129円台到達後の高値警戒感で2円近い調整安
〇ドル円、売り一巡による買い戻しから下げ渋りに入り、21日朝には128円台を回復
〇20日発表の本邦2021年度貿易収支は5兆3749億円の赤字、年度ベースでの赤字幅は過去4番目
〇日銀、20日に続き「連続指値オペ」を4月21日から26日にかけて実施すると通告
〇G20で129円に到達した円安水準に対して黒田日銀総裁がどのような発言を行うのか注目
〇128.65超えからは20日午前高値129.40試し、高値更新からは130円台を目指す流れとみる
〇127.44割れからは126円台前半への下落を想定、126.30以下は反騰注意
【概況】
ドル円は4月20日朝に129円台に到達、129.40円まで高値を伸ばしたところで高値警戒感による売り優勢となって昼過ぎに128.05円へ下落、いったん持ち直しかけたものの米長期債利回りの上昇一服をみて深夜には127.44円へ一段安となり20日朝高値からの下げ幅は1.96円に拡大したが、その後は売り一巡による買い戻しから下げ渋りに入り、21日朝には128円台を回復している。
4月20日午前には日銀による連続指値オペ通告があり日銀の長期金利抑制姿勢は変わらず円安容認姿勢と受け止められたものの3月末からの政策スタンスとしては変わらないとみて一層の円売りを誘わなかった印象だ。米国時間20日(日本時間21日)にはG20財務相・中銀総裁会議が控えており何らかの為替状況への言及も考えられるため、市場も130円へのトライは時期尚早としていったんポジション調整に入ったと思われる。
【日銀は指値オペを続行、貿易赤字拡大】
4月20日に財務省が発表した2021年度の貿易収支は5兆3749億円の赤字となり、年度ベースでは昨年度の1兆161円からの赤字転落で赤字幅は過去4番目の規模となった。感染拡大の波が繰り返される中での人手不足とモノ不足によるインフレ進行で輸入インフレが進んだこと、特に原油等の資源エネルギー価格高騰が響いた。内訳では輸入が前年度比33.3%増、輸出は23.6%増でいずれも3年ぶりのプラスで貿易規模は過去最大だった。また2022年3月の単月では4124億円の貿易赤字で8か月連続での貿易赤字となった。
日銀による金融緩和継続による低金利が続く中、輸入インフレが貿易収支と経常収支を悪化させ景気回復も鈍いことが悪い円安を招いている状況にある。
日銀は4月20日午前10時過ぎに長期金利の上昇を抑えるために「指し値オペ」(特定の利回りで国債を無制限に買い入れる)を実施し、新発10年債を0.25%で買い入れた。また「連続指値オペ」を4月21日から26日にかけて実施すると通告した。日銀はYCC(イールドカーブコントロール)政策で長期金利を0.00%前後から0.25%程度に抑える政策をとっているが、今年3月28日に日中二回の指値オペを実施し、3月29日から31日にかけて初めて連続指値オペを実施したが、それに続く実施通告となった。
黒田総裁は4月20日のG20財務相・中銀総裁会議に出席し、22日にはコロンビア大で講演する。またG20に合わせて日米財務相が円安ドル高に対しての意見交換を行うと報じられている。
129円に到達した円安水準に対して黒田日銀総裁がどのような発言を行うのか注目されるところだが、総裁は1月時点では「悪い円安というものは考えていないし考える必要はない」と述べてその後も円安が円高よりもメリットがあるとの姿勢を繰り返し強調し、金融緩和をやめる時期ではないと述べてきた。ただ、4月5日には「今回の為替相場の変動はやや急だ」とし、4月18日には「非常に大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる」とも述べている。
【米10年債利回りの上昇一服】
4月20日の米10年債利回りは前日比0.11%低下の2.83%と下げた。20日朝に一時2.98%を付けて2018年12月以来の最高水準へと続伸していたが、3%を目前にいったん利回り確保の債券買い優勢となったことで利回り低下を招いた印象だ。30年債利回りは19日に2019年3月以来3年ぶりの3.0%に到達したが20日は前日比0.13%低下の2.87%への下げ、2年債利回りは19日に2.61%を付けて4月6日の2.60%を超えて2018年12月以来の高水準に達したが、20日は0.01%低下の2.58%となった。いずれも連騰後の調整的な動きの範囲と思われ、長期債利回り上昇基調は継続的と思われる。
米連銀高官による5月FOMCにおける大幅利上げ支持発言も続いている。サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は20日の講演で「インフレは高すぎる」、「年末までに政策金利を中立水準(2.5%)へ速やかに引き上げるのが適切」と述べている。
【NYダウは高いがナスダックが下げる】
4月20日のNYダウは前日比249.59ドル高と上昇したが、ナスダック総合指数は同166.59ポイント安と下げた。長期債利回り低下はナスダックにとってプラスのところだが、ネットフリックスが会員を大幅に減らしたとの報道から急落したことで動画配信サービス関連等が売られたようだ。
米不動産業者協会(NAR)が発表した3月の中古住宅販売件数(年率換算)は前月比2.7%減の577万戸となり2か月連続でマイナスとなり2020年6月以来の低水準で市場予想の580万戸を下回った。前年同月比でも4.5%減となったが、販売価格中央値は前月比4.5%上昇の37万5300ドルとなり前年同月比は15.0%上昇で2か月連続上昇となった。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては3月31日深夜安値を起点とした上昇基調を継続してきたが、4月13日に126円台序盤へ上昇したところからいったん125円を試すところへ下落して先週末に一段高したために4月19日午前時点では4月14日夕安値を起点とした強気サイクルの上昇局面とし、4月13日夕高値を基準として高値形成期を18日夕から20日夕にかけての間と想定した。
4月20日午前に129円台前半へ一段高したところから20日深夜にかけて2円近い急落となったため、20日午前高値で直近のサイクルトップを付けたと思われる。ボトム形成期は14日夕安値を基準とすれば19日夕から21日夕にかけての間と想定されるのですでに20日深夜安値でボトムを付けた可能性があるため、128.65円を超えないうちはもう一段安余地ありとするが、128.65円超えからは強気サイクル入りとして25日午前から27日午前にかけての間への上昇を想定する。ただしいったん強気サイクル入りした後に20日午前高値以降の安値を更新する場合は新たな弱気サイクル入りとなる点に注意する。
60分足の一目均衡表では4月20日深夜への下落で遅行スパンが悪化したが先行スパンからの転落は回避している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。ただし先行スパンを上抜き返せないか一時的に上抜いた後に転落する場合は下げ足が早まる可能性もあると注意する。
60分足の相対力指数は19日午後から20日午前への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られてから30ポイント台へと下落した。その後は50ポイントまで戻しているので、55ポイント超えからは上昇再開と仮定して70ポイント台を目指すとみるが、50ポイント台を維持できないようだと40ポイント割れから下げ再開へ向かう可能性があると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、127.44円を下値支持線、128.65円を上値抵抗線とする。
(2)128円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上向きとし、128.65円超えからは20日午前高値129.40円試しへ向かうとみる。高値更新からは130円台を目指す流れとみる。
(3)127.44円割れからは126円台前半への下落を想定する。126.30円以下は反騰注意とするが、127.44円を割り込んだ後も127.75円以下での推移が続くようなら22日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4/21(木)
休場、ブラジル
14:30 (日) 三村日商会頭、会見
18:00 (欧) 3月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (2月 7.5%、予想 7.5%)
18:00 (欧) 3月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (2月 3.0%、予想 3.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.5万件、予想 18.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 147.5万人、予想 145.5万人)
21:30 (米) 4月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (3月 27.4、予想 21.0)
23:00 (米) 3月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (2月 0.3%、予想 0.3%)
23:00 (欧) 4月 消費者信頼感速報値 (3月 -18.7、予想 -20.0)
25:30 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
26:00 (米) パウエル米連銀議長、IMFパネル討論会
26:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、IMFパネル討論会
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動5年債入札
4/22(金)
08:01 (英) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -31、予想 -33)
08:30 (日) 3月 全国消費者物価指数 前年同月比 (2月 0.9%、予想 1.2%)
08:30 (日) 3月 全国消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (2月 0.6%、予想 0.8%)
08:30 (日) 3月 全国消費者物価指数・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (2月 -1.0%、予想 -0.8%)
15:00 (英) 3月 小売売上高 前月比 (2月 -0.3%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 7.0%、予想 2.8%)
15:00 (英) 3月 小売売上高・徐自動車 前月比 (2月 -0.7%、予想 -0.4%)
15:00 (英) 3月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (2月 4.6%、予想 0.8%)
16:30 (独) 4月 製造業PMI速報値 (3月 56.9、予想 54.5)
16:30 (独) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 56.1、予想 55.5)
17:00 (欧) 2月 経常収支・季調済 (1月 226億ユーロ)
17:00 (欧) 4月 製造業PMI速報値 (3月 56.5、予想 54.8)
17:00 (欧) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 55.6、予想 55.0)
17:30 (英) 4月 製造業PMI速報値 (3月 55.2、予想 54.2)
17:30 (英) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 62.6、予想 60.0)
22:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
22:45 (米) 4月 製造業PMI速報値 (3月 58.8、予想 58.0)
22:45 (米) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 58.0、予想 58.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2022.04.21
ドル円128円台半ばで堅調推移、G7では為替主要議題とならず (4/21午前)
21日午前の東京市場でドル円は128円台前半を底堅く推移。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2022.04.21
ドル円、一時129.40まで急伸するもポジション調整主導で急反落(4/21朝)
20日(水)のドル円相場は急伸後に急反落。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。