大幅続落、ドル高リラ安も加速、今晩トルコ中銀MPCあり
〇トルコリラ円、25日夜に3/11安値と同値となる7.76まで安値切り下げる
〇対ドルでは25日もリラ売り攻勢続き、夜には16.48へ一段安
〇本日20時トルコ中銀の政策金利発表、市場は現行の14%での据え置きを予想
〇7.76割れからは7.70前後への下落を想定、7.70以下は反騰注意
〇トルコ中銀金融政策発表等から下げ足が早まる場合は7.60台中盤へ下値目途引き下げ
〇7.83超えからはいったん戻しに入るとみて7.86から7.90手前を目指すとみる
【概況】
トルコリラ円の5月25日は7.90円から7.76円の取引レンジ、26日早朝の終値は7.77円で前日終値の7.88円からは0.11円の円高リラ安となった。
ドル円が5月24日に126円台へ下落し、対ドルでも1ドル=16リラの防衛線を突破したリラ安へと進んだため、トルコリラ円は5月24日安値で7.84円を付けて4月28日高値8.88円以降の安値を更新し、終値ベースでも8円を割り込んだ。
5月25日はドル円が127円台へ戻したものの、ドル/トルコリラでのリラ売りが継続して1ドル=16.40リラ台へと一段安となったため、ドル円の小反発では支えきれずに午後の下落で7.80円を割り込み、夜には3月11日安値と同値となる7.76円まで安値を切り下げた。
ベンダーによっては7.74円台や7.60円の安値提示もあり、3月11日安値水準を割り込んでいる。
【1ドル=16リラの防衛ライン突破からリラ売りがさらに勢い付く】
ドル/トルコリラの5月25日は16.40リラから16.08リラの取引レンジ、26日早朝の終値は16.34リラで前日終値の16.09リラからは0.25リラのドル高リラ安となった。
3月11日に1ドル=15リラを付けたとこから下げ渋りに入りトルコ中銀のリラ防衛ラインが1ドル=15リラに設定されているのではないかと市場は見ていたが、5月5日の4月トルコCPI上昇率が69.97%へと加速したことで高インフレ下で利上げしないトルコ中銀及びエルドアン政権に対する不信感からリラ売りが強まり、5月9日に1ドル=15リラを突破して徐々に1ドル=16リラに迫り、5月24日夕刻にはついに16リラを突破した。
5月25日もリラ売り攻勢は続き、夜には16.48リラへ一段安となった。
【トルコ中銀への利上げ催促型のリラ売りが勢い付く】
5月26日20時にトルコ中銀のMPC(金融政策委員会)と政策金利発表があり、市場は政策金利の週間レポレートについては現行の14%での据え置きを予想している。
エルドアン政権は利下げがインフレを抑制し、リラ安が輸出や観光業に貢献して慢性的な経常収支の赤字を改善してトルコ経済を強くするとの主張を繰り返し、リラ安に歯止めをかけようとして2020年末に利上げをしたアーバル前中銀総裁を解任して政権への忖度姿勢をとるカブジュオール現総裁へ交代した。エルドアン政権はその後も中銀内の利上げ派を排除する動きを続けて副総裁等を相次いで解任し、昨年9月から12月まで4会合連続の利下げを強行した。
しかしその結果、2021年8月時点で19.25%だった消費者物価上昇率は2022年4月に69.97%へ跳ね上がり、生産者物価上昇率は45.52%から121.82%へとハイパーインフレ並みに急伸し、2021年12月にトルコリラは6.17円、ドル/トルコリラは18.36リラを付けてともに史上最安値へと暴落した。
リラ預金の為替差損を国家が補填するという奇策を発表したことでトルコリラ円は昨年12月23日に11.14円まで急反騰したものの長続きせず、その後も最低賃金引上げや付加価値税を8%から1%へと引き下げる等の対策を講じ、公然非公然での市場介入によりリラを安定させてきたが、ウクライナ戦争とロシア制裁の長期化によりインフレが一段と加速し、主要国中銀がインフレ対策での金融引き締めへ動く中で新興国への投資マネーが細ったことで特に弱い通貨としてのトルコリラが売られる状況となっている。
3月11日から4月28日までの間はドル円が歴史的な大上昇となったためにトルコリラ円は円安に押し上げられる形で持ち直していたもののドル高リラ安基調が続いたために8円台後半までの上昇にとどまり、ドル円が下落に転じたために円安支えを失って下落に転じてきた。
今晩のトルコ中銀が政策金利の現状維持にとどまることは市場の予想するところだが、その上でインフレ対策への利上げ可能性等を示唆するか利上げ以外の引き締めやリラ取引への規制強化等を打ち出さないと、市場はさらに利上げ催促でのリラ売り攻勢に出ることが懸念される。
最近のトルコ外貨準備高の減少をみると、直接的ではないにせよ市場介入によるリラの防戦買いを行っている可能性もあるがその威力は弱い印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月19日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして19日夜安値割れ回避のうちは23日夜にかけての間への上昇余地ありとし、底割れからは弱気サイクル入りとしていたが、23日夜へ戻したところからの反落で底割れに余裕が乏しくなったために24日午前時点では5月23日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5月24日夜から26日夜にかけての間への下落を想定した。
5月25日夜へ一段安となり、その後も安値圏にとどまっているので引き続きボトム形成中とみる。今晩のトルコ中銀金融政策発表を前後していったん買い戻しが入る可能性もあるが、戻した後にこの間の安値を更新する場合は新たな弱気サイクル入りとなり来週前半へ一段安しやすくなると注意する。
60分足の一目均衡表では、5月24日午後の下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも再び転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。遅行スパンが好転する場合は戻りを試しに入るとみるが、先行スパンとの距離も大きいため先行スパンが上値抵抗帯となりやすく、その後に遅行スパンが悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は5月24日から25日夜にかけての一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるので戻しやすい状況にあるとみるが、一時的に50ポイント以上へ上昇してもその後に40ポイントを割り込む反落が発生する場合は下げ再開として20ポイント前後への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.76円を下値支持線、7.83円を上値抵抗線とみる。
(2)7.81円から7.83円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいところとし、7.76円割れからは7.70円前後への下落を想定する。7.70円以下は反騰注意とするが、トルコ中銀金融政策発表等から下げ足が早まる場合は7.60円台中盤(7.67円から7.63円)へ下値目途を引き下げる。また7.80円以下での推移なら27日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.83円超えからはいったん戻しに入るとみて7.86円から7.90円手前を目指すとみるが、7.87円以上は反落警戒とし、その後に7.80円を割り込む場合は下げ再開とみる。
【当面の主な予定】
5月26日
16:00 5月 経済信頼感指数 (4月 94.7)
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 14.00%、予想 14.00%)
20:30 週次 外貨準備高 グロス 5/20時点 (5/13時点 612.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 5/20時点 (5/13時点 115.3億ドル)
5月31日
16:00 1-3月期GDP 前期比 (10-12月 1.5%)
16:00 1-3月期GDP 前年同期比 (10-12月 9.1%)
16:00 4月 貿易収支 (3月 -81.7億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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