ドル円見通し 週足の上ヒゲをつぶす、日米金融政策乖離による円安容認水準試しへ(週報4月第2週)

8日夜には124.67円へ高値を切り上げた。NY時間は125円に迫れず、124円台前半へ若干失速して週を終えた。

ドル円見通し 週足の上ヒゲをつぶす、日米金融政策乖離による円安容認水準試しへ(週報4月第2週)

ドル円見通し 週足の上ヒゲをつぶす、日米金融政策乖離による円安容認水準試しへ

〇先週のドル円、4/7午後に123.46まで下げた後4/8夜に124.67へ高値切り上げ、終盤は124円前半に失速
〇ブレイナードFRB理事のタカ派発言以降米長期金利上昇加速、米10年債利回りは一時2.727%まで上昇
〇主要国が利上げを開始又は模索する中で日銀は緩和姿勢維持、円安メリットも主張しドル円の弱さ目立つ
〇2015/6/5の125.84を超えると、上値目途となる過去の高値は2002/1/31高値135.15まで見当たらず
〇3/28高値125.10を超えないか、わずかに超えても123円以下に反落の場合、122円前後の調整安へ
〇ただし、3/31安値121.26を割り込まなければ一段高へ進む可能性残す
〇125.10を超えて続伸の場合15年高値125.84が次の抵抗、突破の場合128.94-130円へ上値目途切り上げ
〇121.26割れの場合ダブルトップ完成、更に安値を更新する場合は120円から118円のゾーン試すか

【概況】

ドル円は4月6日午前高値で124.05円を付けた後はやや伸び悩み7日午前には123.46円まで下げる場面も見られたが7日夜には124円に再び到達、8日夜には124.67円へ高値を切り上げた。NY時間は125円に迫れず、124円台前半へ若干失速して週を終えた。
3月28日夕高値で125.10円に到達した後は米長期債利回りの上昇一服と2015年に黒田ラインとされた125円に到達したことでいったん調整安に入ったものの、米長期債利回りが一段高へと上昇し、日銀が金融緩和政策の継続を強調する中で徐々に3月28日高値へ迫ってきている。

【米10年債利回りは2019年3月以来の水準へ一段高】

4月5日のブレイナード米連銀理事発言をきっかけとして米10年債利回りの上昇が勢い付いており、4月8日は前日比0.05%上昇(←訂正×0.5%)の2.71%となったが、一時は2.727%を付けて2019年3月以来の高水準に達している。4月1日と4日には2年債利回りを下回る逆イールドが発生したが再逆転しており、米連銀の利上げが中長期的に進んでいくとの認識が強まっていると思われる。
米30年債利回りも8日は前日比0.04%上昇の2.72%を付けて2019年5月以来の高水準とし、2年債利回りも前日比0.05%上昇の2.52%となり一時は2.60%を付けて2019年1月以来の高水準となった。

主要国もNZやカナダ及び英国が利上げで先行し、豪とEUも利上げ時期を模索する段階に入っているが、日銀は現時点での金融引き締めはマイナス効果、円安のほうが円高よりもプラス、YCC(イールドカーブコントロール)を駆使して長期金利を抑えるとの主張を繰り返している。一方で米連銀は3月FOMCの0.25%利上げに続いて5月FOMCでは0.50%の利上げが予想されており、量的引き締めとして資産売却も早いペースで開始する見込みとなっている。このため、日米金利差、中銀スタンスの差、輸入インフレによる経常収支悪化からの悪い円安感の増長も含め、ドル円の弱さが目立つ状況にあるといえる。

【週足の上ヒゲをつぶす、新たな「黒田ライン」を試す】

ドル円の週足においては3月28日高値125.10円からの反落により3月最終週は高値から終値122.49円まで2.61円の上ヒゲ幅だった。長大上ヒゲであり、連騰していた状況での長い上ヒゲとして「塔婆」型の様相もあった。例えばパンデミック発生時の2020年3月8日安値101.23円へ急落した週は終値で107.96円まで急伸したが、週の始値からの下ヒゲは2.97円であった。また2019年1月3日の年初における薄商いの中でのフラッシュ・クラッシュ型急落が発生した時の週足下ヒゲは3.63円であった。このため、今回もそれらと同様の基調転換を呼ぶ上ヒゲとなる可能性もあったわけだが、3月31日安値からの反騰を継続して週末の4月8日へと高値を切り上げたことで、前週の上ヒゲ部分をほぼ解消されている。

長いひげが示していた上値抵抗感を解消する動きであり、市場心理は高値更新へ挑戦したい状況へと強気化したと思われる。既に2015年8月以来の高値水準に達しており、2015年6月5日高値125.84円を超える場合は上値目途となる過去の高値は2002年1月31日高値135.15円まで見当たらなくなる。昨年1月6日底を起点とした上昇が概ね4年周期や8年周期(7年から10年間隔)のサイクルにおける上昇期であり、2015年6月天井を起点とした月足レベルの巨大三角持ち合いの抵抗線を突破してきたものであること、日銀のかたくなな金融緩和継続姿勢を踏まえれば、125円とされてきたいわゆる従来の黒田ライン=円安容認の上限を超えて新たな黒田ラインを試してゆく展開へ進んでも不思議ないと思われる。

【歴史的な円安規模は2013年5月への上昇時並み】

【歴史的な円安規模は2013年5月への上昇時並み】

2021年1月6日底102.57円から2022年3月28日高値125.10円までの上昇幅は22.53円である。この上昇レベルと匹敵する勢いだったのが2011年10月31日安値75.57円から2013年5月22日高値103.73円へ28.16円の大上昇となったところに近い。
2011年11月の安倍政権発足から円安が本格化した時期であり、アベノミクスと呼応した日銀の金融緩和拡大が円安の背景であった。日銀の異次元金融緩和は黒田バズーカといわれ、2013年4月の第一弾による円安が一服したのが2013年5月であった。その後の2014年10月に第二弾(量的緩和大幅拡大)、2016年1月には第三弾(マイナス金利導入)と続いた。

それらと比較すれば現状においては新たな緩和規模拡大等ではなく防戦的なYCCによる長期金利抑制等ではあるが、主要国が金融引き締めへ走る中における金融緩和継続による逆走という意味では黒田バズーカの第四弾というインパクトがあるのではないかと思われる。
2011年10月底から2015年6月天井への円安時代においては、2013年5月22日高値103.73円から同年6月13日安値93.78円まで10円近い調整安が入っているものの、その後の上昇により2013年5月まで上昇規模の二倍まで円安が拡大している。現状も高値から5円、10円規模の調整安を入れ混ぜながらもさらにドル高円安が進むような展開もないとは言えなくなってきているのではないかと懸念する。

【中勢のポイント、ダブルトップ破りによる上値目途】

3月28日高値125.10円から3月31日安値121.26円まで3.84円の円高ドル安となったところから切り返して125円手前へ接近した処にある。
(1)3月28日高値125.10円を超えないか、わずかに超えても123円以下へと反落する場合はダブルトップ形成により調整安に入る可能性がある。その場合の下値目途は122円台序盤から121円台後半までとし、3月31日安値を割り込まなければダブルトップ形成には至らずに高値圏での持ち合い形成として一段高へ進む可能性が残るとみる。
日銀や財務相等による円安けん制が見られる場合は市場心理も125円前後では慎重になり利益確定売りも出やすいと思われる。

(2)3月28日高値を超えてさらに続伸に入る場合、2015年6月5日高値125.84円が次の上値抵抗となるが、日銀等による円安けん制もゆるく抵抗を突破し、市場が円安容認水準を試すように上昇する場合、3月31日安値までの下げ幅3.84円の倍返しとなる128.94円から130円へ上値目途が切り上がると思われる。
(3)3月31日安値を割り込む場合、ダブルトップ完成となるため、いったんは戻しに入ると思われるがその後の下落で安値をさらに更新すれば、ダブルトップ後の下落期として120円から118円台にかけてのゾーンを試す流れへ進みやすくなるとみる。そのためには日銀の強烈な円安けん制発言等で急ブレーキがかかる状況変化が必要と思われる。


注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

4/11(月)
休場 ベトナム(フン王命日)
10:00 (日) 黒田東彦日銀総裁、日銀支店長会議で挨拶
10:30 (中) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 0.9%、予想 1.3%)
10:30 (中) 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 8.8%、予想 8.1%)
15:00 (英) 2月 月次GDP 前月比 (1月 0.8%、予想 0.2%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 0.7%、予想 0.3%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 2.3%、予想 2.1%)
15:00 (英) 2月 貿易収支・物品 (1月 -264.99億ポンド、予想 -167.00億ポンド)
15:00 (英) 2月 貿易収支・全体 (1月 -161.59億ポンド、予想 -71.50億ポンド)
22:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、イベント開会挨拶
22:30 (米) ボウマンFRB理事、ウォラーFRB理事、講演
25:40 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債入札

4/12(火)
OPEC月報
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前月比 (2月 0.8%、予想 0.9%)
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前年同月比 (2月 9.3%、予想 9.2%)
10:30 (豪) 3月 NAB企業景況感指数 (2月 9)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 2.5%、予想 2.5%)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 7.3%、予想 7.3%)
15:00 (英) 3月 失業保険申請件数 (2月 -4.81万件)
15:00 (英) 2月 失業率・ILO方式 (1月 3.9%、予想 3.8%)
15:00 (独) 3月 卸売物価指数 前月比 (2月 1.7%)

18:00 (独) 4月 ZEW景況感 (3月 -39.3、予想 -48.5)
18:00 (欧) 4月 ZEW景況感 (3月 -38.7)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 0.8%、予想 1.2%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 7.9%、予想 8.4%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前月比 (2月 0.5%、予想 0.5%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前年同月比 (2月 6.4%、予想 6.6%)
25:10 (米) ブレイナードFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 3月 月次財政収支 (2月 -2166億ドル)

4/13(水)
休場 タイ(ソンクラーン)
未 定 (中) 3月 貿易収支・米ドル建て (2月 305.8億ドル、予想 205.0億ドル)
未 定 (中) 3月 貿易収支・人民元建て (2月 1944.0億元)
07:45 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、、講演
08:50 (日) 3月 マネーストックM2 前年同月比 (2月 3.6%、予想 3.6%)
08:50 (日) 2月 機械受注 前月比 (1月 -2.0%、予想 -1.5%)
08:50 (日) 2月 機械受注 前年同月比 (1月 5.1%、予想 14.3%)
09:30 (豪) 4月 ウエストパック消費者信頼感指数 (3月 96.6)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 1.00%、予想 1.25%)

15:00 (英) 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 0.8%、予想 0.8%)
15:00 (英) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 6.2%、予想 6.7%)
15:00 (英) 3月 消費者物価コア指数 前年同月比 (2月 5.2%、予想 5.3%)
15:15 (日) 黒田東彦日銀総裁、第97回信託大会で挨拶
21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 0.8%、予想 1.1%)
21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 10.0%、予想 10.6%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.5%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前年同月比 (2月 8.4%、予想 8.4%)
23:00 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 0.50%、予想 1.00%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省30年債入札

4/14(木)
休場 ノルウェー、フィリピン、メキシコ、コロンビア(聖木曜日)
休場 タイ(ソンクラーン)
休場 インド(ジャイナ教マハビラ生誕日)
10:30 (豪) 3月 新規雇用者数 (2月 7.74万人、予想 3.00万人)
10:30 (豪) 3月 失業率 (2月 4.0%、予想 3.9%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 14.00%、予想 14.00%)

20:45 (欧) 欧州中銀 政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、記者会見
21:30 (米) 3月 小売売上高 前月比 (2月 0.3%、予想 0.6%)
21:30 (米) 3月 小売売上高・除自動車 前月比 (2月 0.2%、予想 1.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 16.6万件、予想 17.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 152.3万人、予想 150.0万人)
21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 1.4%、予想 2.3%)
21:30 (米) 3月 輸出物価指数 前月比 (2月 3.0%、予想 2.2%)
23:00 (米) 2月 企業在庫 前月比 (1月 1.1%、予想 1.3%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (3月 59.4、予想 58.9)
28:50 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

4/15(金)
休場 米、英、独、仏、伊、カナダ、スイス、ノルウェー等(聖金曜日)
休場 香港、シンガポール、マレーシア、インド、豪、NZ、メキシコ、ブラジル、南ア等(聖金曜日)
※米国は債券、株式、商品休場、為替は通常取引、※マレーシアはゴム休場、株式、金融債券通常取引
休場 タイ(ソンクラーン)
07:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
21:30 (米) 4月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (3月 -11.8、予想 1.0)
22:15 (米) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.5%、予想 0.4%)
22:15 (米) 3月 設備稼働率 (2月 77.6%、予想 77.8%)

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