『ウクライナ情勢と米金融政策が引き続き市場の二大テーマ』
〇ドル円、ロシア軍によるウクライナ攻撃を受け週後半にかけて、114.40まで急落
〇その後は週末にかけて、週間高値115.76まで急伸
〇対ロ制裁にSWIFTからの締め出しが入らなかったこと、有事のドル買いの強まり、
〇FRB関係者のタカ派発言、米1月PCEコアデフレータの伸び加速と米長期金利上昇、
〇ロシアのウクライナとの交渉団派遣の可能性示唆、株式市場の持ち直し等が支援
〇ユーロドル、地政学的リスクの高まりに1.1106まで下落後、週末1.1263前後まで持ち直す動き
〇ドル円、テクニカルの地合い強く、ウクライナ情勢緊迫化も資源価格上昇を通じ米金利米ドル上昇要因に
〇来週はドル円のアップサイドリスクに注意を要する1週間
〇来週の予想レンジ(USDJPY):114.50ー117.00、(EURUSD):1.1125−1.1375
今週のレビュー(2/21−2/25)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初114.93で寄り付いた後、@ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(プーチン露大統領によるウクライナ親露派地域のドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の独立承認→米露外相会談・米露首脳会談中止→欧米各国による経済制裁発表→ロシア軍によるウクライナ攻撃)や、A上記@を背景とした世界的なリスク回避ムード(株売り・債券買い・円買い→米ダウ平均株価が昨年3/25以来、約11ヵ月ぶり安値圏へ急落した他、米10年債利回りも一時1.84%へ急低下。外国為替市場ではリスク回避の円買い)が重石となり、週後半にかけて、2/3以来、約3週間ぶり安値となる114.40まで急落しました。
しかし、一目均衡表雲下限をバックに続落が阻まれると、Bロシアに対する経済制裁に国際銀行間通信協会(SWIFT)からの締め出しが含まれなかったことや、C「リスク回避の円買い」から「有事のドル買い」へのシナリオ転換、D米1月シカゴ連銀全米活動指数及び、E米新規失業保険申請件数の良好な結果、Fリッチモンド連銀バーキン総裁による「ロシアによるウクライナ侵攻は、FRBの利上げ方針の背景となる論理的裏付けを変えることはない」とのタカ派的な発言、Fサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「FRBは政策を引き締める必要性がある」とのタカ派的な発言、Gアトランタ連銀ボスティック総裁による「より正常化された金融政策に戻る準備は出来ている」とのタカ派的な発言、H米1月PCEコアデフレータ(結果+5.2%、予想+5.1%、※1983年以来の伸び率)の伸び率加速、I上記EFGHを背景とした米長期金利の急上昇(ウクライナ情勢悪化でも米国による金融引き締め方針不変→米10年債利回りが1.84%から2.00%へ急上昇)、
Jロシアはウクライナと交渉するためベラルーシ・ミンスクに代表団を送る用意があるとのヘッドライン、K上記Jを背景とした株式市場の持ち直し(地政学的リスク後退→週末にかけてのポジション調整誘発)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値115.76まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間2/26午前5時00分現在)では、115.57前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1315で寄り付いた後、@マクロン仏大統領が取り持つ形で米露首脳会談の原則合意を取り付けたとの一部報道や、A上記@を背景とした地政学的リスクの後退期待、Bユーロ圏2月総合PMI速報値(結果55.8、予想52.7、前回52.3)の力強い結果(5カ月ぶり高水準)が支援材料となり、週明け早々に週間高値1.1391まで上昇しました。しかし、心理的節目1.1400をバックに伸び悩むと、Cウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(プーチン露大統領によるウクライナ親露派地域のドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の独立承認→米露外相会談・米露首脳会談中止→欧米各国による経済制裁発表→ロシア軍によるウクライナ攻撃)や、
D上記Cを背景とした世界的なリスク回避ムード(欧州株急落+有事のドル買い)、Eドイツ連銀による「2022年1ー3月期のドイツ経済はマイナス成長となり、定義上のリセッション入りとなる見込み」との見解発表、F欧州経済の先行き不透明感(ロシアから35%の輸入依存している天然ガス価格が高騰→欧州経済への下押し圧力→ECBによる金融引き締め観測後退)、Gドイツ3月GFK消費者信頼感指数(結果▲8.1、予想▲6.3)の冴えない結果、Hテクニカル的な売りシグナル点灯(心理的節目1.1200や1/28に記録した直近安値1.1121を下方ブレイク→短期筋のストップSELL誘発)が重石となり、週後半にかけて、2020年6月1日以来、約1年9ヵ月ぶり安値となる1.1106まで急落しました。
もっとも、心理的節目1.1100をバックに下げ渋ると、Iロシアはウクライナと交渉するためベラルーシ・ミンスクに代表団を送る用意があるとのヘッドラインや、J上記Iを背景とした地政学的リスクの後退(欧米株持ち直し)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間2/26午前5時00分現在)では、1.1263前後まで持ち直す動きとなっております。
来週の見通し(2/28−3/4)
<ドル円相場>
ドル円は一時114.40まで急落するも、一目均衡表雲下限にサポートされる形で、週末にかけて高値115.76まで反発しました。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表雲上限や21日移動平均線、一目均衡表基準線や転換線など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論で見た上昇トレンドも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(※市場の反応がリスク回避の円買いから有事のドル買いへ転換)や、A資源価格高騰(原油価格や天然ガス価格など)を背景とした世界的なインフレ昂進懸念、B上記Aを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(今週は複数の米当局者からタカ派的な発言が相次ぐ結果→次回3月FOMCに向けての根強い大幅利上げ観測および早期QT観測)、C日銀による金融緩和スタンスの明確化(黒田日銀総裁は2/24に「欧米と違って直ちに金融緩和の縮小に動くことはない」とハト派的なスタンスを強調)、
D上記BCを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り圧力。円キャリートレードの復活期待)など、ドル高・円安を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は、ロシア・ウクライナを巡る続報に加えて、3/1に予定されている米2月ISM製造業景況指数やバイデン米大統領の一般教書演説、3/2および3/3のパウエルFRB議長による半期に一度の議会証言、3/4の米2月雇用統計などに注目が集まります。米経済指標(特に米雇用統計)が前月同様力強い結果を示す場合や、パウエルFRB議長よりタカ派的なスタンスが示される場合などには、次回FOMCでの3月50bp利上げ+バランスシートの早期圧縮を織り込む形で、米金利上昇→米ドル高の流れが加速する展開が想定されるため、来週はドル円のアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(1/4に記録した高値116.36や、2/10に記録した高値116.35を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):114.50ー117.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約1年9ヵ月ぶり安値となる1.1106まで急落しました。現在も1.12台半ばで推移するなど、上値の重い展開が続いています。この間、ローソク足が主要サポートポイント(90日移動平均線や21日移動平均線、一目均衡表雲上限や雲下限、一目均衡表転換線や基準線など)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーも再点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。ファンダメンタルズ的に見ても、@ウクライナを巡る地政学的リスクの高まりや、A天然ガス価格高騰に伴う欧州経済への下押し圧力、BECBによる早期利上げ観測の後退(ロシア・ウクライナを巡る不確実性が燻る中、ECBによる利上げ観測は後退)、
C米FRBによるタカ派傾斜観測の高進(今週は米当局者によるタカ派的な発言が相次ぐ結果)、D上記BCを背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差拡大→ユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方ではユーロドル相場の見通しを「ブル」から「ベア」に再度シナリオ転換いたします(尚、来週は3/2および3/3に予定されているパウエルFRB議長による半期に一度の議会証言や、3/2のユーロ圏2月HICP速報値、3/4の米2月雇用統計などに注目。ロシア・ウクライナに絡むヘッドラインや、天然ガスおよび米長期金利の動向を睨みながらの神経質な展開を想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1125−1.1375
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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