『CPI上昇でリラの実質金利は一段と低下。下落リスクに要警戒』
〇今週のトルコ円、FOMC前ポジション調整に、週央にかけ週間高値8.82円まで上昇
〇FOMC後はFRBの引き締め姿勢、トルコ4月CPIの上昇等に8.70に反落
〇トルコ円テクニカルの地合い強いが、規制で需給を歪めており、テクニカル分析の効果は期待しづらい
〇ファンダメンタルズは地政学的リスクの高まり、トルコの低金利政策等トルコ売り材料多い
〇トルコリラ円相場の反落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):8.55ー8.95
今週のレビュー(5/2−5/6)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初8.74円で寄り付いた後、@米FOMCを控えたポジション調整を背景に、週央にかけて、週間高値8.82円まで上昇しました。しかし、4/28に記録した直近高値8.90円をバックに戻り売り圧力が強まると、A注目された米FOMCにて金融引き締め姿勢が明確化されたこと(政策金利の50bp引き上げと、バランスシートの圧縮スケジュール詳細化)や、B上記Aを背景とした過剰流動性相場の逆流懸念(トルコから米国への資本流出懸念)、Cトルコ4月消費者物価指数(結果+69.97%、予想+68.00%、前回61.14%、※2002年2月以来、約20年ぶり高水準)の伸び率昂進(トルコリラの実質金利低下)、Dトルコ4月製造業PMI(結果49.2、前回49.4)の冴えない結果が重石となり、週末にかけて、週間安値8.70円まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、結局8.73円前後での越週となっております。
来週の見通し(5/9−5/13)
トルコリラの対円相場は3/11に記録した約2ヵ月半ぶり安値7.76円をボトムに反発に転じると、4/28に一時8.90円(1/4以来、約4ヵ月ぶり高値圏)まで上昇しましたが、今週は週を通して上値の重い展開となりました。強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転やダウ理論の上昇トレンドが成立しているため、テクニカル的に見て、地合いは強いと解釈できるものの、トルコリラは昨年12月以降、かなり強引な資本規制を通じてリラ売り抑制を図ってきたため、テクニカル面が強いからと言って油断は出来ないと判断できます(資本規制で需給を歪めているため、テクニカル分析の効果を期待しづらい)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(プーチン露大統領が5/9の対独戦勝記念日にウクライナに対する勝利宣言を行うとの思惑→ロシア・ウクライナと地政学的リスクが一段と高まるとの警戒感→両国と親密関係にあるトルコ経済への下押し圧力)や、Aエルドアン大統領の低金利政策(今週発表されたトルコ4月消費者物価指数は約20年ぶり高水準を示しましたが、トルコ中銀はエルドアン大統領の低金利理論に逆らわないと見られることから、インフレ退治の利上げに踏み切れない状態がずるずる続くと予想→トルコリラの実質金利低下→リラ売り再開)、B米FRBによるタカ派スタンスの明確化(トルコから米国への資本流出圧力)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方で引き続き、トルコリラ円相場の反落をメインシナリオとして予想いたします(リラ売り防止を目的とした資本規制の長期化は難しく、副作用の顕在化と共に徐々に通貨リラには下押し圧力が加わる見込み)。尚、来週はトルコの経済イベント(トルコ3月雇用統計やトルコ3月鉱工業生産のみ)に乏しいことから、米経済指標を睨みながらの神経質な相場展開が予想されます。米長期金利が一段と上昇する局面では、ドル建て債務を多く抱えるトルコリラには強い下押し圧力が加わる恐れがあるため、来週はダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(TRYJPY):8.55ー8.95
トルコ円日足
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