トルコリラ円見通し ドル円の失速にドル高リラ安も重なり4月20日以降の安値を更新
〇トルコリラ円、4/25ドル円下落で8.63へ一段安、一旦8.67まで戻すも4/26午前8.62へ値を下げる
〇対ドルは4/13から下落基調、4/25はドルストレートでのドル高感が強まり、4/26午前14.80をつける
〇トルコにとって、近隣での有事リスク拡大懸念・ユーロやポンド安が圧迫要因となってきている印象
〇トルコ4月製造業景況感は前月より上昇、設備稼働率も改善、製造業の堅調さみせる
〇8.65以下での推移中は一段安余地ありとし、8.60割れからは8.50台中盤への下落を想定する
〇8.66から8.68手前は戻り売りにつかまりやすく、8.68を超える場合は8.70台序盤への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の4月25日は8.74円から8.63円の取引レンジ、26日早朝の終値は8.66円で先週末終値の8.72円からは0.06円の円高リラ安となった。
ドル円の大上昇にトルコリラ円も同調して3月11日から上昇基調に入り、ドル円が4月20日朝に129円台に到達したところで8.83円へ高値を切り上げたが、ドル円が高値警戒感からの調整売りで4月20日深夜に127.44円へ下落した場面で8.68円へ下落し、その後にドル円がジリ高で戻したもののドル/トルコリラでのドル高リラ安に圧されて戻り高値が切り下がり上値が重くなっていた。
4月25日は中国株安と欧州株安、NYダウも当初に大幅続落で開始したことにより金融市場全般の心理が悪化してユーロやポンド、豪ドル等が大幅下落したためにクロス円全般の手仕舞い売りにドル円も失速して25日深夜には127.51円へ下落、26日早朝にはいったん128円台を付けたものの午前序盤の反落で127.34円を付けて20日深夜安値も割り込んだ。ドル/トルコリラでのドル高リラ安も継続したため、トルコリラ円はドル円の深夜への下落局面で8.63円へ一段安となり、いったん8.67円まで戻したものの26日午前に8.62円へ安値を切り下げている。
【対ドルでは4月13日からの下落基調続く】
ドル/トルコリラの4月25日は14.78リラから14.73リラの取引レンジ、26日早朝の終値は14.77リラで先週末終値の14.73リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
先週末のNYダウ大幅下落と25日の中国株安等から米長期債利回りは債券買い戻しの動きでやや低下したものの、ロシア制裁の長期化と中国の感染拡大による景気減速懸念からドルストレートでのドル高が進行してユーロドルが昨年1月天井以降の最安値を更新、ポンドドルが昨年6月天井以降の最安値を更新、原油の反騰時に戻していた豪ドル米ドルも4月5日の戻り高値から急落に転じ、南アランドも3月末からの下落基調が続いており、総じてドルストレートでのドル高感が強まっている。
対ドルでのトルコリラも4月12日夜への一時的な上昇で14.55リラまで戻した後は揺れ返しの下落となり、4月12日に反騰する前の4月12日安値14.77リラを割り込んできた。4月26日午前には14.80リラをつけてこの間の安値を更新している。
米連銀による金融引き締め姿勢の強化度合いは5月3-4日の米FOMCで確認することとなるが、ロシア制裁による影響が比較的低い米国に反して影響度の大きい欧州、英国等は景気減速への懸念も強まりやすく、上海の長期ロックダウンに加えて北京でも感染拡大が見られて規制が始まるとの報道が市場心理を圧迫している。停戦協議への外交的努力を続けているトルコにとっても近隣での有事リスク拡大懸念とユーロやポンド安が大きな圧迫要因となってきている印象だ。
【トルコの製造業は堅調さみせる】
4月25日夕刻に発表されたトルコの4月製造業景況感は109.7となり前月の108.5から上昇した。パンデミック発生直後の2020年4月に66.8まで急低下したところから持ち直し、昨年7月には114.8まで回復していたが、9月からの連続利下げによるリラ暴落で先行き不安となったことで12月には106.1まで低下したもののリラ暴落も落ち着いたことで持ち直している。ただ、ウクライナ戦争もあるため110には届かずにいる。
4月の設備稼働率は77.8%となり3月の77.3%から改善した。パンデミック発生ショックにより2020年4月に61.6まで急低下したところからは持ち直し基調を続け、昨年12月にかけてのリラ暴落に際してもリラ安による輸出競争力上昇感を背景に持ち直しを継続して12月には78.7%まで上昇していた。1月と2月は年末年始のリラ暴落からの反騰とその後の急落やインフレ進行等による懸念もあって伸び悩みとなったが、ウクライナ戦争勃発でも大崩れせずにいる。
エルドアン大統領による「利下げが高インフレを抑える」という持論はうまくいっておらずインフレ率の上昇が収まらないが、利下げによるリラ安が輸出を改善することもエルドアン大統領の狙いでもある。高インフレにより庶民の生活は苦しくなっているが、輸出関連の製造業はリラ安による競争力拡大を活かして健闘しているところといえそうだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月20日午前高値からの反落一巡により4月20日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて新たな強気サイクル入りしているとして25日午前から27日午前にかけての間への上昇を想定していた。
4月21日昼へ戻した後は新たな高値更新へ進めずに22日午後には20日深夜安値を若干割り込み、25日夜に一段安しているため、現状は21日昼高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしているところと思われる。ボトム形成期は25日夜から27日深夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあるが、21日昼高値以降は戻り高値切り下がりが続いているので26日早朝高値8.68円を超えないうちはもう一段安余地ありとする。また25日深夜安値を直近のサイクルボトムとして既に底割れから新たな弱気サイクル入りしている可能性も検討される。
強気転換は26日早朝高値超えからとし、その際は26日の日中から28日昼にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻りを試しに入るとみるが、先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とする。
60分足の相対力指数は4月26日早朝への反発時には50ポイントへ届かずに失速しているのでまだ一段安余地ありとするが、相場が安値を切り下げるところで指数のボトムが切りあがる強気逆行が見られる場合は強気転換注意とし、55ポイント超えからは反騰入りとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.60円を下値支持線、8.68円を上値抵抗線とする。
(2)8.65円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、8.60円割れからは8.50円台中盤(8.57円から8.53円)への下落を想定する。8.55円以下は反騰注意とするが、8.63円以下での推移なら27日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.66円から8.68円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、8.68円を超える場合は反騰入りとみて8.70円台序盤(8.70円から8.72円)への上昇を想定する。また8.68円を超えた後も8.66円以上での推移なら27日は高値試しへ向かう可能性が残るとみる。
【当面の主な予定】
4月28日
16:00 4月 経済信頼感指数 (3月 95.7)
20:00 トルコ中銀 年末予想インフレ率 (1/27時点 23.2%)
20:00 週次 外貨準備高 4/22時点
4月29日
16:00 3月 貿易収支 (2月 -78.8億ドル)
16:00 4月 イスタンブール製造業PMI (3月 49.4)
16:00 1-3月期 観光収入 (10-12月 76.3億ドル)
17:00 3月 観光客数 前年比 (2月 186.5%)
5月5日
16:00 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 5.46%)
16:00 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 61.14%)
16:00 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 48.4%)
16:00 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 9.19%)
16:00 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 114.97%)
16:00 4月 イスタンブール製造業PMI (3月 49.4)
注:ポイント要約は編集部
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