ドル円見通し ウクライナ情勢をひとまず織り込んで戻したが先行き不透明感を引きずる(週報2月第4週)

25日の東京市場の反落では115円台を維持、26日未明には115.76円まで高値を切り上げて115.50円台で先週を終えた。

ドル円見通し ウクライナ情勢をひとまず織り込んで戻したが先行き不透明感を引きずる(週報2月第4週)

ドル円見通し ウクライナ情勢をひとまず織り込んで戻したが先行き不透明感を引きずる

〇ドル円、ロシア軍のウクライナへ侵攻により金融市場の動揺が極大化、2/24午後114.39まで下落
〇その後当面の戦局と金融市場への影響を織り込んだとしてリスク選好感が戻る中で115円台に反騰
〇26日未明には115.76まで高値を切り上げ115.50台で越週
〇NYダウ5日続落から24、25日は反騰、但し、週末SWIFTからのロシア排除が決定、週明け動向要注視
〇ロシアが軍事行動のエスカレート、欧米への経済的な反撃等を強める可能性もあり、楽観は時期尚早
〇1月の米PCE、前年同月比6.1%上昇、今後の米指標次第で3月0.50%利上げ説も再浮上の可能性
〇ドル円、2/25午後安値115.13を上回るうちは上昇継続とみて116円台序盤を目指す
〇ウクライナ情勢が悪化せず週末の米雇用統計を強気で通過するようなら116.33超えへ向かう可能性
〇115.13割れからはいったん調整安に入るとみて114円台終盤(114.75円から115.00円)を試すか
〇ウクライナ情勢が一段とエスカレートする情勢悪化の場合、2/24安値114.39割れを目指す可能性も

【概況】

ドル円はウクライナ情勢を背景に2月10日夜高値116.33円から下落に転じ、ロシア軍がドンバス地区を超えてウクライナへ侵攻したことにより金融市場の動揺が極大化したところの2月24日午後に114.39円まで安値を切り下げた。その後、NATO軍等の参戦がないことや欧米による制裁の概要が出揃う中で欧州へのロシア産天然ガス供給停止となる可能性が後退したこと、国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア銀行排除も回避された(27日時点では排除が決定された)ことで当面の戦局と金融市場への影響については材料的にひとまず織り込んだとしてリスク選好感が戻る中で反騰入りし、2月25日早朝に115.69円へ上昇した。25日の東京市場の反落では115円台を維持、26日未明には115.76円まで高値を切り上げて115.50円台で先週を終えた。

【NYダウ反騰、米長期債利回り上昇】

2月25日のNYダウは前日比834.92ドル高と連騰した。2月16日から23日まで5日間の大幅続落となり1月24日安値を割り込んで1月5日の史上最高値36952.65ドルからは二段下げに発展、2月24日には32272.64ドルまで安値を切り下げて一時は前日比で859.12ドル安となる大幅続落状態だったものの売り一巡感から下げ幅を解消してプラスに転じ、26日の上昇幅は今年最大となった。ナスダック総合指数も2月16日から23日へ5日間の続落となったが24日には大幅続落した安値からの切り返しで436.10ポイント高と反騰、25日も221.03ポイント高の続伸となった。
ウクライナ情勢についてひとまずは材料を消化して買い戻しに入ったという印象だが、SWIFTからのロシア排除が決定されたことに対する影響、ロシア側の対抗等が再び見通せなくなっていることが気がかりだ。27日のサンデーダウCFDやビットコインは下落している。

米長期債利回りは当初はウクライナ情勢の緊張感からの安全資産買いと株売り債券買いの流れで低下していたところから切り返しに入っている。米10年債利回りは2月25日を前日比変わらずの1.97%で終了したが、2月16日の2.06%から22日に1.84%まで低下したところから切り返して来ている。2年債利回りは25日を前日比0.02%低下の1.57%で終了したが、2月10日の1.64%から2月21日に1.43%へ低下したところから23日には1.64%まで持ち直して高値圏を維持している。

【有事リスクへの動揺はひとまず落ち着いたのか】

状況の落ち着きという点では、有事の金買いにより大上昇していたスポット市場のゴールドが2月24日に1974.29ドルまで大上昇して昨年3月底1676.86ドル以降の高値を更新したが、当日に1870ドル台へ急落、25日にいったん1921.19ドルまで戻してから再び1900ドルを割り込んでおり、有事リスクを反映した大上昇にピークアウト感が出ている。
欧州向けのロシア産天然ガス供給がストップすればエネルギー価格高騰を招くとして2月24日に100ドル台まで大上昇していたNY原油期近も25日の安値では90.06ドルを付けるところまで急落しており、パニック買いもひとまず落ち着いた印象となっている。
しかし、欧米がSWIFTからのロシア排除を決定し、ロシアによるウクライナ制圧も短期的な電撃作戦に終わらずにウクライナ軍の抵抗にてこずっているところもあり、ロシア側が軍事行動のエスカレート、欧米への経済的な反撃等を強める場合は状況もまた変わる。

多国を巻き込んでの戦争拡大や欧州のエネルギー資源パニック等が回避されて事態の収束へ進む見通しが出てくれば、金融市場の有事リスク回避型の動きも落ち着き、逆にやや過剰反応だったとして株高再開期待によるリスクオン優勢の展開で進む可能性も高まると思われるが、まだ楽観を決め込むのは時期尚早だろう。
ドル円としてはユーロやポンド、豪ドルなどの資源通貨、新興国通貨が確りしてクロス円全般が上昇感を取り戻せば、株高によるリスク選好感と米長期債利回りの上昇ないし高止まりを反映して2月10日からの下落を一巡させて上昇再開に入ってもよいところだが、まだ予断を許さない状況から抜け出せてはいない。

【市場の関心は米連銀の利上げペースへ向くか】

2月25日に米商務省が発表した1月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比6.1%上昇となり12月の5.8%から加速、市場予想の6.0%を若干上回り凡そ40年ぶりの高水準となった。食品とエネルギーを除いたコア指数では5.2%上昇となり前月の4.9%及び市場予想の5.1%を上回った。ウクライナ情勢の緊迫感による原油価格の急騰はやや一服感が見られるものの高止まりするようだとインフレの進行もさらに続きやすくなる。またウクライナとロシアは穀物輸出国であることや、半導体生産に必要なネオンはウクライナ産に、パラジウムはロシア産への依存度が高いこともモノ不足によるインフレを助長しかねないところだ。
3月15-16日の米FOMCまでにはまだ間があるところだが、今週は週末に米雇用統計もあり、就業者増加数や平均時給の上昇率等によってはやや低下している3月FOMCでの0.50%利上げの可能性も再浮上するものとして注目したい。

【当面のポイント、11月30日以降の下値支持線を維持】

【当面のポイント、11月30日以降の下値支持線を維持】

2月24日安値で114.39円まで下落したところから115円台を回復してきているが、11月30日安値112.52円と1月24日安値113.46円を結んだ下値支持線を割り込まずに持ち直している印象だ。1月4日高値116.34円と2月10日高値116.33円がダブルトップ型を形成しているが、このままダブルトップラインへ迫れば安値を切り上げる下値支持線と、ダブルトップラインによるフラットな上値抵抗線によるやや緩い三角持ち合いの形成から持ち合い上放れを目指す可能性も浮上してくると思われる。
米長期債利回りの上昇ないしは高止まり基調が継続すること、NYダウの反騰基調が継続すること、ウクライナ情勢が先週末までに市場が織り込んだリスクを超えるような深刻化へ進まないことが持ち合い上放れへ向かう条件と思われる。ダブルトップラインを超えないうちは持ち合い下放れへの可能性も残るため、情勢悪化から2月24日安値を割り込む場合は11月30日からの下値支持線割れへ進み始めたと判断を切り替えてゆきたい。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月25日午後安値115.13円を下値支持線、2月26日未明高値115.76円を上値抵抗線とする。
(2)115.13円を上回るうちは上昇継続とみて116円台序盤(116.00円から116.25円)を目指すとみるが、まだ悪材料出尽くしによるリスクオンの全開となるには時期尚早とみて116円台序盤では戻り売りも出やすいとみる。ただしウクライナ情勢のリスク度合いが悪化せずに週末の米雇用統計を強気で通過するようなら2月10日高値116.33円超えへ向かう可能性が高まる流れと考える。
(3)2月25日午後安値115.13円割れからはいったん調整安に入るとみて114円台終盤(114.75円から115.00円)を試すとみるが、そこは押し目買いされやすいところし、その後に115.50円を超えるところからは上昇再開と考える。ただしウクライナ情勢に対するリスクが一段とエスカレートする情勢悪化の場合は115円割れの状況を続けながら2月24日安値114.39円割れを目指す可能性も出てくると注意する。

【当面の主な予定】

2/28(月)
休場、台湾、インドネシア、ブラジル
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報値 前月比 (12月 -1.0%、予想 -0.7%)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (12月 2.7%、予想 0.1%)
08:50 (日) 1月 小売業販売額 前年同月比 (12月 1.4%、予想 1.4%)
09:00 (NZ) 2月 ANZ企業信頼感 (1月 -23.2)
09:30 (豪) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -4.4%、予想 0.3%)
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (12月 4.2%、予想 2.3%)
20:30 (欧) パネッタECB理事、講演
22:30 (米) 1月 卸売在庫 前月比 (12月 2.1%、予想 1.3%)
23:45 (米) 2月 シカゴ購買部協会景況指数 (1月 65.2、予想 63.0)
24:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、オンライン討論会

3/1(火)
休場、韓国、インド、ブラジル
バイデン米大統領、一般教書演説
09:30 (豪) 10-12月期 経常収支 (7-9月 239億豪ドル、予想 149億豪ドル)
10:30 (中) 2月 製造業PMI (1月 50.1、予想 49.8)
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 49.1、予想 49.2)
12:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
17:55 (独) 2月 製造業PMI改定値 (速報 58.5、予想 58.5)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI改定値 (速報 58.4、予想 58.4)
18:30 (英) 2月 製造業PMI改定値 (速報 57.3、予想 57.3)

22:00 (独) 2月 消費者物価指数速報値 前月比 (1月 0.4%、予想 0.8%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (1月 4.9%、予想 5.0%)
22:30 (加) 10-12月期 GDP 前期比年率 (7-9月 5.4%、予想 6.5%)
23:45 (米) 2月 製造業PMI改定値 (速報 57.5、予想 57.5)
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 57.6、予想 58.0)
24:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 0.2%、予想 -0.2%)
27:30 (英) サンダース英中銀委員、講演
28:00 (英) ボスティック・アトランタ連銀総裁、オンライン討論会
28:00 (英) マン英中銀委員、講演

3/2(水)
OPECプラス閣僚級会合
06:45 (NZ) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 0.6%)
08:50 (日) 10-12月期 ソフトウェア含む全産業設備投資額 前年同期比 (7-9月 1.2%、予想 2.%)
08:50 (日) 2月 マネタリーベース 前年同月比 (1月 8.4%)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前期比 (7-9月 -1.9%、予想 3.0%)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7-9月 3.9%、予想 3.6%)
17:55 (独) 2月 失業者数 前月比 (1月 -4.80万人、予想 -2.00万人)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 5.1%、予想 5.1%)
19:00 (欧) 2月 HICP消費者物価指数速報値 前年同月比 (1月 5.1%、予想 5.4%)
19:00 (欧) 2月 HOCP消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (1月 2.3%、予想 2.5%)

22:15 (米) 2月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (1月 -30.1万人、予想 35.0万人)
23:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
23:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.50%)
24:00 (米) パウエル米連銀(FRB)議長、下院金融委員会で半期議会証言
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (欧) レーンECB理事、講演
27:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
29:00 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演

3/3(木)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 8.2%、予想 -3.5%)
09:30 (豪) 1月 貿易収支 (12月 83.56億豪ドル、予想 95.00億豪ドル)
10:45 (中) 2月 財新サービス業PMI (1月 51.4、予想 50.8)
14:00 (日) 2月 消費者態度指数・一般世帯 (1月 36.7、予想 35.0)
17:55 (独) 2月 サービス業PMI改定値 (1月 56.6、予想 56.6)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI改定値 (1月 55.8、予想 55.8)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI改定値 (1月 60.8、予想 60.8)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 2.9%、予想 2.4%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 26.2%、予想 27.0%)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 7.0%、予想 7.0%)

21:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (7-9月 6.6%、予想 6.7%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.2万件、予想 22.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 147.6万人)
23:45 (米) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 56.7)
24:00 (米) 2月 ISM非製造業景況指数 (1月 59.9、予想 61.0)
24:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.5%)
24:00 (米) パウエル米連銀(FRB)議長、上院銀行委員会で半期議会証言

3/4(金)
冬季パラリンピック北京大会(3/13まで)
08:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
08:30 (日) 1月 失業率 (12月 2.7%、予想 2.7%)
08:30 (日) 1月 有効求人倍率 (12月 1.16、予想 1.15)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 70億ユーロ、予想 55億ユーロ)
16:00 (独) 1月 経常収支 (12月 239億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -3.0%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 2.0%、予想 9.1%)
22:30 (米) 2月 非農業部門就業者数 前月比 (1月 46.7万人、予想 40.0万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 4.0%、予想 3.9%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.7%、予想 0.5%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 5.7%、予想 5.8%)

3/5(土)
中国全国人民代表大会開幕(北京)

注:ポイント要約は編集部

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