トルコリラ円見通し 円安による押し上げでトルコリラ円も3月10日以降の戻り高値更新
〇トルコリラ円、ドル円の急伸が続く中、3/10安値7.77以降の戻り高値を8.42まで切り上げる
〇対ドル、3/28は14.85から14.80の取引レンジ、14.80を挟んだ膠着状態続く
〇エルドアン大統領がプーチン大統領と電話会談、イスタンブールで3/29から対面型停戦協議開催
〇8.30以上での推移中は上昇余地ありとし、8.38超えからは8.40台序盤試しとする
〇8.30割れからは下向きとして、8.20台中盤を試すとみる
【概況】
トルコリラ円の3月28日は8.42円から8.30円の取引レンジ、29日早朝の終値は8.36円で先週末終値の8.22円からは0.14円の円安リラ高となった。
対ドルでのトルコリラの動きは14.80リラを挟んだ持ち合い推移で膠着状態にあるが、ドル円の急伸が続く中でクロス円全般が大幅に押し上げられており、トルコリラ円も3月10日安値7.77円以降の戻り高値を8.42円まで切り上げており、2月21日以来の水準へ戻した。
【ドル/トルコリラ動向 14円台後半での膠着状態から抜け出せず】
ドル/トルコリラの3月28日は14.85リラから14.80リラの取引レンジ、29日早朝の終値は14.80リラで先週末終値の14.83リラからは0.03リラのドル安リラ高だった。
ウクライナ情勢によるリラ売りで3月11日に14.99リラ(ベンダーによっては15リラ)を付けて12月23日安値10.06リラ以降の安値を更新した後はウクライナ情勢を材料とした売り一服となり、新たな安値更新を回避しているものの決め手にかけて14.80リラを挟んだ揉み合いでほぼ横ばいの動きが続いている。
欧米がロシア産原油禁輸検討と報じられたところで第三次石油危機への懸念が最大化したが、その後は戦局の膠着と停戦協議の繰り返し、ルーブル暴落に一服、地政学的な距離感からユーロが軟調な一方でオセアニア通貨が買われる等、ドルの強弱もまちまちとなり、トルコ中銀も利下げ見送りを継続したことでやや落ち着いているといえる。リラ預金の為替差損補填政策を反映して中銀が15リラ台へのリラ安阻止に動いていることを反映しているのかもしれない。
【円安加速、新たな黒田ラインを試す】
日本10年債利回りが日銀のYCC(イールドカーブコントロール)の上限目標に達したことで日銀は連続指値オペの実施を通告、ドル円は3月28日夕刻に125.10円へ上昇、2015年8月12日高値125.27円以来の高水準に達した。
2012年からのアベノミクスと呼ばれた財政支出拡大と日銀による大規模金融緩和によりドル円は80円割れの水準から急激な円安ドル高へと進み2013年に100円台を回復、さらに日銀による黒田バズーカと呼ばれた異次元金融緩和の拡大により2015年6月5日には125.84円まで大上昇した。しかし黒田総裁がこれ以上の円安は考えられないと述べたことから125円を黒田ラインとして円安ドル高の限界点と市場は受け止め、その後にブレクジットショック等により2016年6月には99円台まで急落した経緯がある。
123円台到達時点で指値オペによる長期債利回り上昇抑制を開始したことにより、125円という円安の限界点とされる黒田ラインそのものが引き上げられている=日銀が円安をさらに容認するという見方も浮上しており、当面は125円到達での高値警戒感と一段高期待が交錯する状況に入ると思われる。
トルコリラ円としては対ドルでの動きが鈍い状況の中で円安エンジンによる押し上げ状況に入っており、3月10日安値を起点としたリバウンドを新たなドル高円安の抵抗水準の模索と共に試す流れと思われる。ただし、円安の限界点が見えた段階や、ウクライナ情勢等によるトルコ経済への悪化懸念が強まる状況になる場合、および1-3月期を政策金利の引き下げ見送りとしてきたエルドアン政権及びトルコ中銀が利下げ再開を探り始める場合にはドル高リラ安の再燃によりトルコリラ円も戻り一巡から下落再開へと転じかねない危うさを抱えている。
【トルコで停戦協議、29日から】
エルドアン大統領がプーチン大統領と3月27日に電話会談を行い、イスタンブールでの対面型停戦協議の場を提供することで合意した。トルコ外務省は当初、3月28日から30日までの予定としたが、ロシア大統領府は代表団到着が28日となるため29日から協議を開催するとし、ロシアのペスコフ報道官は「対面で交渉するのは重要」としたものの「これまでの交渉でめぼしい進展はない」と述べている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は27日時点では「ウクライナの中立化と東部ドンバス地方を巡る譲歩を協議する用意がある」と停戦合意への意欲を示しているが、3月28日に米国務省高官は「プーチン大統領が現時点でウクライナでの戦争終結に向けて妥協する用意はない模様だ」と述べている。
外交通商においてロシアと関係が深く戦争の長期化によるトルコ経済への影響も懸念される中で、トルコとしても何とか停戦合意に寄与したいところだ。
S&Pグローバルはウクライナ紛争の影響を踏まえてロシアの2022年GDP見通しを従来の2.7%からマイナス8.5%へ大幅に引き下げたが、影響の大きいところとしてポーランドを1.4%引き下げて3.6%へ、トルコについても1.3%引き下げて2.4%、南アについても0.5%引き下げ1.9%とした。ロシアは従来のプラス2.7%からマイナス8.5%に引き下げている。
トルコは西側によるロシア制裁に参加していない。チャブシオール外相はロシアの新興財閥(オリガルヒ)の入国を歓迎するとしており、西側の対ロシア制裁対象となっているアブラモビッチ氏が所有するスーパーヨット2隻が入国している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月23日午前高値から反落したところから切り返したために24日午前時点では23日午前高値を上抜き返す場合は新たな強気サイクル入りとし、25日早朝へ一段高したために25日午前時点では23日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして28日午前から30日午前にかけての間への上昇を想定した。
3月28日夕刻に8.40円超えへ急伸してから8.30円へ反落し、その後の戻りも続かずに29日午前序盤に失速気味となっているので、3月28日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は28日夜から30日夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあるため、8.38ドルを下回るうちはもう一段安余地ありとするが、8.38円超えからは新たな強気サイクル入りとして31日夕から4月4日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、先行スパンを上回った状況を維持しているが、28日夕高値以降の乱高下により遅行スパンは悪化しやすい位置にある。遅行スパン悪化からは安値試し優先とするが、遅行スパン好転中及び一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とみて高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月28日夕刻の上昇で80ポイントを超えたがその後の反落で50ポイント台へ低下した。70ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント割れからは下向きとして30ポイント台を目指す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.30円を下値支持線、8.38円を上値抵抗線とする。
(2)8.30円以上での推移中は上昇余地ありとし、8.38円超えからは8.40円台序盤(8.40円から8.42円)試しとするが、8.40円以上は反落注意とする。
(3)8.30円割れからは下向きとして8.20円台中盤(8.23円から8.27円)を試すとみる。8.25円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、8.30円以下での推移なら31日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3月31日
16:00 2月 貿易収支 (1月 -102.6億ドル)
16:00 3月 経済信頼感指数 (2月 98.2)
20:30 週次 外貨準備高 グロス 3/25時点 (3/10時点 565.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 3/25時点 (3/10時点 172.0億ドル)
4月01日
16:00 3月 イスタンブール製造業PMI (2月 50.4)
4月04日
16:00 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 4.81%)
16:00 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 54.44%)
16:00 3月 消費者物価コア指数 前月比 (2月 3.8%)
16:00 3月 消費者物価コア指数 前年同月比 (2月 44.%)
16:00 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 7.22%)
16:00 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 105.01%)
注:ポイント要約は編集部
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