『脆弱なファンダメンタルズを背景に上値余地は限定的か』
〇今週のトルコ円、オスマン・カバラ氏に対する終身刑判決等に4/26にかけ週間安値8.57まで下落
〇その後は円安の進行、トルコリラ新防衛策導入の思惑に週後半にかけて、週間高値8.90まで上昇
〇トルコ円、主要レジスタンスポイントを上抜け、三役好転も点灯、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズは地政学リスク悪化懸念、エルドアン大統領の求心力低下等トルコ売り材料多い
〇トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):8.55ー8.95
今週のレビュー(4/25−4/29)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初8.72円で寄り付いた後、@トルコ4月景気動向指数(結果107.7、前回108.2)の冴えない結果や、A実業家オスマン・カバラ氏に対する国家転覆罪としての終身刑判決(欧米諸国はこれまでカバラ氏の釈放を求めてきたため、本件を機に欧米諸国とトルコの関係が一段に悪化する恐れあり)、B米FRBによるタカ派傾斜観測が重石となり、翌4/26にかけて、週間安値8.57円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、Cハト派な日銀金融政策決定会合を受けた円独歩安の流れ(ドル円は約20年ぶり高値131.25まで急上昇→トルコリラ円連れ高)や、
Dトルコ中銀によるインフレ見通しの大幅引き上げ(前回までの23.2%から42.8%へ大幅引き上げ)、E上記Dを背景としたトルコ中銀による利上げ観測、Fトルコ政府による外国資金を呼び込む新計画策定の思惑(資金を最低2年間トルコ国内に留めておくことを条件に外国人投資家に対し金利ゼロでドル建て4%のリターンを保証する制度)などが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値8.90円(本年1/4以来、約4ヵ月ぶり高値圏)まで上昇しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、週末にかけて値を崩し、本稿執筆時点(日本時間4/30午前4時45分現在)では8.73円前後で推移しております。
来週の見通し(5/2−5/6)
トルコリラの対円相場は3/11に記録した約2ヵ月半ぶり安値7.76円をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、1/4以来、約4ヵ月ぶり高値となる8.90円まで急伸しました。この間、主要レジスタンスポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(5/9に予定されている対独戦勝記念日にプーチン露大統領が勝利宣言を行うとの思惑→向こう1・2週間で戦況が一段と悪化する公算大→ロシア・ウクライナ両国と親密関係にあるトルコ経済への下押し圧力)や、Aエルドアン大統領の独自理論に基づく低金利政策(今週発表されたインフレ見通しは前回比大幅な上方修正がなされたが、トルコ中銀はエルドアン大統領の圧力のもと、これまでと同様インフレ退治の利上げに踏み切れない可能性大→トルコリラの実質金利低下→トルコリラ売り)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(来週の米FOMCで50bpの利上げ実施とバランスシート縮小に係るスケジュールの提示がなされる予定→過剰流動性相場の逆流に繋がる恐れ→トルコから米国への資本流出圧力)、Cエルドアン大統領の求心力低下(市場調査会社イプソスの「幸福度」調査でトルコは30カ国中最下位を記録)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
資本政策(含む預金保護策)を通じたリラ安防衛は足元一定の効果が出ているように見えるものの、こうした措置の長期化は難しく、結果として副作用を伴いながらリラ急落に繋がるリスクを孕んでいます。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は5/3ー5/4に予定されている米FOMCに加えて、5/5のトルコ4月消費者物価指数、トルコ4月生産者物価指数、トルコ4月イスタンブール製造業PMIなどに注目が集まります。
来週の予想レンジ(TRYJPY):8.55ー8.95
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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