ドル円の急落調整で4日ぶりに反落するも8.70円割れから戻す
〇トルコリラ円、ドル円急落で失速するも20日深夜から持ち直し21日早朝8.70台回復
〇対ドルではドルストレートでのドル高進行で連日のジリ安推移、12日から安値切り下げ続く
〇ドル円の変動超えるリラ安の発生がないうちはドル円を見ながら高値を試す展開に
〇ロシア産原油購入にトルコリラ払いも可能に、原油調達でパニックに陥ることは回避されそう
〇8.68以上での推移中は上昇余地ありとして8.80を試すとみる、8.80前後では売りも出やすい
〇8.68割れからは8.65前後への下落を想定、8.65前後ではいったん買われやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の4月20日は8.83円から8.68円の取引レンジ、21日早朝の終値は8.71円で前日終値8.79円からは0.08円の円高リラ安となった。
ドル円の歴史的な大上昇を背景にトルコリラ円は3月11日安値7.76円を起点として上昇基調に入り、ドル円の上昇を追いかける形で4月19日には8.80円へ高値を伸ばしてきた。4月20日午前にドル円が129円台へ一段高したところでトルコリラ円も8.83円まで続伸したが、ドル円が昼へ急落、さらに深夜には127.44円まで一段安となり20日午前高値129.40円からの下げ幅が1.96円に拡大したため、トルコリラ円も8.68円まで失速した。しかし20日深夜からドル円が持ち直しに入り21日朝には128円台を回復してきたため、トルコリラ円も21日早朝には8.70円台を回復、21日午前には8.75円まで戻り高値を切り上げて上昇再開の動きに入っている印象だ。
【対ドルではジリ安基調続く】
ドル/トルコリラの4月20日は14.69リラから14.65リラの取引レンジ、21日早朝の終値は14.67リラで前日終値の14.64リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
ドル円の上昇によってトルコリラ円が上昇基調を継続する一方、米長期債利回り上昇とウクライナ情勢を巡る地政学的リスクを背景にドルストレートでのドル高が進行し、対ドルでのトルコリラも4月12日にいったん反騰したところからは連日のジリ安推移となり安値切り下げが続いてきた。
4月20日は米10年債り利回りが一時2.98%を付けて2018年12月以来の高水準に達したところから利回り確定狙いの債券買い戻しにより前日比0.11%低下の2.83%と下げたためにドル高一服となったが、トルコリラの軟調推移は変わらずに深夜には14.69リラをつけてこの間の安値を更新している。
米長期債利回りが低下したといっても高止まりで上昇基調は変わらず、ウクライナ戦争もロシア軍の攻勢が続いて停戦協議も見通せない状況にあり、近隣としてのトルコリラに対する地政学的な売り圧力も収まらないというところか。
【日銀は再び連続指値オペを通告、ドル円は調整安を消化しつつ上昇基調継続か】
ドル円は4月20日午前高値で129.40円を付けて昨年1月底102.57円以降の最高値を更新したところから20日深夜安値127.44円まで1.96円の円高ドル安となる急落調整が入った。しかし21日午前には128円台前半を回復しており、既に調整安を消化して上昇再開に入り始めた印象だ。
4月20日に発表された2021年度の本邦貿易収支は5兆3749億円の赤字で過去4番目の赤字規模となったが、原油高騰等の輸入インフレが貿易収支と経常収支の悪化を招いて悪い円安が進行している。しかし景気回復が鈍いために日銀は急激な円安への警戒感を多少見せつつも長期金利抑制を止めずに円安容認姿勢を継続している。4月20日にも長期金利の上昇を抑えるために特定の利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を実施、さらに4月21日から26日にかけて連続指値オペを実施すると通告している。
黒田総裁はG20財務相・中銀総裁会合に出席しており、現状の円安に対する言及が注目されるものの、既に2015年6月天井の125.84円を超えているために市場としては新たな円安容認水準を試す状況となっており、130円台到達でも収まらない可能性も指摘されている。
トルコリラ円はドル/トルコリラの変動よりもドル円の上昇が勝って押し上げられる展開が続いており、ドル円の変動を超えるようなリラ安発生とならないうちはドル円を見ながら高値を試す展開と思われる。
【ロシア産原油購入にトルコリラ払いも可能】
ロシアの国営石油最大手ロスネフチはロシア産原油の売却入札について落札代金は全額ルーブルで前払いとした。これまでは大手資源商社との長期契約で売却してきたが、欧米による制裁により5月以降は長期契約ではなく入札方式となる見通しであり、ロシア中銀の設定するドル/ルーブルのレートにより換算されたルーブルによる支払いを原則にするとした。ただルーブル払いが不可能な場合は人民元、米ドル、ユーロ、UAEディルハム、トルコリラでの支払いも可能とした。
トルコは現在まで欧米によるロシア制裁に参加していないが、トルコリラないしは人民元、ルーブルでの支払いによる原油調達が可能となったため、原油調達でパニックに陥ることは回避されそうだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月13日夕高値を前回のサイクルトップ、14日夜安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとして18日午後から20日夕にかけての間への上昇を想定してきた。
4月20日午前時点では8.80円割れを弱気転換注意とし、8.78円割れからは弱気サイクル入りとしたが、4月20日午前に一段高したところから20日夜に8.78円を割り込んでさらに急落したため、20日午前高値で直近のサイクルトップを付けていったん弱気サイクル入りしたと思われる。しかしボトム形成期は14日夜安値を基準とすれば19日夜から21日夜にかけての間と想定され、20日深夜安値から持ち直しているので既に20日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしていると仮定して25日午前から27日午前にかけての間への上昇を想定する。
21日の下値支持線は20日深夜安値までとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして25日夜から27日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、4月20日深夜にかけての下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからもいったん転落したが、その後の反騰で先行スパンに潜り込んできている。先行スパンを上抜き返せないうちはもう一段安の可能性ありと注意するが、先行スパン突破からは上昇再開に入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は4月19日午後から20日午前への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せてから30ポイント台へ急落したが、その後の反騰で50ポイント台へ戻しているため既に上昇再開に入っていると思われる。45ポイント以上での推移中は60ポイント台乗せから70ポイントを目指す上昇を想定するが、45ポイント割れからは下げ再開注意とする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.68円を下値支持線、8.80円を上値抵抗線とする。
(2)8.68円以上での推移中は上昇余地ありとして8.80円を試すとみる。8.80円前後では売りも出やすいと注意するが、上昇が勢い付く場合は20日午前高値8.83円超えを試すとみる。
(3)8.68円割れからは8.65円前後への下落を想定する。8.65円前後ではいったん買われやすいとみるが、22日以降も続落するとみて戻り売り有利の展開とし、下げ足が早まる場合は8.60円台序盤(8.62円から8.60円)へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
4月21日
16:00 4月 消費者信頼感指数 (3月 72.5)
20:30 週次 外貨準備高 4/15時点 グロス (4/8時点 677.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 4/15時点 ネット (4/8時点 183.0億ドル)
4月25日
16:00 4月 製造業景況感 (3月 108.5)
16:00 4月 設備稼働率 (3月 95.7)
4月28日
16:00 4月 経済信頼感指数 (3月 95.7)
20:00 トルコ中銀 年末予想インフレ率 (1/27時点 23.2%)
20:00 週次 外貨準備高 4/22時点
4月29日
16:00 3月 貿易収支 (2月 -78.8億ドル)
16:00 4月 イスタンブール製造業PMI (3月 49.4)
16:00 1-3月期 観光収入 (10-12月 76.3億ドル)
17:00 3月 観光客数 前年比 (2月 186.5%)
注:ポイント要約は編集部
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