一転してドルの下値余地拡大、続落にも注意(週報1月第3週)

先週のドル/円相場は、一転してドル売り先行。週足は前週まで5週続けての陽線引けをたどっていたが、先週のドル安進行で上昇分の多くを吐き出している。

一転してドルの下値余地拡大、続落にも注意(週報1月第3週)

一転してドルの下値余地拡大、続落にも注意

〇先週のドル円、週末にかけ下げ足加速し一時113円半ばまでドル安進行
〇ブレイナード理事、指名承認公聴会で「3月にも利上げに踏み切る可能性がある」と発言
〇今週はNY連銀製造業景況指数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数などが発表予定
〇今週のドル/円予想レンジは、112.90-115.20、114円後半が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は先週安値を含めた113円半ばが強いサポート、割り込めば113円割れも

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場は、一転してドル売り先行。週足は前週まで5週続けての陽線引けをたどっていたが、先週のドル安進行で上昇分の多くを吐き出している。

前週末は、引き続き欧州を中心とした新型コロナの感染拡大が取り沙汰されたほか、10日から始まる米露首脳による「戦略的安定対話」を前にした高官同士の事前協議が行われ、そちらが一部で話題となっていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は115.60円レベルで寄り付いたのち、当初はドル買い先行し115.85円を示現。しかし、同レベルが週間高値となり、以降週末にかけては一転ドル売り優勢に。115円割れではストップロスも巻き込むと下げ足が加速し、一時は113円半ばまで2円を超えるドル安が進行している。そののち、短期的にはやや下げ過ぎたとの見方から再びドル買いも観測されると、週末NYは辛うじて114円台を回復し越週となった。
なお、市場への影響は限定的だったが、年明け5日に続き先週11日と14日、それぞれ東京の時間帯に北朝鮮がミサイルと思しき飛翔体を発射。一部で思惑を呼ぶ。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「新型コロナ」と「米金融政策」について。
前者は、症状はいずれも軽いとされるが、スウェーデン王子やオーストリー首相、豪財務相−−といった各国要人のコロナ罹患が伝えられ思惑を呼ぶ。また共同通信が、WHOによる速報値をもとに「3日からの1週間に世界全体の感染者数が1498万人と、前週に続き過去最多を大幅に更新した」と報じるなど、弱毒性であっても予想を超える感染力の強さが、金融市場においても危機感を醸す結果となっていたようだ。そうしたなか、開催まで1ヵ月を切った中国北京五輪だが、隣接する天津市において、市内の新型コロナウイルス感染急増を理由に地方議会に相当する人民代表大会を含む2つの政治会議が延期されるなど、先行きに暗雲が垂れ込めはじめた。

対して後者は、11日と13日に上院銀行委員会で行われたパウエルFRB議長と、ブレイナード理事のFRB副議長指名承認公聴会は、市場の関心が高く話題を集めていた。ちなみに、パウエル氏による「利上げのタイミングはまだ決めてない」「利上げ回数はデータ次第」などといった発言は、やや曖昧模糊としたもので市場の失望を誘う。しかし、続くブレイナード氏は「向こう1年間に数回の利上げを予想している」「3月にも利上げに踏み切る可能性がある」と逆に強気発言を連発。発表された米消費者物価指数が前年比7.0%と、ほぼ予想通りの結果ながら、数字そのものは実に39年ぶりの高数字となったことなどと合わせ、米早期利上げ観測を後押ししていた。

<< 今週の見通し >>

先々週4日に高値116.35円を示現後のドル/円相場は、ほぼ一貫しての右肩下がり。週間安値113.48円まで一時は高値から3円近い下げを記録していた。昨年11月末安値112.54円を起点とした上昇に対するフィボナッチの観点から、一連の動きを見てみると61.8%戻し(114.00円)を下回ったものの、最後のテクニカルポイント76.4%戻し113.45円レベルでは辛うじて下げ止まった格好だ。今週も先週安値をめぐる攻防にまずは注目で、しっかり割り込めば全戻し、つまり112円台突入も否定できないだろう。
日米を中心とした各国金融政策への関心が依然として高いなか、前段でも取り上げたようなブレイナード氏を中心とした通貨当局者からの強気発言が相次いでおり、それからすれば本来はもう少しドル高方向で推移しても不思議はなさそうだ。ただ、年3回の米利上げを市場は織り込んでいる感もあるうえ、「米インフレ率は1-3月期にピークを迎える」といった見方もジワリと勢力を伸ばしていることが足かせに。今週も発表される米経済指標や要人発言に一喜一憂しつつも、ドルは上値の重い展開をたどる可能性もある。

テクニカルに見た場合、ドル/円は前述したように一連の上げ幅の7割以上も下落。フィボナッチ以外でも、114円後半に位置した移動平均の21日線をしっかりと下回るなど、上方向のリスクは完全に雲散霧消したと言えそうだ。ちなみに、移動平均では90日線が先週安値に近い113.40-50円に位置している。複数のテクニカルポイントとなっている113円半ばをきちんと下回れば、ドルはさらなる修正安をたどっても不思議はなく、113円割れを想定しておく必要があるかもしれない。

材料的に見た場合、中長期的には、コロナ拡大などもあり北京五輪開催懸念がジワリと高まりつつある「中国情勢」、先週米欧露が会談実施するも目立った進展がなく依然波乱含みの「ウクライナ情勢」、「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
そうしたなか今週は、1月のNY連銀製造業景況指数や同フィラデルフィア連銀製造業景気指数という重要な米経済指標が発表されるほか、米企業の決算発表がいよいよ本格化することで、その内容にも注意を払いたい。なお、いわゆる「ブラックアウト期間」入りすることで、FRB理事や地区連銀総裁などによる発言機会は週間を通してほぼうかがえず。

そんな今週のドル/円予想レンジは、112.90-115.20円。ドル高・円安については、オファーが少しずつ切り下がっており、足もとは114円後半が最初の抵抗か。抜ければ115円台乗せが意識されそうだが、それでも上値は重そうだ。
対するドル安・円高方向は、前述したように先週安値を含めた113円半ばはなかなか強いサポートで攻防にまずは注目だ。割り込めば、一本調子か否かは別にして113円割れも否定できない。

一転してドルの下値余地拡大、続落にも注意

ドル円日足

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