『市場のテーマはドル独歩高と円独歩安の持続性』
〇今週のドル円、週央にかけ世界的なリスクオフ再燃懸念等に週間安値126.95まで急落
〇週後半、日銀政策決定会合でのハト派姿勢強化に約20年ぶり高値131.25まで急伸
〇週末にかけては、ポジション調整と米株価指数急落に129.80前後まで値を崩す展開
〇ユーロドル、週明け高値1.0842まで上昇後、週後半に5年3ヵ月ぶり安値1.0472まで急落
〇ドル円、主要テクニカルポイントを軒並み上抜け、日足・週足・月足の全てで強い買いシグナル成立
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いをはじめドル買い円売り材料多い
〇引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週は米国で雇用統計等の指標、FOMC等重要イベント多く波乱含み
〇来週の予想レンジ(USDJPY):126.00ー132.00、(EURUSD):1.0300−1.0700
今週のレビュー(4/25−4/29)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初128.60で寄り付いた後、@本邦輸出筋によるスポ末絡みのドル売り・円買いや、A新型コロナウイルス感染拡大に端を発した中国経済の失速懸念(ロックダウン長期化懸念→チャイナショック再来への警戒感→原油価格や鉄鉱石価格急落)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(過剰流動性相場逆流への警戒感)、C上記ABを背景とした世界的なリスクオフ再燃懸念(市場心理悪化→株安→リスク回避の円買いの波及経路と、市場心理悪化→質への逃避の米債買い→米金利低下→米ドル売りの波及経路の組み合わせ)、D資源価格下落に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念後退が重石となり、週央にかけて、週間安値126.95(4/18以来)まで急落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、E中国上海市の新型コロナウイルス感染者数が直近3週間で最小を記録したことや、F上記Eを背景に中国当局がロックダウン措置緩和の方向性を示唆したこと、G株式市場の持ち直し(リスク選好の円売り圧力)、H日銀金融政策決定会合でのハト派的な結果(声明文内に「上記の金融市場調節方針を実現するため、10年物国債金利について0.25%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施することとした」との文言追加)、I黒田日銀総裁による「全体として円安がプラスとの評価は変えていない」とのハト派的な発言、J上記HIを背景とした円金利の急低下(円金利低下に伴う円売り圧力)、K心理的節目130.00および131.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週後半にかけて、2002年4月以来、約20年ぶり高値となる131.25まで急伸しました。
もっとも、週末にかけては、L急ピッチな上昇に対する反動が見られたことや、M本邦大型連休突入に伴うポジション調整(フラッシュクラッシュ発生への警戒感)、N米主要株価指数の急反落(市場心理悪化→VIX上昇→リスク回避の円買い再燃)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間4/30午前5時00分現在)では、129.80前後まで値を崩す展開となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、@フランス大統領選挙で現職のマクロン大統領が右翼「国民連合」のルペン氏を破って再選を果たしたこと(政局不透明感の後退)を好感する形で、週明け早々に週間高値1.0842まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、Aロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まりや、Bリスクオフ再燃に伴う資産現金化需要のドル買い圧力、C欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、Dドイツ5月消費者信頼感指数(結果▲26.5、予想▲16.0)の冴えない結果、
E欧州経済の下振れ懸念(ロシアはルーブルで支払わない買い手へのガス供給を遮断する予定との一部報道→欧州圏のエネルギー不足長期化懸念)、Fドイツ4月消費者物価指数速報値(結果+7.4%、予想+7.2%、※前年比)の伸び率加速、G心理的節目1.0500の下方ブレイク(ロング勢のストップSELL誘発)が重石となり、週後半にかけて、2017年1月以来、約5年3ヵ月ぶり安値となる1.0472まで急落しました。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間4/30午前5時00分現在)では、1.0545前後で推移しております。
来週の見通し(5/2−5/6)
<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週半ばにかけて、約20年ぶり高値となる131.25まで急伸しました。わずか3ヵ月で約18円の値幅を伴う歴史的急騰が続いております。この間、主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、日足・週足・月足の全てで強い買いシグナル(一目均衡表の三役好転や移動平均線のパーフェクトオーダーなど)が成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます(※特にアベノミクス後の高値として市場参加者に意識されていた125円台後半に位置する黒田シーリング突破後の勢いが顕著)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの悪化懸念(対独戦勝記念日の5/9にロシアが勝利宣言を行うとの思惑→来週は戦況が一段と悪化する恐れ→有事のドル買い)や、A上記@に伴う資源・エネルギー価格の上昇圧力(資源輸入国である日本の貿易赤字拡大懸念→構造的な円売り圧力)、B米FRBによるタカ派傾斜観測、C日銀によるハト派傾斜観測(指値オペ常設化を通じた円金利の抑制方針明確化。黒田総裁は円安が全体としてプラスとの評価を維持)、D上記BCを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り圧力)、E国内輸入企業による実需のドル買い、F世界的な円安黙認観測(先週のG7共同声明で「為替の安定」が共同声明に盛り込まれず→世界的な円安黙認+ドル高容認の組み合わせ)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は5/2の米4月ISM製造業景況指数、5/4の米4月ADP雇用統計、米4月ISM非製造業景況指数、5/3ー5/4の米FOMC、5/6の米4月雇用統計など、米国側の重要イベントが目白押しとなります。特に米FOMCへの注目度が高く、50bpの大幅利上げと、バランスシート縮小(QT)に関するスケジュール(同月中の圧縮開始)が決定されると予測されています。また、パウエルFRB議長もタカ派的なスタンスを維持する公算が大きく、米金利上昇→米ドル高の流れが続くと考えられます。但し、本邦大型連休期間中は流動性欠如の隙をついたフラッシュクラッシュの発生が警戒される傾向にあるため、チャイナショック再燃に伴う市場心理の悪化や、米FRBによるタカ派傾斜に伴う過剰流動性相場逆流が意識される局面では、過去最大規模に膨らんでいる円ショートポジションのアンワインド圧力も相まって一時的にドル円・クロス円が大きく値を崩すシナリオも想定されます。来週は上昇トレンドの継続をメインシナリオに据えつつも、ダウンサイドリスクへの警戒も念のため必要となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):126.00ー132.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496(昨年11/10以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、2017年1月以来、約5年3ヵ月ぶり安値となる1.0472まで急落しました。この間、主要テクニカルポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や移動平均線のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます(市場参加者に注目されているユーロドル1.0000のパリティ割れが引き続き射程圏内)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの継続(5/9の対独戦勝記念日にロシアが勝利宣言を行うとの警戒感→来週はロシア・ウクライナの戦況が一段と悪化する恐れあり)や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(欧州圏におけるエネルギー不足とインフレ昂進リスク→欧州経済の下押し懸念)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(米金利上昇と早期バランスシート縮小→米ドル買い圧力)、C欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は5/3 のユーロ圏3月失業率や、5/4ユーロ圏3月小売売上高以外に特段目立つユーロ圏イベントが予定されていないため、米国イベントを睨みながらの神経質な値動きが予想されます。米経済指標が力強い結果を示す場合や、米FOMCでタカ派的なスタンスが再確認される場合などには、欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買いが強まる可能性があるため、来週もユーロドルのダウンサイドリスクに注意を要する一週間となりそうです(心理的節目1.0500の下方ブレイクに成功したことから、オプション市場ではパリティ割れを織り込む動きが活発化)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0300−1.0700
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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