『ドル高・円安基調は変わらず。来週は米インフレ指標に注目』
〇今週のドル円、FOMC後の材料出尽くし感、パウエル議長のハト派発言に一時128.65まで急落
〇その後は、米長期金利の反発、株価の急落に高値130.80に上昇、130円台半ばで越週
〇米雇用統計は失業率、平均時給が予想比悪化、NFPは予想上回り、強弱まちまち、市場は反応薄
〇ユーロドル、FOMC後週間高値1.0642まで上昇後伸び悩み、一時1.0483まで急落
〇ドル円、複数のサポートポイント控え、三役好転や強気パーフェクトオーダーなど成立、地合い強い
〇ファンダメンタルズも、今回FOMCはタカ派との市場の再認識等がドル円をサポート
〇引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週は米インフレ指標に要注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):128.50ー132.00、(EURUSD):1.0350−1.0700
今週のレビュー(5/2−5/6)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初129.77で寄り付いた後、@米4月ISM製造業景況指数(結果55.4、予想57.6)の冴えない結果や、A注目された米FOMCを通過した材料出尽くし感(予想通りFFレート誘導目標の50bp引き上げと、バランスシート縮小スケジュールの詳細化を公表。6月から8月までは月475億ドルペース、9月以降は最大950億ドルペースで縮小予定)、BパウエルFRB議長による「75bpの利上げは積極的に検討しているものではない」との慎重発言、C上記ABを背景とした米長期金利の急低下が重石となり、週央にかけて、週間安値128.65まで急落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると(一目均衡表転換線をバックに押し目買い圧力が広がると)、D短期筋のショートカバー(パウエルFRB議長記者会見後にショートポジションを造成した短期筋のストップBUY)や、E米金利上昇に伴うドル高圧力(市場による75bpの利上げ催促相場再開→米10年債利回りはパウエル議長発言後に一時2.91%へ低下するも、週末にかけて結局2018年11月以来となる3.14%へ急上昇)、F株式市場の急反落(資産現金化需要のドル買い圧力)、G資源価格の急上昇(原油先物価格急上昇→本邦貿易赤字の拡大懸念→構造的な円売り圧力)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値130.80まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、結局130.57での越週となっております。尚、注目された米4月雇用統計は、失業率(結果3.6%、予想3.5%)および平均時給(結果0.3%、予想0.4%)が予想比悪化した一方、非農業部門雇用者数(結果42.8万人、予想39.1万人)が予想を上回るなど強弱まちまちの結果となったため、市場の反応は限定的となりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0536で寄り付いた後、@シュナーベルECB専務理事による「7月利上げは可能」「資産購入はおそらく6月末までに終了させる必要性がある」とのタカ派的な発言や、AパウエルFRB議長による「75bpの利上げは積極的に検討しているものではない」との慎重な発言、B上記Aを背景とした米長期金利の急低下(米10年債利回りは3.00%から2.91%へ低下)、C株式市場の堅調推移が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0642まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、D米金利上昇に伴うドル高圧力や、E欧州経済の先行き不透明感(欧州連合はロシアからの石油の輸入を禁止する追加制裁案を3/4に発表→欧州圏におけるエネルギー不足→インフレ昂進→欧州経済への下押し圧力)、FパネッタECB専務理事による「ECBは7月に利上げすべきでない」とのハト派的な発言、G株式市場の冴えない動き(資産現金化需要のドル買い圧力)、Hロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク(有事のドル買い)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0483まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、Iフランス中銀ビルロワドガロー総裁やドイツ連銀ナーゲル総裁による早期利上げを示唆するタカ派的な発言や、J上記Iを背景とした欧州債利回りの上昇が支援材料となり、結局1.0548前後まで幾分持ち直しての越週となっております。
来週の見通し(5/9−5/13)
<ドル円相場>
ドル円は米FOMC後に一時128.65まで急落するも、週末にかけて結局130.80まで値を戻す力強い動きとなりました。ダウンサイドに複数のサポートポイントを控えていること、日足・週足・月足の全てで一目均衡表三役好転や強気パーフェクトオーダーなどの強い買いシグナルが成立していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます(FOMC後の反落局面でも押し目買いが殺到→下値の堅さを再確認)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派スタンスの明確化(パウエルFRB議長による「75bpの利上げは積極的に検討しているものではない」との発言が市場で一人歩きする結果となったが、同氏は「インフレはあまりにも高い」「今後2回の会合で50bpの利上げ議題を想定」とも発言している他、声明文の中にも、“the committee is highly attentive to inflation risks”との記載があるため、今回のFOMCはむしろ予想以上にタカ派的だったと整理することが可能)や、A日銀による金融緩和の継続方針(日銀は先週の金融政策決定会合で指値オペ常設化を発表した他、黒田日銀総裁も「円安は全体としてプラス」との円安容認姿勢を強調)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利拡大に伴うドル買い・円売り。日米10年債利回り格差は年初の1.56%から2.92%へ急拡大)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています(上記以外にもロシア・ウクライナ問題に端を発した有事のドル買いや、コモディティ価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念などドル買い・円売りを促す材料は増加傾向)。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は5/11に発表される米4月消費者物価指数や、5/12の米4月生産者物価指数、5/13の米4月輸入物価指数などのインフレ指標に注目が集まります。上術の通り、今回の米FOMC声明では、“the committee is highly attentive to inflation risks(委員会はインフレリスクに高い関心を寄せている)”との文言が追加されており、米FRBが景気指標よりもインフレ指標を重視する可能性が高いことを示唆しています。上記インフレ指標が市場予想を上回る場合には、米大幅利上げ(75bpの追加利上げなど)を催促する形で、米長期金利上昇→米ドル高の流れが加速すると考えられるため、来週はドル円のアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。(4/28に記録した約20年ぶり高値131.25を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):128.50ー132.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496(昨年11/10以来の高値圏)をトップに反落に転じると、4/28に2017年1月以来、約5年3ヵ月ぶり安値となる1.0471まで急落しました(今週も米FOMC後に一時1.0642まで反発するも週末にかけて1.0483まで反落するなど上値の重さを再確認)。上方に複数のレジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドなど)を控えていることや、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーが継続していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます(ユーロドル=1.0000のパリティ割れが射程圏内)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(5/9の対独戦勝記念日にロシアが勝利宣言を行うとの警戒感)や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(欧州連合はロシアからの石油の輸入を禁止する追加制裁案を発表→欧州圏におけるエネルギー不足→インフレ昂進リスク→欧州経済への下押し圧力)、B米FRBによるタカ派スタンスの明確化(米FRBはインフレ抑制を最優先→米金利上昇と早期バランスシート縮小に伴うドル高圧力)、C欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力(独米10年債利回り格差は年初の1.76%から2.02%へ急拡大)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は5/10のドイツ5月ZEW景況感調査以外に目立った欧州経済指標が予定されていないため、米経済指標(米4月消費者物価指数や、米4月生産者物価指数など)を睨みながらの相場展開が予想されます(上記以外に5/9の対独戦勝記念日にも要警戒)。ドイツZEW景況感調査が市場予想を下回る場合や、米インフレ指標が市場予想を上回る場合などには、欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買いが強まる可能性があるため、来週はユーロドル相場の下落リスクに注意を要する1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0350−1.0700
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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