トルコリラ円見通し 4月28日以降の安値更新、終値でも8円を割り込む
〇トルコリラ円、5/25早朝終値7.88、円高とリラ安に押され4/28以降の安値更新
〇対ドル、5/25早朝終値16.09、24日夕刻16リラの防衛ライン突破
〇5/26中銀政策金利発表予定、予想は現行14%据え置き、利上げ催促的リラ売り攻勢強まるか
〇エルドアン大統領、クルド人勢力への軍事作戦計画発表、外交的孤立招く可能性懸念
〇7.90から7.93にかけて戻り売りにつかまりやすいとし、7.84割れからは7.80前後への下落を想定する
〇7.93超えからは戻しに入るとみて7.95前後試しとするが、7.95以上は反落警戒とみる
【概況】
トルコリラ円の5月24日は8.03円から7.84円の取引レンジ、25日早朝の終値は7.88円で前日終値の8.03円から0.15円の円高リラ安となった。
ドル円が127円を割り込んで一段安に入ったことに押され、さらに対ドルで1ドル=16リラの壁を超えたリラ安となったため、トルコリラ円は円高とリラ安の両面から押し下げられて4月28日高値8.88円以降の安値を更新した。終値ベースでも8円を割り込んだ。終値の8円割れは3月14日以来であり、4月28日高値への上昇起点となった3月11日安値7.76円へ徐々に迫っている。
5月25日午前序盤も7.90円を割り込んだ水準にとどまっている。
【1ドル=16リラの防衛ライン突破される】
ドル/トルコリラの5月24日は16.17リラから15.92リラの取引レンジ、25日早朝の終値は16.09リラで前日終値の15.93リラからは0.16リラのドル高リラ安だった。
3月11日に1ドル=15リラをつけた後は暫く15リラがトルコ中銀としてのリラ安阻止への防衛ラインとみられていたが、5月9日に15リラを突破してから連日の安値更新となったことで市場は1ドル=16リラを新たな防衛ラインと想定し、5月18日から20日にかけては15.98リラや15.99リラをつけながらも16リラ手前での足踏みを続けていた。しかし24日夕刻に16リラを突破、いったん買い戻しが入ったものの夜へ再び売り込まれて安値16.17リラへと安値を切り下げた。
5月26日20時にトルコ中銀の政策金利発表があり、市場は現行の14%での据え置きを予想しているが、高インフレが続く中でもエルドアン政権による利下げ主張を意識して利上げへ踏み切れないとの認識であり、16リラを突破したことで利上げ催促的なリラ売り攻勢を強めている印象だ。
5月25日午前序盤も16.10リラを挟んで安値圏にとどまっている。
【トルコ、シリア領内クルド人勢力への軍事作戦計画】
エルドアン大統領は5月23日にシリアとの国境地帯におけるクルド人武装勢力への軍事作戦を計画していると発表した。その後に具体的な戦闘開始報道は見られないものの、北欧二か国のNATO加盟に反対を表明したことと関連した動きであり、NATO及び米国とトルコの外交的な対立を招く可能性もあると懸念される。
ウクライナ戦争勃発により中立を維持してきたフィンランドとスウェーデンがNATO加盟を正式に申請したが、トルコは両国の加盟に反対している。トルコのエルドアン政権が反政府テロ組織として認定しているクルド人政治勢力=クルド労働者党(PKK)をスウェーデン等が保護しておりトルコの身柄引き渡し要求に応じていないことが加盟反対の根拠とされるが、シリア国境でのクルド人勢力への軍事作戦がNATO加盟問題を複雑化させかねない。
ウクライナ戦争とロシア制裁に関しては、両国との密接な関係のあるトルコによる停戦協議への尽力等により、これまでのNATO、EU、米国との外交関係の悪化から関係改善へと流れが変わるのではないかとの期待もあったのだが、北欧二か国のNATO加盟問題とクルド人武装勢力に対する扱いの問題が再びトルコの外交的孤立を招きかねないと懸念される。
【概ね3か月から4か月周期での下落期】
トルコリラ円の日足チャートでは概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルが見られる。このサイクルの主要な安値は昨年3月8日、6月2日と6月21日のダブル底、9月27日安値、史上最安値となった12月20日安値、今年3月11日安値であり、4月28日高値からの下落がこのサイクルにおける下落期入りとすれば、3月11日安値を基準として次の安値形成期は6月中旬から7月前半にかけての間と想定される。
5月26日のトルコ中銀金融政策決定会合を前後してトルコリラに対する強気サプライズが無ければ、市場は利上げ催促的なリラ売り攻勢を強め、対ドル及び対円での史上最安値を再び試すような下落へと進む可能性も懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月19日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして19日夜安値割れ回避のうちは23日夜にかけての間への上昇余地ありとし、底割れからは弱気サイクル入りとしていたが、23日夜へ戻した処からの反落で底割れに余裕が乏しくなったために24日午前時点では5月23日夜高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りしたとみて24日夜から26日夜にかけての間への下落を想定した。
25日深夜へ一段安となり、その後も安値圏にとどまっているので引き続きボトム形成中とし、強気転換は7.93円を超えるような反騰発生からとする。
60分足の一目均衡表では、5月23日夜高値でいったん先行スパンを上抜いたもののその後の反落で先行スパンから転落したため、24日午前時点ではすでに戻り一巡から下落期に入ったとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とした。その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。下げ渋りで遅行スパンが好転する場合は戻りを試しに入るとみるが、先行スパンとの距離も大きいため、先行スパンからの転落状態が解消されないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は5月24日夕刻への下落時に20ポイント台序盤へ低下、その後に相場が一段安したところでは指数のボトムを切り上げているが40ポイントに届かない程度にとどまっている。40ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちはもう一段安余地ありとみるが、相場がさらに一段安したところで指数のボトムが切り上がるようなら強気逆行とみてその後の反騰入り注意とし、50ポイント超えからはいったん戻しに入るとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.84円を下値支持線、7.93円を上値抵抗線とみる。
(2)7.90円から7.93円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいところとし、7.84円割れからは7.80円前後への下落を想定する。7.80円以下は反騰注意とするが、ドル高リラ安とドル円の下落が重なる場合等で下げ足が早まるなら7.70円台中盤(7.77円から7.73円)へ下値目途を引き下げる。また7.90円以下での推移なら26日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.93円超えからはいったん戻しに入るとみて7.95円前後試しとするが7.95円以上は反落警戒とみる。
【当面の主な予定】
5月26日
16:00 5月 経済信頼感指数 (4月 94.7)
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 14.00%、予想 14.00%)
20:30 週次 外貨準備高 グロス 5/20時点 (5/13時点 612.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 5/20時点 (5/13時点 115.3億ドル)
5月31日
16:00 1-3月期GDP 前期比 (10-12月 1.5%)
16:00 1-3月期GDP 前年同期比 (10-12月 9.1%)
16:00 4月 貿易収支 (3月 -81.7億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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