トルコリラ週報:『脆弱なファンダメンタルズを背景に約2カ月ぶり安値圏へ続落』(5/21朝)

トルコリラ円相場は4/28に記録した約4ヵ月ぶり高値8.90円をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約2ヵ月ぶり安値となる7.97円まで下落しました。

トルコリラ週報:『脆弱なファンダメンタルズを背景に約2カ月ぶり安値圏へ続落』(5/21朝)

『脆弱なファンダメンタルズを背景に約2カ月ぶり安値圏へ続落』

〇今週のトルコ円、週明け早々8.39まで上昇後、世界的リスク回避の流れの中節目8.00割れ
〇週後半にかけ、約二か月ぶり安値7.97まで下落、8.00前後で越週
〇トルコ円、テクニカルには主要テクニカルポイント下抜け、地合い急速に悪化
〇ファンダメンタルズも地政学リスク悪化懸念、非論理的な金融政策運営等下落材料揃う
〇資本規制のリラ売り抑制効果も剥落、引き続きトルコリラ円下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.80ー8.20

今週のレビュー(5/16−5/20)

今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初8.35円で寄り付いた後、早々に週間高値8.39円まで上昇しました。しかし、90日移動平均線をバックに伸び悩むと、@中国経済の失速懸念(中国の主要経済指標が軒並み悪化→チャイナショックの再来懸念)や、A上記@を背景とした世界的なリスク回避ムード(トルコなど新興国からの資金流出圧力)、Bトルコ3月経常収支の赤字額拡大(結果▲55.5億ドル、前回▲51.5億ドル)、Cロシアを巡る地政学的リスク(ロシア・ウクライナ問題がフィンランドやスウェーデンに飛び火する恐れ)、D心理的節目8.00円を下方ブレイクしたことに伴う短期筋の見切り売りが重石となり、週後半にかけて、3/16以来、約2ヵ月ぶり安値となる7.97円まで下落しました。週末にかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間5/21午前4時35分現在)では、8.03円前後で推移しております。

来週の見通し(5/23−5/27)
トルコリラ円相場は4/28に記録した約4ヵ月ぶり高値8.90円(1/4以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約2ヵ月ぶり安値となる7.97円(3/16以来の安値圏)まで下落しました。この間、主要サポートポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲上下限)を軒並み下抜けした他、強い下落トレンド入りを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの「急速な悪化」を意識させるチャート形状となりつつあります。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの拡大懸念(トルコはロシアと親密な関係にあるため、地政学的リスクの長期化はトルコ経済にマイナスの影響→フィンランドやスウェーデンによるNATO加盟申請を受けて、ロシアを巡る地政学的リスクは今後一段と高まる恐れ)や、

Aトルコ中銀による非論理的な金融政策運営(トルコではCPIが前年比69.97%、PPIが前年比121.82%と高インフレ環境が続いているが、トルコ中銀はエルドアン大統領による高金利を忌み嫌う独自理論に逆らうことができず、利上げのカードを使うことができない)、B上記Aを背景としたトルコリラの実質金利急低下、C米FRBによるタカ派スタンスの継続姿勢(パウエルFRB議長は今週も金融引き締めスタンスを明確化)、Dトルコ経済の先行き不透明感、E経常赤字拡大に伴う恒常的なリラ売り圧力など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。

『脆弱なファンダメンタルズを背景に約2カ月ぶり安値圏へ続落』

トルコ政府やトルコ中銀は昨年12月以降、リラ売り抑制を目的とした強引な市場介入や資本規制を続けてきましたが、足元ではこうした措置の副作用を通じて、リラ売り抑制効果が徐々に剥落しつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(尚、来週は5/26に予定されているトルコ中銀政策金利発表に注目。インフレ昂進が顕著な中、本来であればインフレ抑制の大幅利上げが意識されるところではありますが、上述の通り、トルコ中銀はエルドアン大統領の方針に背くことが出来ず、今回も据え置き措置を講じる可能性が高いと考えられます→リラ売り要因)。

来週の予想レンジ(TRYJPY):7.80ー8.20


注:ポイント要約は編集部

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