を想定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):129.00ー133.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/13に記録した約5年4ヵ月ぶり安値1.0350(2017年1月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週前半にかけて、4/25以来、約1ヵ月ぶり高値となる1.0788まで上昇しました。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、上方より一目均衡表の分厚い雲が垂れ下がってくるため、ここからの上昇は容易では無いと考えられます。週足など上位足ベースで強い売りシグナルが継続していることなども続伸を阻むと見られ、来週は一巡後の反落リスクに注意が必要と考えられます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナ問題に加えて、ロシア・北欧2カ国問題へと飛び火するリスク)や、A欧州経済の先行き不透明感(インフレ加速と景気後退が同時進行するスタグフレーションの発生懸念)、B上記Aを背景としたECBによる積極金融引き締めの難しさ(ECB当局者による相次ぐタカ派発言を受けて、欧州債利回りは上昇基調を強めているが、欧州経済を巡る先行き不透明感が根強いことなどを考慮すれば、米国のような50bp単位のアグレッシブな連続利上げは容易ではない→ECBの金融引き締めを材料としたユーロ買いは長期化しないと整理)、C米FRBによるタカ派傾斜観測(今週は米当局者によるタカ派的な発言が相次いだ他、ウォーラーFRB理事やブレイナードFRB副議長からは9月以降の利上げ継続の可能性を示唆する発言もあり)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週は6/9に予定されているECB理事会に注目が集まります。今会合では資産購入プログラムの終了決定と、次回7月会合での政策金利引き上げの地均しが行われると予想されており、市場参加者の関心は後者に移っております(次回会合での利上げ幅が25bpなのか50bpなのか)。声明文やラガルドECB総裁記者会見で50bpの利上げ可能性が強調されない場合は、ECBによる大幅利上げ観測後退→欧州債利回り急低下→欧米名目金利差拡大の経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わる恐れがあるため、来週はダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500−1.0850

注:ポイント要約は編集部

『日米金利差拡大でドル円急伸。年初来高値更新が射程圏内に』

ドル円日足

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