ドルは1ヵ月ぶり116円台、続伸期待も
〇本日のドル円、日経平均大幅高など背景に116.20まで続伸、2/10以来1か月ぶりに116円台回復
〇地政学リスクよりも、エネルギー価格上昇を受けたインフレリスクの高まりなどに警戒
〇本日はG7エネルギー相会合や、ECB政策金利発表ならびに中銀総裁記者会見などに注目
〇本日欧米時間のドル/円予想レンジは115.50-116.40、本日高値116.20が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は、昨日安値115.56を割り込んでも底堅そう、大崩れはないとみる
<< 東京市場の動き >>
10日の東京市場はドルが小高い。2月10日以来、1ヵ月ぶりに116円台を回復し、年初来高値も視界内に捉えた値動きをたどっている。
ドル/円は、寄り付いた115.85円レベルを日中安値にドル買い先行。116円を前に一度足踏みとなるも、日経平均株価の大幅高に加えゴトー日仲値不足観測も後押しする格好で突破すると、そのまま日中高値の116.20円レベルまで続伸している。高値を付けたのちは上げ渋り小緩むも、すでに116円前後で底堅い。16時現在では116.00-05円で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「ウクライナ情勢」と「原油相場」について。
前者は、「ロシア軍がウクライナの首都キエフに向け進軍した」と伝えられるなか、ウクライナ大統領は「ロシア軍が小児病院を空爆」と発言。世界各国から、ロシアへの非難が再び殺到している。そうしたなか、ウクライナ当局は「チェルノブイリ原発で停電、放射性物質が大気中に広がる可能性がある」と発表したものの、IAEAがすぐさま「安全性への重大な影響はない」と火消しに動いたことで影響は限られた。
対して後者は、これまで報じてきたように米国や英国などがロシア産原油の輸入禁止へと動くなか、OPECは産油量の据え置きを表明しており、世界的に原油価格が上昇している。日米などが戦略備蓄の放出を表明しても、焼け石に水の状況で価格はなかなか下がらない。しかし昨日、UAE駐米大使が「原油の増産支持」を表明したうえ「OPECへ働き掛ける」と指摘したことで久しぶりに原油が大幅安。ただ、そののち同じUAEのエネルギー相から「UAEはOPECプラスの合意にコミットしている」とした、ややトーンダウン発言が聞かれるなど一筋縄ではいかないようだ。
<< 欧米市場の見通し >>
ドル/円は、過去3週間程度推移してきたレンジ上限の115.80円レベルを超えると、本日東京時間には一時116.20円レベルまで上昇。116.35円の年初来高値が名実ともに視界内へと捉えられてきたことは間違いない。リスクはドル高方向にバイアス。ただ、4日安値114.65円を示現したあとの展開はというと、おおむね右肩上がりで、買われ過ぎを懸念する声もチラホラ取り沙汰されている。短期的には調整の動きにも一応要注意か。
市場参加者による、来週開催される米FOMCへの関心はかなり高い状況下、日米金利差を背景にしたドル高基調は基本的に続く見込みだ。また、ウクライナ情勢が引き続き市場の波乱要因であることは間違いないものの、「現地での戦闘云々」といった地政学リスクよりも、エネルギー価格上昇を受けたインフレリスクの高まりなどを警戒する声も多くなってきた。半期に一度の議会証言でパウエルFRB議長は「インフレ率がさらに高まれば、政策金利を0.25%よりも大きな幅で引き上げる準備を整える」と発言していただけに、整合性も注視されている。
テクニカルに見た場合、ドル/円は115.80円を上限としたレンジを上抜け。ドルはその後も続伸し年初来高値を意識した展開となっている。リスクがドル高方向に高いことは間違いないものの、調整を懸念する声も少なくない。
ちなみに、4日安値114.65円を示現したあとの展開をみると、目先高値から下がっても精々50銭。そのレベルで短期ボトムを付け切り返すと、再びドルは高値を更新ということの繰り返し。それからすると、足もとはザラ場ベースでも115.70円レベルをクリアに下回ると、風向きの変化にも注意したいところだ。
材料的に見た場合、中長期的には共同通信が「米国と覇権争いで新局面」と伝えているデジタル通貨をめぐる動きも新たに注視されている「中国情勢」、WHOがパンデミックと形容してから11日で2年を迎えるがいまだ勝利宣言は聞かれない「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
一方、本日は米経済指標として、2月の消費者物価指数や週間ベースの新規失業保険申請件数が発表されるほか、米財務省による30年債の入札などが予定されている。そのほか、G7エネルギー相会合や、ECBによる政策金利の発表ならびに中銀総裁の記者会見なども実施される見通しだ。
そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは115.50-116.40円。本日東京高値の116.20円レベルが最初の抵抗。上抜けると年初来高値116.35円が名実ともにターゲットとなる。
対するドル安・円高方向は、昨日安値115.56円をめぐる攻防にまずは注目。ただ、割り込んでも底堅そう。少なくとも大崩れは予想しにくい。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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