『狭いレンジ内で方向感に欠ける展開。下落リスクに引き続き警戒』
〇今週の南ア円、株式市場の堅調推移、S&Pによる南ア格付け見通しの上方修正に週央8.16まで上昇
〇買い一巡後伸び悩むと、南ア中銀による国内景気に対する悲観的な見方等に8.01まで反落
〇週末にかけては、南アCPIの上昇からの南ア中銀利上げ観測に8.17に上げ8.14前後で推移
〇テクニカルには南ア売りを誘発しやすいチャート形状、ファンダメンタルズも下落材料多い
〇引き続き、南アランド円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(ZARJPY):7.95ー8.25
今週のレビュー(5/23−5/27)
今週の南アフリカランド円(ZARJPY)相場は、週初8.07円で寄り付いた後、@株式市場の堅調推移(リスク回避ムード後退→リスク選好の新興国通貨買い)や、A格付け会社S&Pによる南アフリカの格付け見通しの上方修正(安定的からポジティブへの引き上げ)、B南ア3月景気先行指数(結果128.0、前回127.2)の良好な結果、C南アフリカの主要産品である金相場の堅調推移が支援材料となり、週央にかけて、一時8.16円まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、D南ア中銀による国内景気に対する悲観的な見方(南ア中銀は半期に一度の報告書の中で「ロシア・ウクライナ戦争の影響でスタグフレーション発生の恐れがある」と指摘)や、E米FOMC議事要旨での利上げ路線継続姿勢の明確化(過剰流動性相場逆流への警戒感)が重石となり、週後半にかけて、週間安値8.01円まで反落する場面も見られました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると(一目均衡表転換線や一目均衡表雲下限をバックに押し目買い圧力が強まると)、F南ア4月生産者物価指数(結果+13.1%、予想+12.0%、前回+11.9%、※前年比)の伸び率昂進や、G上記Fを背景とした南ア中銀の追加利上げ観測、H欧米株の堅調推移(リスク選好ムード再開)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値8.17円まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5/28午前5時00分現在)では、8.14円前後で推移しております(上下しつつも方向感を見出せず)。
来週の見通し(5/30−6/3)
南アランドの対円相場は、4/19に記録した約3年10ヵ月ぶり高値8.74円(2018年6月以来)をトップに反落に転じると、5/12にかけて一時7.86円まで急落しました。先週および今週は90日移動平均線や一目均衡表雲下限に下支えされる形で幾分持ち直しましたが、引き続き上値の重い状態に変わりはありません。ローソク足のすぐ下側に複数のサポートポイント(一目均衡表雲下限や転換線、90日移動平均線など)が密集していることも、同水準の下方ブレイクを連想させる雰囲気を作っています(仕掛け的な南アランド売りを誘発し易いチャート形状)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派スタンスの明確化(今週発表された米FOMC議事要旨では、米FRBメンバーによるインフレへの警戒感と利上げスタンスの継続が明確化)や、A上記@を背景とした南アフリカから米国への資金流出懸念、B南アフリカ経済の先行き不透明感(南ア中銀は景気後退とインフレ加速が同時に進むスタグフレーションの発生を警戒)、C南アフリカと経済的な結びつきの強い中国経済の失速懸念、D高失業率を背景とした南ア国内の政情不安リスク、E南ア国内における新型コロナウイルス新規感染者数の急増(外出制限再開の恐れ)など、南アランド円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
直近2週間は南ア中銀による50bpの利上げ実施と、次回会合での更なる利上げ観測が、南アランドの下支えに繋がりましたが、上述の通り、景気後退リスクが高まっている状況下での金融引き締め政策は、南ア経済に強い下押し圧力を加える恐れがあるため、足元で見られる「追加利上げ観測→南アランド買い」といったシンプルな波及経路は、早晩「追加利上げ観測→南ア経済への下押し圧力→南アランド売り」へシフトするのではないかと考えられます。以上を踏まえ、当方では引き続き、南アランド円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(尚、来週は中国5月製造業PMIや中国5月財新製造業PMI、南ア第1四半期雇用統計、南ア4月貿易収支などに注目)。
来週の予想レンジ(ZARJPY):7.95ー8.25
注:ポイント要約は編集部
南アフリカランド円日足
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