トルコリラ円見通し トルコGDP確り、ドル円の反騰入りに押し上げられる(22/6/1)

トルコリラ円の5月31日は7.86円から7.77円の取引レンジ、6月1日早朝の終値は7.83円で前日終値の7.78円からは0.05円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し トルコGDP確り、ドル円の反騰入りに押し上げられる(22/6/1)

トルコリラ円見通し トルコGDP確り、ドル円の反騰入りに押し上げられる

〇トルコリラ円、5/31高値7.86、ドル円反騰入りに押し上げられる
〇対ドル、買い戻し一巡後リラ売り優勢、16.50手前で安値更新伺う展開
〇トルコ1-3月期GDP、伸び鈍化だが堅調な水準維持
〇4月貿易収支、61.1億ドル赤字で高水準続く、リラ安基調で悪循環の懸念
〇7.82以上での推移中は上昇余地ありとし、7.87超えからは7.90円台序盤を試す上昇を想定する
〇7.80割れからは下落再開とみて7.75前後への下落を想定する。

【概況】

トルコリラ円の5月31日は7.86円から7.77円の取引レンジ、6月1日早朝の終値は7.83円で前日終値の7.78円からは0.05円の円安リラ高だった。
5月26日夜のトルコ中銀による政策金利現状維持発表で7.71円まで安値を切り下げたが、当面の売り材料一巡として買い戻されたこと、ドル円が5月24日夜安値126.35円から新たな安値更新を回避して下げ渋り持ち合いに入ったことでトルコリラ円も持ち直しに入り5月27日夜高値で7.85円まで戻り高値を切り上げていた。
5月31日は米国市場休場明けの米長期債利回りが先週末までの低下基調から反騰に転じ始めたことでドル円が128円台へ乗せ、さらに31日深夜にかけての続伸で129円へ迫ったため、円安によるトルコリラ円への押し上げ効果で7.86円まで戻り高値を切り上げた。しかし対ドルでのリラ安基調は継続していることがトルコリラ円の上値を抑えている。

【1ドル=16.50リラの攻防続く】

ドル/トルコリラの5月31日は16.43リラから16.19リラの取引レンジ、6月1日早朝の終値は16.37リラで前日終値の16.38リラからは0.01リラのドル安リラ高だった。
5月26日のトルコ中銀による5会合連続の政策金利据え置きについては市場の予想通りとし、直前につけた安値16.45リラで売り一服となり27日深夜には16.18リラまで戻したが、高インフレの進行にもかかわらずトルコ中銀によるインフレ対策としての利上げはないだろうと市場は再認識してリラの買い戻し一巡後は再びリラ売り優勢の展開となり、30日午前には16.45リラへ再び反落、31日も16.40リラを挟んでの推移だったが夜には16.43リラまで下げている。
終値では若干のドル安リラ高だったものの安値圏を維持した状況にあり、1ドル=16.50リラ手前に居座って安値更新を伺う展開が続いている。

【トルコの1-3月期GDPは伸びが鈍化したものの堅調な水準を維持】

【トルコの1-3月期GDPは伸びが鈍化したものの堅調な水準を維持】

5月31日夕刻に発表された1-3月期のトルコGDPは前期比で1.2%増となり10-12月期の1.5%から伸びが若干鈍化したが、2020年4-6月期にパンデミック発生の直撃により10.8%減となった後は、その反動で2020年7-9月期に16.4%増へ戻し、それ以降は2.0%を挟んだ水準でプラス圏を維持している。ただ、2021年7-9月期に2.8%増まで戻したところからは2期連続で伸びが鈍化した。
前年同期比は7.3%増となり10-12月期の9.1%増から低下したが、市場予想の7.1%増を若干上回った。2020年4-6月期のパンデミック直後における10.4%減へ落ち込んだもののその後はプラス圏を回復、2021年4-6月期は前年の反動で21.7%増となったが、そこを除いても6%台から9%台までのレンジで確りした数字を残している。
高インフレが一段と悪化したこと、今回の統計では2月末に勃発したウクライナ戦争によるトルコ経済への影響がまだしっかり反映されていないことから、4-6月期の悪化も懸念されるところではあるが、いち早くウィズコロナ政策により経済活動への規制を緩めて景気回復に取り組んできたことで、G20の中では高い成長率を維持しているといえる。

5月31日に発表された4月の貿易収支は61.1億ドルの赤字となり赤字額は3月の81.7億ドルからは縮小したが、慢性的な貿易赤字構造の中においてリラ安が進行したことで赤字額は昨年11月の54.44億ドルから今年1月の102.78億ドルへ大幅に悪化し、その後もやや低下しているとはいえ高水準が続いている。
5月31日にはNY原油が一時120ドルに迫る上昇となり3月7日への急騰時につけた130.50ドル以来の高値水準となったが、EUによるロシア産原油禁輸方針合意(当面は海上輸送の禁輸で全体の3分の2、年末までに9割の禁輸を目指す)によりロシア産以外の原油争奪戦が本格化したり、ウクライナ戦争長期化による穀物や飼料、肥料等の高騰がエスカレートする可能性もあり、リラ安基調が続くようだと貿易収支の悪化がさらにリラ安に反映するような悪循環となりかねないのではないかと懸念される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月26日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて強気サイクル入りしたとし、高値形成期を5月27日の日中から30日の日中にかけての間と想定した。31日午前時点では既に高値形成期を超えていたものの底上げ基調を維持していたので31日の日中から6月1日にかけての間へ高値形成期が伸びる可能性があるとした。
5月31日は弱気転換目安とした5月30日午後安値7.75円割れを回避して一段高しているためまだサイクルトップ形成期の延長入りによる上昇継続中とする。また5月26日夜安値から3日目となる5月31日夕安値でやや短めのサイクルボトムをつけて新たな強気サイクル入りしている可能性も考えられる。弱気転換は7.80円割れからとし、その際は6月1日の日中から2日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、5月31日午前の上昇で先行スパンを上抜き、その後に遅行スパンが好転し、両スパンそろっての好転が維持されているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが悪化するところからはいったん下げに入るとみるが、先行スパンからの転落を回避するうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とする。弱気転換は先行スパン転落からとする。

60分足の相対力指数は5月31日午前と夜に70ポイントまで上昇しているが、70ポイント超えからさらに伸びる動きに至らず。このため60ポイント以上での推移中は上昇継続とみるが、60ポイント割れからは下げ再開注意とし、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.82円を下値支持線、7.87円を上値抵抗線とみる。
(2)7.82円以上での推移中は上昇余地ありとし、7.87円超えからは7.90円台序盤を試す上昇を想定する。7.90円以上は反落警戒とし、その後に7.82円を割り込むところからは下げ再開に入るとみるが、7.82円以上を維持しての推移なら2日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.82円割れを弱気転換注意とし、7.80円割れからは下落再開とみて7.75円前後への下落を想定する。7.75円以下は反騰注意とするが、7.80円を割り込んだ後も7.82円以下での推移なら6月2日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月1日
 16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 49.2)
6月2日
 20:00 トルコ中銀 金融政策委員会議事要旨
 20;30 週次 外貨準備高 グロス 5/27時点 (5/20時点 600.1億ドル)
 20;30 週次 外貨準備高 ネット 5/27時点 (5/20時点 95.6億ドル)
6月3日
 16:00 5月 消費者物価 前月比 (4月 7.25%、予想 4.80%)
 16:00 5月 消費者物価 前年同月比 (4月 69.97%、予想 76.55%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 4.5%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 52.4%)
 16:00 5月 生産者物価 前月比 (4月 7.67%)
 16:00 5月 消費者物価 前年同月比 (4月 121.82%)

注:ポイント要約は編集部

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