来週の為替相場見通し:『日米金融政策格差が市場の焦点。ドル高基調継続か』(4/9朝)

ドル円は今週再び騰勢を取り戻し、週末には一時124.68まで反発しました。

来週の為替相場見通し:『日米金融政策格差が市場の焦点。ドル高基調継続か』(4/9朝)

『日米金融政策格差が市場の焦点。ドル高基調継続か』

〇今週のドル円、週明け早々に122.26に下落後、週末にかけ約2週間ぶり高値124.68まで急伸
〇ウクライナをめぐる地政学リスクの長期化懸念、FRBの一段のタカ派傾斜観測と長期金利上昇等が背景
〇ユーロドル、地政学リスク長期化と米欧の金融政策の方向性の違いに週末にかけ1.0836まで下落
〇ドル円、騰勢回復、主要テクニカルポイント上抜け多くの買いシグナルも点灯、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズもドル高円安トレンドの継続材料揃う
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想、来週は米CPI、PPI、当局者発言に注意
〇ユーロドルは4/10の仏大統領選、4月ZEW景況感調査、4/14のECB理事会要注視
〇来週の予想レンジ(USDJPY):123.00ー126.00、(EURUSD):1.0700−1.1000

今週のレビュー(4/4−4/8)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初122.96で寄り付いた後、@中国における新型コロナウイルスの感染再拡大(ロックダウンの長期化懸念)や、A原油先物価格の軟調推移、B日経平均株価の冴えない動きが重石となり、週明け早々に週間安値122.26まで下落しました。その後も、C鈴木財務相による「為替の安定は重要。急速な変化は一番注意しなければいけない」との円安牽制発言や、D黒田日銀総裁による「最近はやや急ではないかと思っている」との円安牽制発言を背景に上値の重い展開が続きましたが、Eロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシアがウクライナ占領地で市民を虐殺した疑いが浮上→欧米諸国による対ロ制裁強化の思惑)が有事のドル買いを誘発すると、FブレイナードFRB理事による「バランスシート圧縮を5月に急ピッチで始める」「前回と比べてもかなり急速な圧縮を想定している」とのタカ派的な発言や、

Gサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「バランスシート圧縮は早ければ5月に着手」とのタカ派的な発言、Hカンザスシティ連銀ジョージ総裁による「50bpの利上げは他のことと合わせて検討しなければならない選択肢の一つになるだろう」とのタカ派的な発言、I米FOMC議事要旨における「多くの参加者が年内1回以上の50bpの利上げが正当化される公算と指摘」「1カ月あたりの縮小上限は950億ドルが適切となる公算」とのタカ派的な見解発表、J米新規失業保険申請件数(結果16.6万件、予想20.0万件)の良好な結果(1968年11月以来の低水準を記録)、K米長期金利の急上昇(米10年債利回りは2019年3月以来となる2.72%へ急上昇)が支援材料となり、週末にかけて、3/28以来、約2週間ぶり高値となる124.68まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間4/9午前5時00分現在)では、124.30前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1039で寄り付いた後、早々に週間高値1.1056まで上昇しました。しかし、一目均衡表基準線や転換線をバックに伸び悩むと、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシアがウクライナ占領地で市民を虐殺した疑いが浮上→欧米諸国による対露制裁強化の思惑)や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(EUによるロシア産石油の輸入禁止検討報道→ロシアと経済的な結びつきの強い欧州経済への下押し圧力)、B欧米金融政策の方向性の違い(ロシア・ウクライナ問題長期化でECBは年内利上げに踏み切れないとの見方が再燃)、Cユーロ圏4月投資家信頼感指数(結果▲18.0、予想▲9.4)の冴えない結果、D米金利急上昇に伴うドル高圧力(ブレイナードFRB理事によるタカ派的な発言→米長期金利急上昇→欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)が重石となり、週末にかけて、3/8以来、約1ヵ月ぶり安値となる1.0836まで急落しました。

引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間4/9午前5時00分現在)では、1.0874前後で推移しております。尚、今週発表されたECB議事要旨(3/10開催分)では、「多くのメンバが現在のインフレ率は非常に高いと認識している」「金融政策正常化に向けたさらなる措置が即座に必要となる」とのタカ派的な見解が示されましたが、ユーロ高での反応は一時的なものに留まりました。

来週の見通し(4/11−4/15)

<ドル円相場>
ドル円は3/28に記録した約6年7ヵ月ぶり高値125.11をトップに反落に転じると、月末3/31に一時121.28まで急落しましたが、今週は再び騰勢を取り戻し、週末には一時124.68まで反発しました。この間、ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「三役好転」や「強気のパーフェクトオーダー」が日足・週足・月足の全てで成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(有事のドル買い。特に対ユーロでのドル買いが対円でのドル買いに波及する展開)や、A米FRBによるタカ派傾斜観測(ハト派の急先鋒と見られていたブレイナードFRB理事のタカ派転換サプライズ→米FOMCにおける連続・大幅利上げ観測やバランスシートの早期圧縮期待が再燃)、B日銀による金融緩和の長期化観測(日銀による指し値オペ実施を通じた長期金利の抑制方針)、C上記ABを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大→ドル買い・円売り)、

D本邦貿易赤字拡大に伴う円売り圧力など、ドル高・円安トレンドの継続を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米3月消費者物価指数や米3月生産者物価指数に加えて、米当局者発言に注目が集まります。米CPIや米PPIが市場予想を上回る場合や、米当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ場合には、米金利上昇→米ドル高の経路で、ドル円が3/28に記録した約6年7ヵ月ぶり高値125.11を一気に上抜ける可能性もあるため、来週はアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(本邦政府・当局者による円安牽制の影響は限定的か。但し、来週は半期に一度の為替報告書の提出期限が予定されているため、米国側から円安に対する指摘が入った場合には一時的にドル円に下押し圧力が加わる恐れあり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):123.00ー126.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は3/31に記録した高値1.1185をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約1ヵ月ぶり安値となる1.0849まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線などの主要サポートポイントを下抜けした他、強い売りシグナルを示唆するパーフェクトオーダーやバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となっております(目先は一目均衡表三役逆転が成立するか否かに注目)。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(ユーロ圏の消費者信頼感指数は急低下)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買い基調の継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は4/10に予定されているフランス大統領選に加え、4/12のドイツ4月ZEW景況感調査、4/14のECB理事会に注目が集まります。フランス大統領選にてマクロン氏・ルペン氏の接戦が報じられる場合には、政局不透明感からユーロ売りに拍車がかかる恐れがあります。また、ドイツ4月ZEW景況感調査が下振れる場合にも、欧州経済の先行き不透明感→ECBによる金融引き締め観測後退の経路でユーロドルには下押し圧力が加わりそうです。更にECB理事会では足元のロシア・ウクライナ情勢の悪化を踏まえて、声明文やラガルド総裁記者会見で利上げやQE終了についての言及を避けるリスク(タカ派的なスタンスを封印し、ハト派的なスタンスを滲ませるシナリオ)も想定されます。この場合は3/7に記録した約1年9ヵ月ぶり安値1.0805を下抜けるシナリオが現実味を帯びることから、来週はダウンサイドリスクに注意を要する一週間となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1000

注:ポイント要約は編集部

『日米金融政策格差が市場の焦点。ドル高基調継続か』

ドル円日足

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