トルコリラ円見通し トルコ統計局長が解任される、2月3日の物価統計に注目(22/1/31)

トルコリラ円の1月28日は8.53円から8.40円の取引レンジ、29日早朝の終値は8.50円で前日終値の8.45円からは0.05円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し トルコ統計局長が解任される、2月3日の物価統計に注目(22/1/31)

トルコ統計局長が解任される、2月3日の物価統計に注目

〇トルコリラ円、1/24以来8.50円台前半へ上昇、レンジ縮小した持ち合い続く
〇対ドル、1/13以降13.60リラ台で底堅い動き、1/28夕刻からドル高リラ安一服
〇トルコ国家統計局長、消費者物価上昇を受け、エルドアン大統領により解任
〇米FOMC後ドル全面高、新たなリラ売りきっかけ発生で持ち合い下放れへ進みかねない
〇2/3発表予定のトルコ消費者物価指数、英中銀とECB金融政策、2/4米雇用統計への市場反応注視
〇8.55を超える場合、8.60から8.63への上昇を想定する
〇8.45割れからは下向きとし、8.37割れから続落に入る場合8.30円台序盤を試すとみる

【概況】

トルコリラ円の1月28日は8.53円から8.40円の取引レンジ、29日早朝の終値は8.50円で前日終値の8.45円からは0.05円の円安リラ高となった。
1月27日早朝の米FOMC金融政策発表からドル全面高となり、ドル円が27日夜の115円台到達から28日にはさらに115.68円まで高値を伸ばしたことでトルコリラ円も円安に支えられる展開となり、ドル/トルコリラも28日夕刻まではドル高基調だったところからリラ買い戻し優勢となったことも押し上げ要因となり、1月24日以来の8.50円台前半への上昇となった。終盤はやや利益確定売りに押されたものの8.50円を維持して週を終えたが、週明けは8.55円へ高値を切り上げてスタートしている。
12月の大暴落とその後の反騰が一巡した1月3日以降は8.13円から9.00円までのレンジ内での持ち合いを続けており、1月20日にトルコ中銀が5会合ぶりに利下げを見送ったところで8.61円まで戻した後は高値切り上げへは進めずに8.40円前後を支持線、8.50円台を上値抵抗としてレンジをさらに縮小した持ち合いが続いている。

【対ドルでは13.60リラ台で底堅い動き】

ドル/トルコリラの1月28日は13.67リラから13.44リラの取引レンジ、29日早朝の終値は13.55リラで前日終値の13.62リラからは0.07リラのドル安リラ高だった。
12月の暴落と一時的な急騰が一巡した後は13リラ台中心の持ち合いが続いており、1月20日に13.31リラまで反発したところからは全般的なドル高に押されて下落基調で推移してきたが、28日は夕刻からドル高リラ安が一服してややリラが持ち直している。1月13日以降は13.60リラ台では買い戻されて底固さも見せている。

【トルコの国家統計局長が解任される】

トルコの国家統計局の局長がエルドアン大統領によって解任された。
1月3日に発表された12月のトルコ消費者物価指数は全体の前年比が36.08%へと急伸、コア指数でも31.9%へと上昇したが、野党はこの水準よりも実態の物価上昇率は大幅に上回っていると批判しているものの、大統領は逆に正しい実態を反映していない過剰な物価上昇率となっていると認識しているようで、統計局長を突然解任したようだ。
2月3日には1月のトルコ消費者物価指数の発表があり、市場予想では全体の前年比が46.68%へとさらに加速すると見ているが、統計局長の解任・交代により果たして正しくインフレ実態を示す数字が出されるのかどうか怪しくなってきた印象だ。

エルドアン大統領は昨年3月に当時のトルコ総裁アーバル氏を突然解任したことで3月から6月にかけてのリラ暴落を招いたが、この2年半で3人の中銀総裁を解任している。昨年10月には利下げ反対派とされた中銀副総裁2名を含む3名の中銀委員が解任されている。
1月29日には法務大臣も解任されているが、その理由は示されていない。またトルコのメディアが「国家的及び道徳的価値観と両立しないコンテンツを放映した場合には法的措置をとる」と表明しており言論統制をちらつかせている。エルドアン大統領による圧政が一段と強化されている印象だが、2023年の大統領選挙での再選が危うさを漂わせる中での焦りもみられる。

【ドル全面高にトルコリラは耐えられるか】

1月27日早朝の米FOMC金融政策発表からドル高が一段と強まっている。
ユーロドルは11月後半から下げ渋り型の持ち合いとなり1月14日には一時1.150ドルに迫るところまで戻していたがその後の下落で11月24日安値を割り込んで昨年1月6日と昨年5月25日のダブル天井以降の安値を更新した。ポンドドルは12月8日から1月13日まで反騰してきたがその後の失速で戻り幅の3分の2を削り、豪ドル米ドルは1月28日に12月3日安値を割り込み昨年2月天井以降の安値を更新している。
2月1日に豪中銀、2月3日に英中銀とECBが金融政策決定会合を開くため、内容次第では対ドルでの反騰のきっかけとなる可能性もあるが、米連銀による引き締め強化姿勢と主要中銀も引き締めへ傾斜する中で為替市場における投機マネーも昨年末までの楽観的な強気スタンスを維持できなくなってきている印象もあり、新興国通貨に対する積極的な投資姿勢も後退しやすい状況にあるとすれば、金融政策で混迷しているトルコリラも新たなリラ売りのきっかけをつかんでしまうと年初からの持ち合いを維持できなくなって下放れに入り史上最安値を試す流れへと進みかねないと思われる。

【当面のポイント、持ち合い放れ待ち】

【当面のポイント、持ち合い放れ待ち】

12月20日に6.17円まで史上最安値を更新したところからエルドアン大統領によるリラ預金の為替差損補填政策発表による12月23日高値11.14円までいったん急騰したが、その効果も長続きせずに1月3日に8.13円へ下落し、その後は1月3日の高値9.00円を超えられずに持ち合いが続いている。
持ち合いも1か月を経過したが、2021年3月にアーバル中銀総裁が解任されたことによる大幅下落が6月2日に一服してから9月1日まで凡そ1円幅での持ち合いを続けた経緯もあるので、今回の持ち合いが2か月、3か月と長引く可能性はあるだろう。しかし、エルドアン大統領による乱暴な政策姿勢は継続しており、リラ売りの新たなきっかけが発生すると持ち合い下放れへ進みかねない状況も続く。
当面は2月3日のトルコ消費者物価上昇率の発表に対する市場反応、2月3日の英中銀とECBの金融政策、4日の米雇用統計などへの反応で持ち合いを維持できるのか試されてゆく展開と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.45円を下値支持線、8.55円を上値抵抗線とする。
(2)8.55円を超える場合は8.60円台序盤(8.60円から8.63円)への上昇を想定するが、8.60円以上は反落警戒とみる。
(3)8.45円割れからは下向きとみる。8.40円割れは買い戻されやすいところだが、8.37円割れから続落に入る場合は8.30円台序盤(8.30円から8.33円)を試すとみる。物価統計やエルドアン大統領による市場へのネガティブな発言をきっかけに急落する場合は8.20円台中盤(8.27円から8.23円)へ向かう可能性もあると注意する。

【当面の主な予定】

1月31日
 16:00 12月 貿易収支 (11月 -54億ドル)
 16:00 10-12月期 観光収入 (7-9月 114億ドル)
 17:00 12月 観光客数 前年比 (11月 111.5%)
2月01日
 16:00 1月 イスタンブール製造業PMI (12月 52.1)
2月03日
 16:00 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 13.58%、予想 9.80%)
 16:00 1月 消費者物価指数 前年比 (12月 36.08%、予想 46.68%)
 16:00 1月 消費者物価コア指数 前月比 (12月 13.2%)
 16:00 1月 消費者物価コア指数 前年比 (12月 31.9%)
 16:00 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 19.08%)
 16:00 1月 生産者物価指数 前年比 (12月 79.89%)
 20:00 週次 外貨準備高 グロス 1/28時点 (1/21時点 708億ドル)
 20:00 週次 外貨準備高 ネット 1/28時点 (1/21時点 92.7億ドル)
2月07日
 23:30 1月 財務省現金残 前月比 (12月 -920.9億リラ)
2月10日
 16:00 12月 失業率 (11月 11.2%)

注:ポイント要約は編集部

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