トルコリラ円見通し 3月11日以降の高値更新からドル円の反落に同調して失速(22/5/2)

トルコリラ円の4月28日は8.87円から8.66円の取引レンジ、29日早朝の終値は8.85円で前日終値の8.67円から0.18円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 3月11日以降の高値更新からドル円の反落に同調して失速(22/5/2)

トルコリラ円見通し 3月11日以降の高値更新からドル円の反落に同調して失速

〇トルコリラ円、4/28夜8.87到達、ドル円反落に同調し4/30未明8.70まで失速
〇対ドル4/29早朝終値14.79、ドル高基調強まる展開、4/13高値から連日安値切り下げ
〇トルコ中銀年間インフレ予想42.8%、希望的観測で実現困難とみる
〇リラ預金政策、拡大計画策定中との報道、外貨確保強化を目的か
〇トルコ3月貿易収支81.7億ドル赤字、海外観光客数はパンデミック前水準回復
〇8.58を割り込まないうちは上昇基調継続し、8.87超えからは9.00前後を試すとみる
〇8.58割れの場合、8円台序盤を目指す流れへ進むとみる

【概況】

トルコリラ円の4月28日は8.87円から8.66円の取引レンジ、29日早朝の終値は8.85円で前日終値の8.67円から0.18円の円安リラ高だった。29日は8.85円から8.70円の取引レンジ、30日早朝の終値は8.74円で前日終値からは0.11円の円高リラ安だった。週間では4月22日終値8.72円から0.02円の円安リラ高で週を終えた。
日銀が4月28日の金融政策決定会合でマイナス金利の維持、金融緩和政策の継続を決定、さらに長期金利上昇を抑制するために毎営業日において指値オペを行うということを宣言したために円売りが加速してドル円は日銀発表前の128円台後半から急伸して28日深夜には131.24円まで大幅高となった。この流れに同調してトルコリラ円も4月28日夜高値で8.87円を付けて4月20日高値8.83円を上抜き3月11日安値7.76円以降の最高値とした。
しかしドル円の急伸は28日深夜までに買い一巡となり、その後は131円台到達に対する調整安に入り29日は終日の下落で30日未明には129.30円まで下げた。このためトルコリラ円もドル円の反落と同調して30日未明には8.70円まで失速して日銀金融政策発表からの急騰幅の大半を解消した。

【対ドルでは4月28日に下落一服するも29日は再び安値更新に】

ドル/トルコリラの4月28日は14.83リラから14.68リラの取引レンジ、29日早朝の終値は14.79リラで前日終値の14.80リラからは0.01リラのドル安リラ高だった。29日は14.86リラから14.79リラの取引レンジ、30日早朝の終値は14.84リラで前日終値からは0.04リラのドル高リラ安だった。週間では4月22日終値の14.73リラから0.11リラのドル高リラ安で週を終えた。
4月29日早朝にかけてはややドル高に一服感も出ていたが29日夜へ下落しており4月13日高値14.48リラからはほぼ連日の安値切り下げとなっている。
インフレ進行に対する米連銀のタカ派への傾斜による米長期債利回り上昇によるドル高感、ウクライナ戦争とロシア制裁による負の影響を受けるユーロの下落、金融緩和をやめられない日銀の足元を見てのドル高円安の進行、原油やゴールドが3月序盤の高騰後に調整的な動きにつかまっていることによるコモディティ通貨の反落等、為替市場全般のドル高基調が強まる展開が続いており、トルコリラも対ドルでは4月13日高値から2.6%安となっている。

【トルコ中銀は年間インフレ予想を二倍に上方修正】

トルコ中銀が4月28日に発表した年間のインフレ見通しは年末時点で42.8%とされ、前回1月予想の23.2%に対して倍近い大幅上方修正となった。中銀は今年6月に70%前後でピークを付けてその後に低下して42.8%となり、2024年には一桁台に低下するという見通しだ。
3月の消費者物価上昇率は61.14%であり、5月5日に発表される4月の消費者物価上昇率の事前予想は68.0%となっている。また消費者物価コア指数も3月時点で48.4%に達しており、ウクライナ戦争とロシア制裁の影響によるエネルギー価格の高騰は現時点では高止まりで落ち着いているものの先行きの需給逼迫による一段高も懸念される状況にある。

中銀による年末インフレ率見通しは市場予想の55.5%を下回っており、中銀見通しは今までも相当に甘く今回も希望的観測に見える。エルドアン大統領が「利下げがインフレを低下させる」との論陣を張って昨年9月から12月まで4会合連続の大幅利下げを強行した結果がインフレの加速であり、政策と現実の矛盾の中で中銀としてはリアルなインフレ深刻化予想数字を公式には出せないのではないかとも思われる。
エルドアン大統領は5月1日に、インフレは5月を過ぎれば低下に転じ、年後半にはトルコ経済の見通しもポジティブなものになるだろうと述べているが、エルドアン大統領及び中銀の希望的な見通しを実現するにはリラの安定ないしリラ高によるインフレ抑制、昨年来の世界規模におけるサプライチェーン混乱の改善、ウクライナ戦争とロシア制裁の早期収束見通しによる国際商品の下落基調への転換が必要だが、いずれも難しいと思われる。

【リラ預金拡大政策】

トルコ中銀はトルコ債を購入する海外投資家に対して最低2年間の預入期限を守れば償還時にドル建てで4%のリターンを保証するという計画を策定中と報じられた。中銀はノーコメントとしているが、国内輸出企業が稼いだ外貨の預け入れ比率の拡大に加えて外貨確保を強化したい姿勢と思われる。
4月28日に発表された4月22日時点の外貨準備高はグロスで661億ドルとなり4月15日時点の690.4億ドルから減少、ネットでは171.6億ドルとなり4月15日時点の191.3億ドルから減少している。

【トルコの貿易赤字は高水準】

トルコ統計局による3月の貿易収支は81.7億ドルの赤字となった。輸出が前年同月比20.1%増、輸入が同31.2%増と拡大しているが、世界的なインフレとリラ暴落により赤字は昨年10月の15.1億ドルから今年1月に102.8億ドルへ急拡大した後も2月の79.6億ドルを含めて高水準にとどまっている。
輸出先別では1位のドイツで19億700万ドル(8.4%)、米国が15億5900万ドル(6.9%)、イタリアが12億7800万ドル(5.6%)、英国が11億6800万ドル(5.1%)、イラクが11億6200万ドル(5.1%)だった。輸入先別では1位はロシアで42億2400万ドル(13.7%)、その後を中国が36億1800万ドル(11.7%)、ドイツが22億4000万ドル(7.3%)、米国が13億2500万ドル(4.3%)、イタリアが11億8300万ドル(3.8%)と続いている。

【3月の海外観光客数はパンデミック前の水準を概ね回復】

トルコ文化観光省が4月28日に発表した海外からの観光客数は207.9万人となり前年同月比は129.7%増だった。
パンデミック発生前の2019年3月が223.2万人、パンデミック発生時の2020年3月が71.8万人に激減、2021年3月は90.5万人だったが、感染拡大の波を繰り返しながらも世界全体がウィズ・コロナ政策により渡航制限等を緩和してきたことで観光客も戻っている。
3月はウクライナ戦争勃発もあり影響が懸念されたものの、ロシアからの入国者は11万4384人で昨年3月の21万9458人から半減したが、イランからの入国者が27万4815人で昨年3月の7万1517人から4倍近い増加となったこと、ドイツやブルガリア、英国からの入国者数も大幅増となったことが好影響をもたらしたようだ。またウクライナからの入国者数は6万6233人で2020年3月の2万2548人、2021年3月の5万1025人から増加している。
今年1-3月の観光収入は54.5億ドルとなり10-12月期の73.3億ドルからは減少したが前年同期の24.5億ドルからは倍増して2020年同期の41.0億ドル及びパンデミック前の2019年同期の46.3億ドルを上回った。

【当面のポイント、日足相対力指数の弱気逆行が気になる】

【当面のポイント、日足相対力指数の弱気逆行が気になる】

トルコリラ円は概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで推移している。2020年11月6日安値、2021年3月8日安値、同年6月2日と6月21日のダブル底、同年9月27日安値、同年12月20日安値でこのサイクルの底をつけてきたが、12月20日安値から3か月弱の今年3月11日安値で直近のサイクルボトムを付けて上昇期に入った。
前回のサイクルトップである12月23日高値を基準とすればトップ形成期は3月後半から4月後半にかけての間と想定されるので、4月28日には3月11日以降の高値を切り上げたもののそろそろ反落警戒期に来ているところだ。
ドル円の歴史的な上昇に押し上げられる展開が続いているので、さらにトップ形成期が長引く可能性もあるが、4月20日高値を4月28日高値で上抜いた際に相対力指数のピークが切り下がる弱気逆行現象が見られるので、4月27日朝安値8.58円を割り込んで相対力指数が50ポイントを割り込むようだと3月11日からの上昇が一巡してサイクルの下落期に入る可能性が考えられるところと注意したい。

5月3−4日に米連銀による金融政策決定会合であるFOMCがあり、5日未明には声明発表と議長会見がある。5日夕刻にはトルコ物価上昇率の発表がある。米連銀についての市場の事前予想は0.50%利上げと量的金融引き締め開始だが、利上げペースが加速してFOMCのタカ派シフトが一段と強まる場合にはドル高、特にドル円の上昇を招いてトルコリラ円もドル高リラ安が鈍ければ円安に押し上げられる可能性がある。ただし、当面のドル買い材料を消化してドル円が伸びず、トルコリラが物価上昇により売られる場合は3月11日からの上昇基調が途切れるきっかけとなる可能性がある。

以上を踏まえて中勢のポイントを示す。
(1)当面、4月27日朝安値8.58円を下値支持線、4月28日高値8.87円を上値抵抗線とする。
(2)8.58円を割り込まないうちは3月11日以降の上昇基調を継続し、8.87円超えからは9.00円前後を試すとみる。9.00円前後は反落警戒圏とみてその後に8.75円割れへ下げるところからは下落期入りを疑う。
(3)8.58円割れの場合、概ね3か月から4か月周期のサイクルにおける下落期入りとなる可能性を踏まえて8円台序盤(8.10円から8.35円)を目指す流れへ進んでゆくのではないかと思われる。

【当面の主な予定】

5月2日から5月4日は砂糖際でトルコ市場は休場
 ※ 砂糖際=1か月のラマダン(断食明け)の3日間開催される連休
5月5日
 16:00 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 5.46%、予想 6.0%)
 16:00 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 61.14%、予想 68.0%)
 16:00 4月 消費者物価コア指数 前月比 (3月 4.4%)
 16:00 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 48.4%)
 16:00 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 9.19%)
 16:00 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 114.97%)
 16:00 4月 イスタンブール製造業PMI (3月 49.4)
 20:00 週次 外貨準備高 4/29時点 グロス (4/22時点 661.0億ドル)
 20:00 週次 外貨準備高 4/22時点 ネット (4/22時点 171.6億ドル)
5月10日
 16:00 3月 失業率 (2月 10.7%)


注:ポイント要約は編集部

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