トルコリラ円見通し 4月28日高値を起点とした3〜4か月周期の下落期(22/5/23)

トルコリラ円の5月20日は8.07円から8.00円の取引レンジ、21日早朝の終値は8.03円で前日終値8.02円からは0.01円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 4月28日高値を起点とした3〜4か月周期の下落期(22/5/23)

4月28日高値を起点とした3〜4か月周期の下落期

〇トルコリラ円、8.07まで戻すも伸びず、下げ渋りからの持ち合いで週を終える
〇対ドルでは、19日は若干下げ渋ったものの16リラ突破への余裕が乏しい状況にとどまる
〇20日発表の週次外貨準備高は5/13時点のグロスで612.0億ドル、5/6時点から48.2億ドル減に
〇26日にトルコ中銀のMPC、政策金利は現状の14.0%で据え置かれると予想される
〇19日安値7.98を割り込まないうちは戻りを試す余地あり、8.10超えからは8.15前後試しとみる
〇7.98割れからは持ち合い下放れに入り7.90前後を試すとみる

【概況】

トルコリラ円の5月20日は8.07円から8.00円の取引レンジ、21日早朝の終値は8.03円で前日終値8.02円からは0.01円の円安リラ高だった。
ドル円が5月19日夜に127円割れを試すところまで下落した局面で7.97円を付けて8円の大台を割り込んだが、その後はドル円が127円割れを回避して持ち直したために新たな安値更新を回避した。しかしドル円は128円台序盤で戻り売りに押される展開にとどまったためにトルコリラ円も8.07円まで戻した後は伸びず、下げ渋りからの持ち合い入りで週を終えた。
週間では5月13日終値8.34円から0.31円の円高リラ安。ベンダーによっては5月19日安値で7.95円、5月20日安値で7.93円や7.92円のレート表示も見られた。

【1ドル=16リラの攻防続く】

ドル/トルコリラの5月20日は15.99リラから15.85リラの取引レンジ、21日早朝の終値は15.90リラで前日終値の15.84リラからは0.06リラのドル高リラ安となった。
5月9日に1ドル15リラの壁を超えたことでリラ売りが勢い付き、5月18日と19日に15.98リラを付けて16リラ突破への余裕が乏しくなり、19日夜にはドル高が緩んだところでいったん15.79リラまで反発したもののリラ安基調は変わらずとして戻り売りにつかまり、20日は再び16リラに迫る展開となった。
5月5日から5月18日まで10営業日続落となり、19日は若干下げ渋ったものの16リラ突破への余裕が乏しい状況にとどまっている。
週間では5月13日終値の15.48リラから0.42リラのドル高リラ安、4月22日の週から週足は5週連続陰線での下落となった。

【トルコの外貨準備高減少】

5月20日に発表された週次の外貨準備高は5月13日時点のグロスで612.0億ドルとなり5月6日時点の660.2億ドルから48.2億ドル減、ネットでは115.3億ドルで5月6日時点の149.9億ドルから34.6億ドル減となった。
外貨準備高のネットは昨年11月に326.4億ドルあったが、年末へのリラ暴落対処等により今年1月後半には75.5億ドルまで急減、2月末に198億ドルまで回復したところをピークに減少傾向となっていたが、リラ安が再び加速し始めたことへの対処で大きく減少していると思われる。グロスでも昨年11月の879.2億ドルをピークに減少傾向にある。

通信社の報道ではリラ安抑制のためにトルコ中銀が国内銀行と行っているスワップ取引残高が膨らんでおりスワップ取引分を差し引けば外貨準備高はほとんど余裕がない状況ではないかとの見方もあるようだ。
3月11日に1ドル=15リラを付けてから新たな安値更新を回避していたため、トルコ中銀が15リラを防衛ラインと設定していたのだろうと推察されるが、15リラを突破したことで16リラへと防衛ラインが切り下がり、現状は16リラ突破が試されているところだが、さらに防衛ラインが切り下がる可能性も懸念される状況と思われる。

【5月26日のトルコ中銀MPCでは金利据え置き予想】

5月26日にトルコ中銀のMPC(金融政策委員会)があるが、政策金利は現状の14.0%で据え置かれると予想される。エルドアン大統領が「利下げがインフレを抑制し、輸出拡大による景気と経常収支改善で通貨も安定する」という政策意図を反映してトルコ中銀は大統領の意向に沿わない総裁や副総裁、委員等の解任騒動もありながら昨年9月から12月まで4会合連続の利下げにより政策金利の週間レポレートを19%から14%まで大幅に引き下げてきた。その結果、消費者物価上昇率は前年同月比で2021年9月時点の11.75%から今年4月の69.97%まで跳ね上がり、コア指数でも11.3%から52.4%へ、生産者物価は14.33%から121.82%へ大上昇してしまった。

エルドアン政権にとっては現状ではインフレ対策としての利上げはありえないだろうが、さらに利下げへ進めばリラ暴落が再燃してリラ安が輸入インフレをさらに悪化させることにもなりかねないため利下げも利上げもできない状況と思われる。ウクライナ戦争とロシア制裁によるロシア産以外の資源エネルギー、穀物等の争奪戦が始まる中で世界規模のインフレが収まる期待はまだ薄く、世界レベルでのインフレが高止まりで落ち着いたとしても自国通貨安を招けば輸入インフレはさらに進行する可能性がある。
先週末時点では1ドル=16リラを超えるリラ安に入った場合にはトルコ中銀による公然介入も警戒されるところのため16リラ手前での鍔迫り合いをしているところと思われる。

【日足一目均衡表・サイクル分析】

【日足一目均衡表・サイクル分析】

日足チャートにおいては、概ね3か月から4か月周期の高値・安値形成サイクルが見られる。現状は3月11日安値で前回のサイクルボトムを付けて上昇期に入ったが、4月28日高値で直近のサイクルトップを付けて下落期入りしているところと思われる。次のボトム形成期は6月中旬から7月中旬にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとみる。8円割れまで下げたところによる突っ込み警戒感から数日の戻りを入れる場合でも戻り売りから一段安へと進みやすい流れとみる。このサイクルにおける強気転換には8.30円を超えるような反騰が必要と思われる。

日足の一目均衡表では、5月17日の下落で先行スパンから転落している。既に遅行スパンも悪化に入っており、9日転換線と26日基準線によるデッドクロスも継続しているため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、9日転換線前後へ反発するところは売られやすいとみる。強気転換へ向かうにはまず9日転換線が上昇すること、次に26日基準線を超えることが必要と思われる。

日足の相対力指数は4月20日から4月28日への一段高にさして指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生してから大きく崩れている。現状は30ポイント割れまで下げたところのため突っ込み警戒感も出やすいが40ポイント前後を下回るか一時的に超えても維持できない推移なら安値試しが続きやすいとみる。

【当面のポイント】

中勢としては8円台序盤(8.10円から8.30円)を上値抵抗帯とし、8円割れの状況が続き始める場合は3月11日安値7.76円を目指してゆく流れとみる。
短期的には、5月19日安値7.98円の後は下げ渋り型の持ち合いだが、持ち合い下放れへ向かいやすいところとみる。
(1)当初、5月19日安値7.98円を下値支持線、8.10円を上値抵抗線とする。
(2)7.98円を割り込まないうちは戻りを試す余地ありとし、8.10円超えからは8.15円前後試しとみるが、8.15円以上は反落注意とする。トルコ中銀金融政策発表からリラ買い反応となる場合やドル円の急伸等がみられる場合は8.20円台へ向かう可能性もあるとみるが、8.20円以上は上昇一巡後の反落警戒とみる。
(3)7.98円割れからは持ち合い下放れに入り7.90円前後を試すとみる。7.90円割れではいったん買い戻しも入りやすいと注意するが、5月26日のトルコ中銀金融政策発表から下げ足が早まる場合やドル円が一段安する場合は3月11日安値7.76円を目指す流れとみる。

【当面の主な予定】

5月23日
 16:00 5月 製造業景況感 (4月 109.7)
 16:00 5月 設備稼働率 (4月 77.8%)
 17:00 4月 観光客数 前年比 (3月 129.7%)
5月26日
 16:00 5月 経済信頼感指数 (4月 94.7)
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 14.00%、予想 14.00%)
 20:30 週次 外貨準備高 グロス 5/20時点 (5/13時点 612.0億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 ネット 5/20時点 (5/13時点 115.3億ドル)
5月31日
 16:00 1-3月期GDP 前期比 (10-12月 1.5%)
 16:00 1-3月期GDP 前年同期比 (10-12月 9.1%)
 16:00 4月 貿易収支 (3月 -81.7億ドル)
注:ポイント要約は編集部

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