トルコ中銀利下げ見送り後はウクライナ情勢に圧迫されて下落
〇トルコリラ円、円高に加えドル高リラ安進行で19日早朝8.40まで続落
〇対ドルでも19日未明に安値13.67へ下落し18日までの戻り幅を解消
〇本日トルコ1月海外観光客数発表、昨年は88.1%増だったがパンデミック前の6割にとどまる
〇観光客通年1位はロシア、3位ウクライナ、軍事的緊張強まればトルコ観光業への影響も
〇8.46以下での推移中は2/18午前高値を起点とした下落基調の範囲として下向き
〇8.46超えからは8.49前後への上昇を想定するが戻りは短期的とみて8.49以上は反落注意
【概況】
トルコリラ円の2月18日は8.51円から8.40円の取引レンジ、19日早朝の終値は8.41円で前日終値の8.46円からは0.05円の円高リラ安だった。
2月3日安値8.40円を起点とした上昇が2月11日高値8.63円で一巡となり、その後はドル円の下落とウクライナ情勢が圧迫要因となって下落基調となり、2月17日にトルコ中銀が政策金利を2会合連続で据え置いたことで一時的に戻したものの勢いは続かずに失速し、2月18日は円高による圧迫感に加えてドル/トルコリラでもドル高リラ安が進行したことで2月19日早朝安値で8.40円まで続落して2月3日からの上昇分を解消した。
2月21日朝には8.40円を若干割り込んでから8.44円まで戻し、その後はやや下落している。
【対ドルでは13.60リラ台の下値支持線を試す展開続く】
ドル/トルコリラの2月18日は13.67リラから13.48リラの取引レンジ、19日早朝の終値は13.64リラで前日終値の13.57リラからは0.07リラのドル高リラ安だった。
2月15日安値13.68リラを起点として2月18日に13.52リラまで戻したところから下落に転じて19日未明にはこの日の安値となる13.67リラへ下落して18日までの戻り幅を解消した。
12月の暴落と反騰、その後の揺れ返しの下落が落ち着いてからは13リラ台での持ち合いが続いているが、その中でも1月19日以降は19日安値13.65リラ、1月28日安値の13.66リラ、2月8日安値の13.66リラ、2月15日安値の13.68リラと13.60リラ台では買い戻されて下値支持線を形成してきたが、支持線割れからの一段安入りを試す動きのまま週を終えている。
2月21日朝は13.67リラまで下落したところからやや戻している。
【ウクライナ情勢によるトルコリラへの圧迫感】
2月21日にトルコ文化観光庁による1月の海外観光客数の発表がある。
2021年12月の海外からの観光客数は248.3万人で2020年12月の99万人から150.5%、2.5倍の増加となり、2021年の通年では3003.9万人となり2020年の1597.1万人から88.1%増となったが、パンデミック前の2019年は5174.7万人でありまだ凡そ6割にとどまっている。
世界規模の感染拡大は収まらないもののワクチンの普及によりウィズコロナ政策が主流となり渡航規制も緩んでいることから2022年はさらに回復への期待が強まるところではあるが、ウクライナ情勢が懸念要因となり始めている。
2021年12月の観光客1位はブルガリア、2位がドイツ、3位がイラン、4位がロシア、5位がイラクである。しかし通年では1位がロシアの469.4万人で19%、2位がドイツの308.5万人で12.5%、3位がウクライナの206万人で8.3%であり、ウクライナとロシアの軍事的緊張が一段と強まり長引けば、トルコ観光業への影響もかなり大きくなる可能性がある。ウクライナの富裕層の中にはトルコへの避難的な長期滞在を計画する者もいるかもしれないが少数派だろう。
2014年のウクライナ騒乱からロシアによるクリミア侵攻とドンパス地方の親ロ派勢力による実効支配へ至った時と比較して今回の危機が当時を上回る場合、為替市場におけるリスク回避的な円高によりクロス円全般が下落してトルコリラも足を大きく引っ張られる可能性がある。またドルストレートにおいても地政学的な距離感から豪ドルやNZドル、ポンドやメキシコペソはユーロと比較して相対的に強い印象だが、トルコリラは地政学的距離も近い状況にあるために売られやすい印象だ。
【三角持ち合いの下値支持線を割り込み2月3日安値に並ぶ】
昨年9月から12月への4会合連続利下げによるリラ暴落で12月20日に6.17円の史上最安値を付けたところから当面の利下げ打ち止めとリラ預金為替差損補填政策の発表で12月23日に11.14円へいったん急反騰したものの、先行きの利下げ政策継続姿勢と高インフレへの不安から1月3日に8.13円へ下落、その後は様子見の展開で8円台の持ち合いが続いている。
8円台の持ち合いの中でも1月12日高値8.70円から1月31日高値8.67円、2月11日高値8.63円と上値抵抗線が切り下がり、1月14日安値8.32円から1月27日安値8.39円、2月3日安値8.40円と下値支持線は切り上がってレンジ縮小型の三角持ち合いを形成してきたが、2月17日の下落でこの下値支持線を割り込み、2月19日早朝安値で8.40円まで下げて2月3日安値と並んでおり、8.40円を割り込む場合は三角持ち合い下放れに入り下げ足が早まる可能性が考えられる。2月21日朝には8.40円を一時割り込んでいるため流れは下向きのバイアスがかかっており、1月14日安値の8.32円や1月10日の8.27円、1月3日の8.13円等を順次試してゆく可能性が高まってくると懸念される。上昇再開には2月18日午前高値8.51円を超える切り返しが必要と思われる。
【当面のポイント】
(1)1月12日以降の三角持ち合いの支持線を割り込んできているため、当面の下値支持帯を8.39円、上値抵抗を8.46円とみておく。
(2)8.46円以下での推移中は2月18日午前高値を起点とした下落基調の範囲として下向きとし、8.39円割れからは8.30円台中盤(8.37円から8.35円)を試すとみる。8.35円以下は反発注意とするが、8.30円台中盤へ下げた後も8.42円以下での推移が続くようなら週末にかけて安値試しを続けやすい状況とみる。
(3)8.46円超えからは8.49円前後への上昇を想定するが戻りは短期的とみて8.49円以上は反落注意とし、その後に8.44円を割り込むところからは下げ再開に入り8.40円前後への下落へ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
2月21日
17:00 1月 観光客数 前年比 (12月 170.6%)
23:30 1月 中央政府債務 (12月 2兆7477億リラ)
2月22日
16:00 2月 製造業景況感 (1月 109.5)
16:00 2月 設備稼働率 (1月 77.6%)
2月24日
20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会)議事録
20:30 週次 外貨準備高 2/18時点 グロス (2/11時点 751.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 2/18時点 ネット (2/11時点 158.2億ドル)
2月25日
16:00 2月 経済信頼感指数 (1月 100.8)
2月28日
16:00 10-12月期GDP 前期比 (7-9月 2.7%)
16:00 10-12月期GDP 前年同期比 (7-9月 7.4%)
16:00 1月 貿易収支 (12月 -67.9億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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