トルコリラ円見通し 膠着状態、8円台での持ち合い続く
〇トルコリラ円、1/26早朝終値8.44、8円台での持ち合い続く
〇対ドル、1/20以降13.30から13.50リラ台レンジ、ドル高リラ安気味のジリ安推移
〇FOMCやウクライナ情勢で世界連鎖株安深刻化の恐れも、新興国通貨への売り圧力注意
〇1月トルコ設備稼働率、同製造業景況感指数、パンデミック前水準やや回復
〇追加利下げ急がずインフレ動向見守る姿勢、2/3CPI発表まで持ち合い続くか
〇8.48以下での推移中はもう一段安余地ありとし、8.37割れからは8.30円台前半への下落を想定する
〇8.48超えからは上向きとして、8.50から8.53への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の1月25日は8.47円から8.37円の取引レンジ、26日早朝の終値は8.44円で前日終値の8.45円からは0.01円の円高リラ安だった。
1月20日のトルコ中銀金融政策決定会合で5会合ぶりに追加利下げが見送られたが市場予想通りだったこともあり市場の反応も限定的で、その後は重要イベント通過感から値動きも乏しい。
12月20日に6.17円まで歴史的な大暴落となったところからリラ預金保護政策発表により12月23日に11.14円まで急反騰したものの1月3日安値8.18円へと揺れ返しの下落となり、その後は1月3日の戻り高値9.00円を上抜けずに8円台での持ち合いが続いているが、持ち合い放れのきっかけを得ずに推移しており、25日もその範囲内での小動きだった。
【対ドルでは13リラ台での持ち合いを継続中】
ドル/トルコリラの1月25日は13.57リラから13.29リラの取引レンジ、26日早朝の終値は13.47リラで前日終値の13.44リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。最近のトルコリラは対ドルでも一時的な安値提示でのブレも大きいが、そうしたところは買い戻されており、1月20日以降は13.30リラから13.50リラ台までのレンジでややドル高リラ安気味のジリ安推移となっている。
NYダウが1月24日には一時千ドル安を超える大幅続落からプラス圏へ戻し、25日も一時800ドル安を超える急落から100ドル安弱まで切り返すなど乱調さが際立っているが、27日早朝のFOMC声明発表が近づいていることとウクライナ情勢の緊張激化により株式市場も不安心理に覆われており、FOMCやウクライナ情勢次第では世界連鎖株安が深刻化する可能性もあり、その際は新興国株・通貨に対する売り圧力も増す可能性があるところと注意したい。
【トルコの製造業信頼感はやや改善】
1月25日夕刻に発表された1月のトルコ設備稼働率は77.6%となり12月の78.7%から低下した。2020年春のパンデミック発生により2019年12月には77.0%だったところからから2020年4月に61.6%まで大幅低下したが、その後は持ち直しの動きを続けている。トルコの感染拡大の影響により2021年序盤も再び低下傾向がみられたもののウィズコロナ政策による経済活動の維持で持ち堪えている印象であり、既にパンデミック前の水準は回復しているがやや頭打ち感もあるところ。
1月の製造業景況感指数は109.5となり12月の106.1から上昇、前年同期からは2.3%のプラスとなった。2020年春のパンデミック発生から2020年4月に66.8まで大幅に悪化したところから回復基調に入り、2021年7月には114.8まで伸びてきたが、2021年9月からのリラ暴落とインフレ進行の影響により2021年12月まで悪化傾向が続いてきた。1月はリラも反騰したことで暴落不安が落ち着いて若干改善したが、リラ安不安とインフレ進行懸念を引きずっているため大きな改善には至らず、パンデミック発生後の回復もやや頭打ち感が出ている。
【ウクライナ情勢とトルコ】
エルドアン大統領は1月20日に2月初めにウクライナを訪問してゼレンスキー大統領と会談すると発表した。
トルコはNATO加盟国であるがロシア製ミサイルシステム導入やギリシャ沖でのガス田開発の強硬等により他のNATO諸国と対立してきた。米国との関係も悪化してきたが、バイデン政権との関係も改善が見られない。一方でロシアとは天然ガスパイプライン等で協力関係にあるものの、シリアやリビア、アルメニア紛争等では対立的な立場をとるなど、綱渡り外交が続いている。
ロシアが2014年にクリミア半島を軍事侵攻・制圧した時にはクリミア半島にトルコ内にも存在するタタール人が存在していたことでトルコにおいても緊張が走った経緯もある。西側としてロシアの軍事進攻発生に対する制裁が発動される場合にはトルコも同調できるのか微妙な立場といえる。
【2月3日のCPI発表まで持ち合い続くか】
1月20日のトルコ中銀金融政策で追加利下げが見送られて現状維持とされたこと、エルドアン大統領がその前に利下げ政策を継続するものの追加利下げを急がない姿勢を示し、ネバティ財務相も1-3月は様子を見るとしたことで、当面は追加利下げが急がれずに落ち着いた動きでインフレ動向を見守る展開でリラ動向も落ち着いた動きを続けやすいと思われる。
ネバティ財務相は1月22日のエコノミストとの会合でインフレ率は向こう3か月で40%程度に上昇するもののその後は低下に転じて年内に30%を下回るとの見通しを示した。またトルコ中銀の金融政策についても現行スタンスを転換することはなく利上げを予想すべきでないと述べている。このため今後の物価上昇においても利上げという選択肢はないのだろうが、少しでもインフレ鎮静化の兆候が見られるなら3月ないし4月以降の利下げ再開もあり得るというスタンスなのだろうと思われる。
来週の2月3日には消費者物価上昇率の発表がある。1月は前月比13.58%上昇、前年比36.08%上昇、食品とエネルギー等を除いたコア指数でも前月比13.2%上昇、前年比31.9%上昇だった。市場予想はまだ揃っていないが、全体の消費者物価上昇率の前年比については40%台への上昇も予想される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月19日夕安値で19日未明安値割れを回避して持ち直したために20日午前時点では19日未明安値と19日夕安値をダブルボトムとした強気サイクル入りとして20日夜から25日夜にかけての間への上昇を想定したが、20日の中銀金融政策発表後に一段高してから失速したために21日午前時点では既に20日夜高値でサイクルトップを付けたとして24日午後から26日夕にかけての間への下落を想定した。
24日深夜へ安値を切り下げてから戻したものの25日夕刻には安値をさらに切り下げているのでまだ一段安余地が残る、また24日深夜安値安値を直近のサイクルボトムとして既に底割れから新たな弱気サイクル入りしている可能性もあるが、その場合は27日夜から2月1日深夜にかけての間へ安値形成期が延長される事も考えられる。このため8.48円を超えるところからは上昇再開とするが、8.37円割れからは新たな弱気サイクル入りとして27日夜から2月1日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では先行スパンから転落した状況が続いているので先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは反騰入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は1月22日早朝からの安値切り下がりに際して指数のボトム切り上がる強気逆行がみられるものの50ポイント台では抵抗感もあり勢いに欠ける。55ポイント超えからは上向きとして70ポイントに迫る上昇を想定するが、40ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント割れを目指す流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)8.37円を下値支持線、8.48円を上値抵線とする。
(2)8.48円以下での推移中はもう一段安余地ありとし、8.37円割れからは8.30円台前半(8.35円から8.30円)への下落を想定する。8.32円以下は反騰注意とするが、8.45円以下での推移なら27日の日中も安値試しへ向かう可能性が残るとみる。
(3)8.48円超えからは上向きとして8.50円台序盤(8.50円から8.53円)への上昇を想定する。8.53円以上は反落注意とするが、8.50円を超えた後も8.48円以上での推移なら27日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
【当面の主な予定】
1月27日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨
20:30 週次 外貨準備高・グロス 1/21時点 (1/14時点 707億ドル)
20:30 週次 外貨準備高・ネット 1/21時点 (1/14時点 70.5億ドル)
1月28日
16:00 1月 経済信頼感指数 (12月 97.6)
1月31日
16:00 12月 貿易収支 (11月 -54億ドル)
16:00 10-12月期 観光収入 (7-9月 114億ドル)
17:00 12月 観光客数 前年比 (11月 111.5%)
2月01日
16:00 1月 イスタンブール製造業PMI (12月 52.1)
2月03日
16:00 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 13.58%)
16:00 1月 消費者物価指数 前年比 (12月 36.08%)
16:00 1月 消費者物価コア指数 前月比 (12月 13.2%)
16:00 1月 消費者物価コア指数 前年比 (12月 31.9%)
16:00 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 19.08%)
16:00 1月 生産者物価指数 前年比 (12月 79.89%)
20:00 週次 外貨準備高
注:ポイント要約は編集部
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