ドル円 ドル上値追いは一服、頭の重い展開か(週報5月第1週)

先週のドル/円相場は大荒れ。週明けに1990年以来となる160円台を示現したものの、円買い介入もあり最終的には大きく値を下げた。

ドル円 ドル上値追いは一服、頭の重い展開か(週報5月第1週)

ドル上値追いは一服、頭の重い展開か

〇先週のドル円相場は大荒れ、週間通した値動きは8.36。週末NY153円前後と冴えないレベルで越週
〇本邦当局8.5兆円規模の円買い介入。円安止める強い意識うかがえる規模とタイミング
〇米4月雇用統計、前月好数字の反動もあり予想比悪化。再び早期の米利下げ観測が浮上しドル売り要因に
〇年内一度にとどまると見込まれていた米利下げ、二度実施されるとの見方復活
〇ドル高基調は変わらずも、158円前後超えることは短期的には難しいか
〇ドル高円安方向は、154円台で緩やかな右肩上がりが予想される21日線が最初の抵抗
〇ドル安円高方向、先週安値151.86はかなり強いサポート、割り込むとさらに1円程度の下げも
〇今週のドル円予想レンジ:150.50-156.00

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場は大荒れ。週明けに1990年以来となる160円台を示現したものの、円買い介入もあり最終的には大きく値を下げた。

前週末に実施された衆議院3補欠選挙は自民党が全敗した反面、立憲民主党は全勝。岸田政権への不安も取り沙汰されるなか、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、ガザ恒久停戦案を議論したとされ思惑を呼んでいたようだ。
そうした状況下、週明けのドル/円は158円レベルで寄り付いたのち、東京休場の間隙を突く格好で一気に160円台へと上伸。また、ポンド/円も2008年以来となる200円台を示現するなど、クロス円も全面高の様相だった。しかし、当局から実弾介入と思しき動きが観測されると一気に155円台。その後も、週間を通し激しい上下動を繰り返すなか、週末NY153円前後とドルは冴えないレベルで越週している。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「円買い介入」と「米金融政策」について。
前者は、4月29日に当局の「覆面円買い介入」と思しき動きが観測されたが、そののち神田財務官は「為替介入については有無も含めてコメントを差し控える」など明言を避けていた。しかし、日銀が発表した当座預金残高見通しにより、それがほぼ事実であったことが明らかとなり、金額についても「5.5兆円規模」と推測されている。また、日本時間の5月2日早朝にも同様の動きが観測されたが、こちらも先と同様の推計では「約3兆円規模」の実弾介入が実施された可能性が高いようだ。つまり、ともに事実とすれば、2日併せて当局は8.5兆円規模の円買い介入が行われたことになる。規模といい、実施のタイミングといい、予想以上に円安を止めようという強い意識がうかがえたなどとする参加者の声も聞かれていた。

それに対して後者は4月の消費者信頼感指数や同ISM製造業景況指数など、週明けから発表された米経済指標は総じて悪化。一部で物議を醸すがそののち結果が発表された米FOMCは予想よりも強めの内容だった。政策金利は「現行目標水準での据え置き」で予想通りながら、パウエルFRB議長は「次の動きが利上げとなる可能性は低い」としつつ、「利下げ開始には物価上昇ペースが鈍化していることを示すさらなる証拠が必要」などと利下げの先送りとも取れる発言をしていた。しかし、市場で注目を集めていた4月の雇用統計が週末に発表されたが、こちらは前月好数字の反動もあってか予想以上に悪化。再び早期の米利下げ観測が浮上すると、為替市場においてもドル売り要因に。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円相場は大荒れで、週間を通した値動きも実に8.36円に及ぶ。もちろん、当局による円買い介入などがあっての乱高下、大相場だったわけだが、いずれにしても一週間で通常のひと月分を凌駕するほどの激しい変動をたどっていたことは間違いない。先々の見通しはなかなか難しいものの、ドル高基調そのものは変わっていないとの見方が依然として有力か。とは言え上値は重そうで、取り敢えずは155円レベル、抜けても158円前後を超えることは短期的に難しくなったとの指摘も聞かれていた。
先で取り上げたように、1日に米FOMCの結果が発表されたが、予想よりも強気だったとの見方が優勢。しかし、ここ最近発表される米経済指標は逆に冴えないものが少なくなく、とくに週末発表された雇用統計は予想以上の悪化だった。それを受け、「年内一度にとどまると見込まれていた米利下げだが、二度実施されるとの見方が復活しつつある」−−という。日本当局の実弾介入を除いても、ドル/円相場はやや冴えない値動きをたどる可能性も取り沙汰されていた。今週も発表される米経済指標や要人発言にしっかりとした注意を払いたい。

テクニカルに見た場合、ドル/円相場は160円を示現後のドル急落で、遥か下方に位置すると目された移動平均の21日線(154円前半から半ば)を予想以上にアッサリと割り込んできた。ドル高基調そのものの転換を断定するにはいささか早いものの、160円がかなり遠のいた感もあり、また場合によっては先の21日線が抵抗として上値抑制に貢献する展開も否定できない。対するドルの下値メドは、先週安値に近い151.75円レベル。割り込むと150円後半がターゲットに。

そうしたなか今週は、5月のミシガン大消費者信頼感指数などの米経済指標が発表されるほか、先週の米FOMCに続く格好で豪中銀や英中銀などによる政策金利の発表も予定されている。こちらも注意を払いたい。

そんな今週のドル/円予想レンジは、150.50-156.00円。ドル高・円安については、154円台に位置し緩やかな右肩上がりが予想される21日線が最初の抵抗。超えると155円あるいは156円などがターゲットとなる。
対してドル安・円高方向は、先週安値の151.86円はかなり強いサポートと見られ、その攻防にまずは注視。割り込むとさらに1円程度の下げは否定できないが、それでも150円割れは取り敢えず回避されそうだ。

ドル上値追いは一服、頭の重い展開か

ドル円日足



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