トルコリラ円見通し ドル円の反騰入りに支えられるもドル高リラ安基調は継続(22/5/31)

トルコリラ円の5月30日は7.84円から7.75円の取引レンジ、31日早朝の終値は7.78円で先週末終値の7.82円からは0.04円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し ドル円の反騰入りに支えられるもドル高リラ安基調は継続(22/5/31)

トルコリラ円見通し ドル円の反騰入りに支えられるもドル高リラ安基調は継続

〇トルコリラ円、5/30午後安値7.75まで下げるも、5/30夜は7.80弱の水準での小動きにとどまる
〇5/31午前序盤はドル円が128円台へ乗せたことにトルコリラ円も押し上げられ、7.82超へ反発
〇対ドル、5/30午前序盤に戻り売りから16.45へ下落、夕刻からは16.40リラを挟んだ小動きでの推移
〇エルドアン大統領に利上げの意思無く、インフレ高止まりの場合は利下げを強行しかねないという懸念も
〇7.85手前は戻り売りにつかまりやすいところとみるが、7.85超えからは7.90に迫る上昇を想定する
〇7.78割れからは下げ再開に入る可能性を優先して、7.75円試しとする

【概況】

トルコリラ円の5月30日は7.84円から7.75円の取引レンジ、31日早朝の終値は7.78円で先週末終値の7.82円からは0.04円の円高リラ安だった。
5月26日夜のトルコ中銀による5会合連続での政策金利据え置きを通過して7.71円まで安値を切り下げたところから当面の売り材料一巡として26日夜に7.82円へ戻し、27日夜に7.73円まで反落したところも買い戻されて27日深夜には7.85円をつけるなど底固い動きを見せて先週を終えた。
5月30日は早朝から再び売り優勢となり午後安値で7.75円まで下げたものの、26日夜からの底上げ基調を維持して確りし、30日夜は米国市場休場による高動きで7.80円弱の水準での小動きにとどまっていた。しかし、5月31日午前序盤には休場明けの米長期債利回りが反騰開始となったことでドル円が127円を挟んだ持ち合いから上放れして128円台へ乗せたことにトルコリラ円も押し上げられて7.82円超へ反発している。

【1ドル=16.50リラを試す攻防】

ドル/トルコリラの5月30日は16.45リラから16.21リラの取引レンジ、31日早朝の終値は16.38リラで先週末終値の16.18リラからは0.20リラのドル高リラ安だった。
5月26日夜のトルコ中銀政策金利発表を前に16.45リラの安値をつけて昨年12月23日高値以降の安値を更新し、いったんは材料消化となり27日深夜には16.18リラまで反発した。しかしトルコ中銀及びエルドアン政権による金融政策姿勢への不信とリラ安基調はさらに継続するとみて30日午前序盤には戻り売りから再び16.45リラへ下落、30日夕刻からは米国市場休場による動意の薄い状況で16.40リラを挟んだ小動きでの推移となった。

【休場明けの米長期債利回り反騰でドル高円安】

ドル円は5月24日夜に126.35円まで下落したところから127円を挟んだ持ち合いを形成していたが、30日夜の上昇で持ち合い中の高値を超えて上放れに入り、31日午前には128円台を回復している。持ち合い形成での底固さに加え、5月30日の米連銀ウォラー理事の講演発言が予想以上にタカ派だったとして休場明けの米10年債利回りや2年債利回りが反騰開始したことでドル高反応となっている印象だ。
ウォラー理事は「インフレ率が目標の2%に近づくまで0.50%の大幅利上げを続ける」姿勢を示し、「今後の数会合において通常の倍となる0.50%の利上げ実施を支持する」と述べた。また米連銀が年末までに政策金利を2.65%程度まで引き上げるという市場予想についても「必要ならもっと引き上げる」と述べた。
米連銀は5月のFOMCで0.50%の利上げを決定して6月と7月も0.50%利上げを検討するとしたが、今後のインフレ状況次第では大幅利上げがしばらく続く可能性も出てきた印象だ。

一方ではECBの利上げ再開も早まる公算であり、米長期債利回りが上昇一服で低下していた局面ではユーロの反騰等が目立ち、ユーロ円等の上昇によるクロス円全般における円安がドル円においても下支えとなり、米長期債利回りが再び上昇すると日米金利差とドルストレートでのドル高を反映してドル円が上昇するという反応が見られている。
ドル円の上昇はトルコリラ円にとっては大きな下支えになるが、その一方でドル高リラ安が進行するようだと、ドル円の上昇では支えきれなくなることも考えておく必要があると思われる。またEUのロシア産原油禁輸方針を反映してロンドン原油が120ドル台へ、NY原油が117ドル台へと上昇してきていることもインフレ進行感からトルコリラにはプレッシャーとなってくると思われる。

【エルドアン大統領に利上げの意思無し】

5月26日にトルコ中銀が5会合連続の政策金利据え置きを決定したが、その翌日にエルドアン大統領はトルコの企業家との会合においてインフレによる市民の生活費上昇という犠牲を認識しつつもリラ安は投機的な攻撃であるが、利下げが企業の借り入れコストを改善し、リラ安が輸出に貢献して生産と雇用を拡大すると述べている。
大統領は「ロンドンやニューヨークからのとりとめのない話を聞く必要はない」とし、「これまでも借り入れコストの上昇とトルコ通貨への投機的な攻撃に対処してきた」、「高金利がインフレの原因でありその逆ではない」、「トルコ政府の金融経済政策は一貫性のある科学的なものであり現在のリラの水準はトルコの競争力を高める」等と述べている。

大統領のこの発言は、トルコ中銀はインフレが相当程度に収まらない限りは利下げに踏み切れないものの利上げもできない状況から抜け出せず、インフレが高止まりする場合には大統領の圧力により利下げを強行しかねないという懸念を市場に抱かせるものと思われる。
ひとまず1ドル=16.45リラまで下げたところで16.50リラ手前を新たな壁としてリラ安も落ち着く可能性があるが、5月31日のトルコGDP、6月3日の5月消費者物価指数の発表等から16.50リラを超えたリラ安へと進む可能性も警戒される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月26日夜安値で直近のサイクルボトムを付けてその後は新たな安値更新を回避しつつ戻り高値の切り上げを試している状況にある。5月27日午前時点では高値形成期は27日の日中から30日の日中にかけての間と想定したが、既に高値形成期を超えているものの底上げ基調を維持しているので31日の日中から6月1日にかけての間へ高値形成期が伸びる可能性もあるとみる。ただし、既に5月30日午後安値7.75円割れからは弱気サイクル入りとして5月31日夜から6月2日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、5月31日午前の上昇で先行スパンを上抜いているため、先行スパンからの転落を回避するうちは高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開の可能性ありとみて安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月31日午前に70ポイント到達まで戻しているので60ポイント以上での推移中は上昇継続とみるが、60ポイント割れからは下げ再開注意とし、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.78円を下値支持線、7.85円を上値抵抗線とみる。
(2)7.85円手前は戻り売りにつかまりやすいところとみるが、7.85円超えからは7.90円に迫る上昇を想定する。7.90円以上は反落警戒とするが、7.80円を超えての推移なら6月1日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.78円割れからは下げ再開に入る可能性を優先して7.75円試しとし、7.75円割れからは戻り一巡による下落期入りとみて7円台序盤(7.72円から7.00円)を目指す下落を想定する。また7.78円以下での推移なら6月1日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5月31日
 16:00 1-3月期GDP 前期比 (10-12月 1.5%)
 16:00 1-3月期GDP 前年同期比 (10-12月 9.1%、予想 7.1%)
 16:00 4月 貿易収支 (3月 -81.7億ドル)
6月1日
 16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 49.2)
6月2日
 20:00 トルコ中銀 金融政策委員会議事要旨
 20;30 週次 外貨準備高 グロス 5/27時点 (5/20時点 600.1億ドル)
 20;30 週次 外貨準備高 ネット 5/27時点 (5/20時点 95.6億ドル)
6月3日
 16:00 5月 消費者物価 前月比 (4月 7.25%)
 16:00 5月 消費者物価 前年同月比 (4月 69.97%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 4.5%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 52.4%)
 16:00 5月 生産者物価 前月比 (4月 7.67%)
 16:00 5月 消費者物価 前年同月比 (4月 121.82%)


注:ポイント要約は編集部

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