ドル円見通し 日銀の連続指値オペ宣言で2015年8月以来の125円台到達
〇ドル円、日銀による連続指値オペ実施宣言を受け、3/28夕刻125.10へ急伸、2015年8月以来の水準
〇いったんは高値警戒感から売られ123.16まで急落するも、3/29入りにかけて124円台を一時回復
〇日銀、3/28指値オペを二度実施、3/29から3/31にかけて連続指値オペ実施宣言
〇上海市3/28からロックダウン、中国景気鈍化による原油需要低下懸念から原油価格反落
〇123円以上での推移中は上昇余地ありとし、125.10超えからは126円を目指す上昇を想定する
〇123円割れからは122円前後への下落を想定する、122円以下は反発注意とする
【概況】
ドル円は3月28日夕刻に日銀による連続指値オペ実施宣言を受けて125.10円へ急伸、いったんは高値警戒感から売られてNY市場の序盤に123.16円まで急落したが先高感は変わらずとして29日入りにかけて124円台を一時回復した。
125円台は2015年8月12日高値125.27円以来の水準。アベノミクスと連動した日銀の異次元金融緩和による円安で2015年6月5日に125.84円の高値を付けた後、これ以上の円安にはならないと黒田日銀総裁が発言したことで125円=黒田ラインとされてその後は円高へ向かったが、123円台到達により黒田ラインが強く意識された状況の中での連続指値オペ実施宣言だったために、市場としては高値警戒感と共に黒田ラインの引き上げとなる可能性もあるところと受け止められているようだ。
【日銀による連続指値オペ実施宣言】
日銀は3月28日に国内長期金利上昇を抑制するために特定の利回りで国債を無制限に買い入れる「指値オペ」を二度実施した。さらに夕刻には3月29日から31日にかけての間、「連続指値オペ」により新発10年債を0.25%で購入すると金融機関に通告した。連続指値オペは日銀としては初めての実施となる。
日銀は2021年3月の金融政策決定会合で新発10年債利回りの誘導目標を0.00%程度とし、上下0.25%の変動を許容するYCC(イールドカーブコントロール)政策を示した。3月28日の債券市場で許容範囲の上限に迫ったことで二度の指値オペを実施したが、その後も10年債利回りが0.25%で推移したことで連続指値オペ実施宣言に至った。
ドル円は3月に入ってからの大幅上昇が続いており、3月28日午前には123円を突破していたが、日銀の連続指値オペ実施宣言を受けて124円を超えて125.10円まで急伸した。
125円到達により、日銀による円安の許容範囲はまだ上の水準との見方も出ているが、感染の波が繰り返される中での景気回復によるサプライチェーン混乱と需給ギャップによりインフレが進行しており、主要国がインフレ抑制のための金融引き締めへとスタンスを変更し始めている流れに反して日銀は金融緩和継続姿勢を強調してきた。ウクライナ情勢も重なったことでドル円としても輸入インフレと経常収支悪化による「悪い円安」が進行している印象を強めてきた。しかし黒田日銀総裁は3月25日の衆院財務金融委員会において「現時点で円の信頼が失われたということではない」、「円安が全体として経済と物価をともに押し上げ日本経済にプラスに作用しているという基本的な構図は変わりない」として円安容認姿勢を示している。市場としては125円を超えてさらに130円を目指すような円安が容認されるのかどうかを探る展開となりそうだ。
【原油反落、米長期債利回りは長短逆転も】
3月28日のNY原油期近は前日比7.94ドル安(7%安)の105.96ドルへ下落、ロンドンの北海ブレント原油も同8.17ドル安(6.8%安)の112.48ドルへと下落した。中国での感染急増により人口2600万人の上海市の東半分が3月28日からロックダウンに入ったことで中国景気鈍化による原油需要低下懸念が連想されたことで売られたようだ。ウクライナ情勢及びロシア制裁による世界原油需給逼迫懸念は継続しているが、3月29日からトルコのイスタンブールでロシア・ウクライナ停戦協議が開催されることを見守りたいという側面もあったようだ。
一方でNYダウは強弱材料が交錯しつつも前日比94.65ドル高と上昇、ナスダック総合指数も同185.60ポイント高と上昇した。上海株安や原油安がマイナス要因だったが、停戦協議への期待感が支えた。
原油急落と株高により米10年債利回りは一時2.55%まで急伸したところから低下し、前日比0.02%低下の2.46%となった。30年債利回りは0.05%低下の2.54%となったが、米連銀による利上げペース加速感から2年債利回りは0.05%上昇の2.33%で、一時は2.40%を付けて2019年4月以来の高水準に達した。
長短の利回り逆転も見られた。5年債と30年債の利回りは一時マイナス7べーシスポイントとなり2006年以降で初めて一時的に逆転したが、2年債と10年債の利回り差も終値ベースで0.13%に狭まった。2020年3月以降で最小差となっており今後の逆転が予想され始めているが、2年債と10年債の利回り逆転はリセッション入りへの先行サインとされる。
ドル円としては米10年債利回りの上昇一服感が上値を抑える要因となるものの2年債利回りの上昇継続が押し上げ要因となっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては3月5日未明安値を起点とした上昇基調が続いているが、3月25日午前高値から25日午後安値へ反落したところから一段高へ切り返したため、現状は3月25日安値を起点として強気サイクル入りしたところと思われる。
3月28日夕刻へ急伸してから反落して再び戻すなど乱高下状態にあり、既に28日夕高値でサイクルトップを付けた可能性があるが、123円台を維持するうちは30日午前から4月1日午前にかけての間への上昇余地ありとし、123円割れからは弱気サイクル入りとして30日午後から4月1日午後にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いた状況を維持しているが遅行スパンは悪化しやすい位置にある。遅行スパンの好転が維持されるうちは上昇余地ありとし、123円以上での推移中は一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、123円割れを伴う悪化からは安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げ足が早まる可能性もあるとみる。
60分足の相対力指数は3月28日夕刻に80ポイント台後半へ急伸してから50ポイント台まで急低下したが、50ポイント割れを回避している。乱調な展開のため、70ポイント超えからは80ポイント台を再び試すとみるが、50ポイント割れからは下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、123円を下値支持線、125.10円を上値抵抗線とする。
(2)123円以上での推移中は上昇余地ありとし、125.10円超えからは126円を目指す上昇を想定する。125.75円以上は反落注意とするが、123円以上での推移なら30日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)123円割れからは122円前後への下落を想定する。122円以下は反発注意とするが、123円以下での推移なら30日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3/29(火)
15:00 (独) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -8.1、予想 -14.0)
15:00 (独) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 4.3%、予想 1.8%)
15:00 (独) 2月 輸入物価指数 前年同月比 (1月 26.9%、予想 26.9%)
22:00 (米) 1月 米連邦住宅金融局(FHFA)住宅価格指数 前月比 (12月 1.2%、予想 1.2%)
22:00 (米) 1月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (12月 18.6%、予想 18.4%)
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、挨拶
23:00 (米) 3月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (2月 110.5、予想 107.0)
23:00 (米) 2月 雇用動態調査(JOLT)
23:45 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省7年債入札
3/30(水)
06:45 (NZ) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 -9.2%)
08:50 (日) 2月 小売業販売額 前年同月比 (1月 1.6%、予想 -0.3%)
09:00 (NZ) 3月 ANZ企業信頼感 (2月 -51.8)
10:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
17:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、発言
17:10 (英) ブロードベント英中銀副総裁、講演
18:00 (欧) 3月 経済信頼感 (2月 114.0、予想 109.2)
18:00 (欧) 3月 消費者信頼感確定値 (速報 -18.7)
21:00 (独) 3月 消費者物価指数速報値 前月比 (2月 0.9%、予想 1.6%)
21:00 (独) 3月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (2月 5.1%、予想 6.2%)
21:15 (米) 3月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (2月 47.5万人、予想 45.0万人)
21:30 (米) 10-12月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 7.0%、予想 7.1%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費確定値 前期比年率 (改定値 3.1%、予想 3.1%)
21:30 (米) 10-12月期 アPCE確定値 前期比年率 (改定値 5.0%、予想 5.0%)
22:15 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、挨拶
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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