トルコリラ円見通し トルコでの停戦協議不調、続落9日目
〇トルコリラ円、3/10は7.94から7.77の取引レンジ、9日間の続落、2/24安値を割り込む
〇対ドル、終値は14.81で8日続落、ウクライナ情勢混迷と米長期債利回り上昇に押される
〇3/10トルコにてロシアとウクライナの外相会談が行われたが不調に終わる
〇トルコの失業率はやや悪化、外貨準備高は減少
〇7.85以下での推移中は一段安警戒とし、7.77割れからは7.70台序盤を試す流れとみる
〇7.84から7.85にかけては戻り売りにつかまりやすく、7.80を割り込むところからは下げ再開とみる
【概況】
トルコリラ円の3月10日は7.94円から7.77円の取引レンジ、11日早朝の終値は7.81円で前日終値の7.89円からは0.08円の円高リラ安となった。
2月16日から2月24日まで7日間の続落となり、25日に下げ一服となったものの2月28日から3月10日までは9日間の続落となっている。
3月10日にはトルコにおいてロシアとウクライナの外相会談が行われたものの停戦への進展は見られずに不調に終わったが、トルコとしては近隣で通商外交関係の深いロシアとウクライナの戦争泥沼化による地政学的リスクが意識されること、3月9日急落したとはいえ原油や穀物等の国際商品の大上昇基調がトルコの高インフレをさらに悪化させかねないこと、いったん増加した外貨準備高もリラ防衛への市場介入で減少傾向に陥り始めていることなどが圧迫感を強めている。
【ドル/トルコリラ動向 3月1日から8日間の続落、ウクライナ情勢混迷と米長期債利回り上昇に押される】
ドル/トルコリラの3月10日は14.92リラから14.50リラの取引レンジ、11日早朝の終値は14.81リラで前日終値の14.63リラからは0.18リラのドル高リラ安となた。
3月1日からは8日間の続落であり、12月20日の史上最安値への暴落一巡による反騰で付けた12月23日高値10.06リラ以降の安値を更新した。
有事リスクとロシア制裁のエスカレートを背景に高騰していた原油価格が利益確定売り殺到で9日に急落したものの10日は下げ渋り、同じく有事の安全資産買いで大上昇してきた金の急落も一服するなど、10日は国際商品全般が落ち着き、大幅下落してきた欧米株も9日に目先の売り一巡で急反発したものの10日は揺れ返しで失速している。
10日夜に発表された米2月消費者物価が前年同月比で7.9%となり1982年以来40年ぶりの高水準となったことで米長期債利回りが総じて4連騰の上昇となったことも重なり、ドルストレートでは前日から戻していたユーロやポンド等が下落してドル高感が強まったこともトルコリラには圧迫要因となった。
【トルコの失業率は11.4%、外貨準備高は減少】
トルコ統計局が3月10日16時に発表した1月の失業率は11.4%となり、12月の11.2%から悪化した。インフレ進行と12月へのリラ暴落の影響も出ていると思われるが、ここ数か月は11%台序盤での横ばいが続いている。
20時半に発表された週次の外貨準備高は3月4日時点のグロスで681.8億ドルとなり2月26日時点の702億ドルから減少した。ネットでは181.5億ドルとなる2月26日時点の181.9億ドルから若干の減少となった。
グロスでは昨年11月時点の879.2億ドル以降の最低となっており、2月序盤へいったん増加したところから減少再開となっている。ネットでは昨年11月の326.4億ドルから1月末に75.5億ドルまで急減したところから増加に転じてきたが、再び減少し始めた気配となっている。
12月のリラ大暴落および1月からほぼ横ばいで下げ渋りが続いていた期間にはトルコ中銀による公式及び非公式での市場介入によるドル買いリラ売りが実施されたことで外貨準備高が激減し、通貨スワップ協定の拡充や企業のドル保有の銀行預託を強く勧めたことなどで回復していたところだが、3月に入ってからのリラ安再燃により介入が膨らみ始めるとリラ安と外貨準備高減少が負のスパイラルを引き起こす可能性もある。
【2月24日安値を割り込む】
トルコリラ円はロシア軍がウクライナに本格侵攻を開始した2月24日に7.78円へ急落したところで1月以降の8円台での持ち合いから転落したが、当日は急落一巡から8円台へと持ち直した。しかし2月25日と2月28日に8.40円まで戻したところをダブルトップ型のピークとして下落に転じて8円を割り込み、3月10日安値で2月24日安値を割り込んだことで持ち合い下放れの再確認となっている。
トルコは欧米によるロシア制裁には加担していないものの、ウクライナとロシアの戦争は両国への経済的な依存度の大きいトルコ経済にとっては打撃であり、原油高騰等による国際商品の全面高を背景に消費者物価は既に前年比で50%を超える上昇となっているが、消費者物価をさらに押し上げてゆくことが懸念される。またロシア経済がデフォルト的な破綻に陥れば1990年代後半のアジア・ロシア・中南米通貨危機のような金融市場ショックや、1970年代の中東戦争から旧ソ連のアフガン侵攻へと続く混乱で発生した第一次第二次のオイルショック型の世界規模での高インフレに巻き込まれる可能性も懸念される。通貨市場としてはこれらのリスクに対して弱い通貨としてトルコリラへの売り圧力が日々増している印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月8日深夜安値からいったん8円到達まで戻したために9日午前時点では8日深夜安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避のうちは9日の日中から10日午後にかけての間への上昇余地ありとしたが、既に9日早朝高値でサイクルトップを付けた可能性があるとして7.92円割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
9日夜に7.92円割れから続落して8日深夜安値も割り込んだため、10日午前時点では9日早朝高値を直近のサイクルトップとした新たな弱気サイクル入りとして11日夜から15日深夜にかけての間への下落を想定した。10日夜へ一段安してからやや戻しているものの、底打ちには日柄が浅いため、7.87円を超えないうちはもう一段安余地ありとみる。
60分足の一目均衡表では、3月1日夜の下落で先行スパンから転落してからは遅行スパンの悪化も続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは先行スパンの下限を試す上昇を想定するが、強気転換には先行スパンを上抜く必要があるため、先行スパンを上き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。
60分足の相対力指数は3月10日夜に20ポイントまで急落してから40ポイントまで戻したが50ポイントへ向けた勢いが見られないのでまだ一段安余地ありとし、30ポイント割れからは再び20ポイント前後を試すとみる。強気回復には50ポイントを超える必要があると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.77円を下値支持線、7.85円を上値抵抗線とする。
(2)7.85円以下での推移中は一段安警戒とし、7.77円割れからは7.70円台序盤(7.73円から7.70円)を試す流れとみる。7.72円以下は反騰注意とするが、7.80円以下での推移が続く場合は週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.84円から7.85円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみてその後に7.80円を割り込むところからは下げ再開とみる。
【当面の主な予定】
3月11日
16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.6%)
16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 14.4%)
16:00 1月 小売売上高 前月比 (12月 -2.7%)
16:00 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 15.5%)
16:00 1月 経常収支 (12月 -38.41億ドル)
3月15日
17:00 2月 財政収支 (1月 +300億リラ)
3月17日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現状 14.00%、予想 14.00%)
20:30 週次 外貨準備高 3/11時点
注:ポイント要約は編集部
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