トルコリラ円見通し ドル高リラ安に圧迫感あるものの、円安に支えられて戻り高値を試す展開(22/4/11)

ドル円の歴史的な大上昇を背景に、トルコリラ円は円安に支えられながらドル円と同調してジリ高の推移を続けている。

トルコリラ円見通し ドル高リラ安に圧迫感あるものの、円安に支えられて戻り高値を試す展開(22/4/11)

ドル高リラ安に圧迫感あるものの、円安に支えられて戻り高値を試す展開

〇トルコリラ円4/9早朝終値8.42、週間では0.08の円安リラ高、ドル円と同調しジリ高推移
〇対ドルでの下落基調続く、4/8は14.76から14.60の取引レンジ
〇アナリスト予想中心、1年後17.27でドル高リラ安進む、エネルギー価格高騰で高インフレ悪化の恐れも
〇今週14日トルコ中銀政策決定会合予定、1〜3月期は追加利下げ見送り、今回も現状維持予想
〇8.47以上での推移に入れば、8.50試しへ向かう可能性ありとみる
〇8.38を割り込む場合は8.35前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の4月8日は8.45円から8.39円の取引レンジ、9日早朝の終値は8.42円で前日終値の8.40円からは0.02円の円安リラ高だった。
ドル/トルコリラは3月30日以降をリラ安基調で推移しているが、ドル円の歴史的な大上昇を背景にトルコリラ円は円安に支えられながらドル円と同調してジリ高の推移を続けている。週間では4月1日終値の8.34円から0.08円の円安リラ高となった。4月11日朝時点は8.43〜8.44円近辺で上昇基調を継続している。

【ドル/トルコリラ動向 対ドルでのリラ安基調続く】

ドル/トルコリラの4月8日は14.76リラから14.60リラの取引レンジ、9日早朝の終値は14.74リラで前日終値の14.72リラからは0.02リラのドル高リラ安だった。
ウクライナ紛争の泥沼化とロシア制裁の拡大による先行き不透明感及び米連銀による金融引き締め姿勢の強化による米長期債利回り上昇がドル高感を強めており、メジャー通貨の加重平均であるドル指数は4月8日に100.19ポイントを付けて2020年5月以来の高値水準に達している。
ウクライナ紛争をめぐる地政学的リスクの距離感やロシア制裁による資源エネルギーや穀物等の代替需要期待で豪ドルやNZドル等が上昇基調で推移してきたものの、ロシア制裁の返り血を浴びることになるユーロやポンド、金融緩和政策から脱却できない円が売られる展開となっているが、トルコリラも地政学的リスクの近さやインフレ進行感から対ドルで下落基調にある。

【3か月後、6か月後、1年後のリラ安予想】

通信社のロイターが4月8日にアナリスト凡そ50名による新興国通貨予想をまとめた。ドル/トルコリラは週末時点では1ドル14.75リラだったが、アナリスト予想の中心値は1か月後に14.96リラ、3か月後に15.50リラ、6か月後に16.50リラ、1年後に17.27リラとされ、ドル高リラ安が進む見通しとされた。最も極端なドル高リラ安予想では1年後に1ドル22.00リラ、逆にリラ高が巻き返すとの予想では1年後に13.00リラまでドル安リラ高へ進むとされたが、それでも12月23日の10.06リラには届かず、今年1月中盤から2月前半にかけて何度か試した13リラをもう一度試す程度という予想だ。

感染拡大の波が繰り返される中での景気回復がサプライチェーンの混乱による人手不足とモノ不足によるインフレ進行を招き、そこにウクライナ紛争によるウクライナの戦場化と欧米等のロシア制裁によりロシア産原油、石炭、天然ガス、非鉄金属、パラジウム等白金族、小麦等の穀物と家畜用飼料や肥料、植物油等の供給減少を招いている。ロシア産の肥料供給が停止すると来年春の作付けも影響を受けることになりかねない。欧州のロシア産エネルギーからの依存脱却はロシア産以外の争奪戦を招きインフレを深刻化させる。
トルコにとってはエネルギー価格高騰がウクライナ紛争前に高インフレに陥っていた状況をさらに悪化させかねない状況が続いている。

【今週はトルコ中銀金融政策決定会合あり】

インフレ抑制のために主要国が金融引き締めを開始しているが、量的金融引き締めによる過剰流動性の縮小は投資マネーが新興国市場から還流することとなり、新興国景気を腰折れさせる可能性も警戒される。そうした流れを回避するために新興国は先進国に先駆けて利上げに入っているが、世界の趨勢と逆行するトルコの利下げ政策は投資マネーにとっては近隣のウクライナ情勢による地政学的リスクの増大と共にネガティブなものとなりやすい。
4月14日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。高インフレの中で昨年9月から12月まで4会合連続の利下げを強行して政策金利である週間レポレートは19%から14%へと引き下げられてきた。しかし「利下げがインフレを抑制する」とのエルドアン政権の主張通りには進まずにインフレは一段と加速している。1-3月期は追加利下げを見送って様子見とする姿勢であった中銀とエルドアン政権だが、4月14日の会合でも利下げはできずに現状維持と予想されるところだ。

【中勢と短期のポイント】

【中勢と短期のポイント】

トルコリラ円の中勢はドル高リラ安基調にやや圧迫感を持ちながらもドル円の上昇基調に同調してゆく展開で推移し、4月14日のトルコ中銀金融政策決定会合を前後した金融政策姿勢を確認してゆく流れと思われる。
概ね3か月から4か月周期のサイクルで見れば、現状は3月11日安値を直近のボトムとした上昇期にあるが、既に前回サイクルトップの12月23日高値から3か月半を経過しているのでそろそろ戻り一巡による下落再開への注意が必要なところに差し掛かっていると思われる。
日足における26日移動平均が中勢レベルの下値支持線となりやすいが、同線は現在のところ8.17円近辺でほぼ横ばいの推移となっている。

(1)短期的には3月30日高値8.45円前後に抵抗感があるものの、トルコ中銀金融政策決定会合を無難に通過して8.47円以上での推移に入れば心理的な節目である8.50円試しへ向かう可能性があり、ウクライナ紛争での停戦協議進展等あれば対ドルでのリラ高反応からの押し上げで8.50円から8.55円にかけてのゾーンを試す可能性も考えられる。
(2)先週の下値支持線となっていた8.38円を割り込む場合は3月末からの上昇に対する調整安に入る可能性ありとみて8.35円前後への下落を想定する。ドル円の上昇基調やドル/トルコリラの動きに大きな変化が見られなければ8.35円前後は押し目買いされやすい水準とみるが、対ドルでのリラ安やドル円の急反落などが発生する場合は調整安が厳しくなり8.30円割れを試す可能性が考えられる。またその際は中勢レベルの弱気転換への注意が必要になると思われる。

【当面の主な予定】

4月11日
 16:00 2月 失業率 (1月 11.4%)
 16:00 2月 経常収支 (1月 -71.12億ドル、予想 -55.0億ドル)
4月12日
 16:00 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -2.4%)
 16:00 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 7.6%、予想 9.2%)
 16:00 2月 小売売上高 前月比 (1月 -1.5%)
 16:00 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 7.9%)
4月14日
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.0%)
 20:30 週次 外貨準備高 4/8時点 グロス (4/1時点 668.6億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 4/8時点 ネット (4/1時点 164.0億ドル)
4月15日
 17:00 3月 財政収支 (2月 697.4億リラ)

注:ポイント要約は編集部

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