ドル円、ウクライナ情勢にらみつつ、落ち着き所探る
〇先週のドル円、ウクライナ侵攻で不安定な動き、114.41まで一時下落後1円以上の急反発
〇北海ブレント原油の先物価格が上昇、7年5ヵ月ぶりに「1バレル=100ドル」台に
〇エネルギー価格の急騰や穀物の供給不安などは今週以降の新たなリスクとなる可能性も
〇今週はパウエル議長の議会証言やG7財務相・中銀総裁会議、OPECプラス閣僚級会合などに注目
〇今週のドル/円予想レンジは、114.10-116.60、115.76や115.88などを抜ければ116円台回復も
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、終わってみればドルが小高い。ザラ場ベースでは一時114.41円まで値を下げたが、そののち急反発をたどっている。
前週末は、複数の米国要人から「ロシアのウクライナ侵攻はいつあってもおかしくない」といった発言が聞かれたほか、豪首相が「中国軍艦艇が豪州哨戒機にレーザー照射を行った」とクレームをつけるなど、両国関係の悪化懸念が再び高まっていた感を否めない。
そうした状況下、ドル/円は115円前後で寄り付いたのち、週間を通して不安定な動き。方向性が定まらないなか、途中でリスク回避志向が強まると週間安値114.41円まで一時下落している。しかし、安値を示現後は同じリスク回避でも「ドル志向」が強まると、一転して上値を試す展開に。115.76円まで1円以上の急反発をたどり、週末NYもそのまま高値圏115円半ばで取引を終え、越週となった。
なお、24日には「ロシアのウクライナ侵攻」を受け原油価格が上昇。北海ブレント原油の先物価格は2014年9月以来、7年5ヵ月ぶりに「1バレル=100ドル」台を示現している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ウクライナ情勢」について。
情報戦ともいえる様々な「ウクライナ情勢」に振り回され、金融市場は一喜一憂している。前記したように、米要人からの「露による侵攻」発言が取り沙汰されるなか、一部メディアで「米露が首脳会談開催を双方が受け入れた」と報じられると一時好感したドル買いも。しかし、「ロシアがウクライナ東部の親ロシア派が支配する地域の独立を承認した」、さらに「プーチン氏が『平和維持』目的での部隊派遣を認める」と伝えられると流れは一転して円高へと傾斜した。また、そうした環境下、週内に開催予定だった「米露首脳」そして「米露外相」会談などが次々中止になっている。
日米欧などが様々な対露制裁を発表するなか、「実際の戦闘はないだろう」などと市場はまだ若干楽観視していたが、24日にインタファクス通信が「プーチン氏、ウクライナ東部への軍事作戦実施を表明」と伝えると、市場は一気にリスク回避志向に。その後も「ウクライナの複数都市で空爆が始まった可能性」、「ロシア軍がチェルノブイリ原発を掌握」、「首都キエフがミサイル攻撃を受けている」といった様々な報道に為替だけでなく金融市場は右往左往。また、それとは別に、原油を中心としたエネルギー価格の急騰懸念、そして穀物の供給不安などが今週以降の新たなリスクとなる可能性も取り沙汰されていた。
<< 今週の見通し >>
米要人などから「ロシアのウクライナ侵攻」リスクは取り沙汰されていたものの、当初「侵攻Xデー」とされた16日のヤマ場を無風で過ぎたこともあり、金融市場全体にやや楽観ムードが台頭していた感があった。しかし、24日に「ロシアの侵攻」が突然現実のものになったことで泡を食った参加者も多く、相場は依然として落ち着きどころを探る動きとなっている。先週は、上下になかなか大きな乱高下をみせたドル/円だが、今週もウクライナ情勢をにらみつつ、荒っぽい変動が続く可能性も否定できない。
当初、今週は3月2-3日に実施されるパウエルFRB議長の半期に一度の議会証言が最大の注目材料になる、と目されていた。そして、もちろんパウエル議長の議会証言が要注意であることも間違いはない。しかし、週間を通してもっとも注意を要するのはやはり「ウクライナ情勢」で、ロシア側とウクライナ側による停戦に向けた協議などが進展するのか否かにまずは注目。ただ、戦闘の長期化を予想する向きも多く、基本的には安全資産志向の動きがこのあとも続くことになりそうだ。
テクニカルに見た場合、ドル/円は移動平均の90日線をザラ場ベースのサポートに、同21日線に絡む動き。ちなみに、今週は前者が先週末の114.40円レベルから114円半ばへとわずかに値を上げるだけでなく、後者21日線も115.20円前後から緩やかな右肩上がりでレベルを切り上げるものと予想されている。
よって、先週の流れを維持し90日線が今週も引き続きサポートとして寄与するのか否か。さらに強気な見方とすれば21日線前後で底堅く、116円台回復へと向かう期待も少なくない。
材料的に見た場合、中長期的には、ロシアへの肩入れが明らかになり、世界各国からの批判も徐々に広まってきた「中国情勢」、米CDCがマスク着用指針を大幅に緩和すると発表した「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
そうしたなか今週は、様々な注目材料が目白押しだ。米経済指標でいえば、2月のISM製造業景況指数や同雇用統計などが発表されるほか、前述したパウエル議長の議会証言や、バイデン米大統領の一般教書演説、延期され3月1日開催に変更されたG7財務相・中銀総裁会議、OPECプラス閣僚級会合などにも一応要注意。
そんな今週のドル/円予想レンジは、114.10-116.60円。ドル高・円安については先週高値115.76円、そして115.88円などの攻防にまずは注目。抜ければ再び116円台回復、そして116.35円も意識されそうだ。
対するドル安・円高方向は、先週末のNYクローズベースで上回っている21日線、さらに115円レベルが最初のサポートか。下回れば90日線や月間安値114.16円などを目指す展開も。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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