トルコリラ円見通し 前日の上昇を解消する反落(22/1/17)

1月11日に8.70円まで戻したものの13日には8.20円まで反落し、14日も手掛かり難で小動きのまま持ち合いを抜け出せない状況で週を終えた。

トルコリラ円見通し 前日の上昇を解消する反落(22/1/17)

トルコリラ円見通し 前日の上昇を解消する反落

〇トルコリラ円、1/14は小動きのまま持ち合い状態、1/3高安レンジ9.00から8.13内での推移9日間続く
〇対ドル、小反発したが勢い続かず13リラ台で推移、ドル高ぶり返しでリラ売り圧力増す可能性に注意
〇1/20中銀金融政策会合、現状維持が予想の中心、追加利下げ強行の場合リラ暴落再燃を危惧
〇トルコ中銀、外貨預金への手数料導入延期、リラ預金への転換進まない状況か
〇8.50以下での推移中か一時的に超えても維持できないうちは下向きとする
〇8.50超えからは8.75前後への上昇とその後の反落注意とみる

【概況】

トルコリラ円の1月14日は8.46円から8.30円の取引レンジ、15日早朝の終値は8.44円で前日終値の8.37円からは0.07円の円安リラ高だった。
9月から12月までの4会合連続の利下げ強行により、9月1日高値13.32円から12月20日安値6.17円まで7.15円の円高リラ安となったが、エルドアン大統領によるリラ預金の為替差損補填政策発表から12月23日高値11.14円まで4.97円の円安リラ高で急伸してこの間の暴落幅に対して凡そ7割を戻した。しかし先行き不透明感はぬぐえずに戻り一巡から1月3日安値8.13円まで3.01円の円高リラ安となり、戻り幅の凡そ6割りを削った。
1月3日以降は乱高下も一服となり、8円台を維持しつつも1月3日の高安レンジ(9.00円から8.13円)内での推移が9日間続いている。1月11日に8.70円まで戻したものの13日には8.20円まで反落し、14日も手掛かり難で小動きのまま持ち合いを抜け出せない状況で週を終えた。

【対ドルでは13リラ台での持ち合い続く】

ドル/トルコリラの1月14日は13.64リラから13.44リラの取引レンジ、15日早朝の終値は13.52リラで前日終値の13.56リラからは0.04リラのドル安リラ高だった。
高インフレ下での連続利下げ強行によるリラ暴落で12月20日に18.36リラの史上最安値をつけたところからリラ預金保護政策発表により12月23日高値10.06リラへ反騰するも、リラの買い戻し一巡からは再び下落基調で推移している。
1月10日に13.93リラまで下げた後は新たな安値更新を回避して13日にはドル安局面で13.11リラまで小反発したが、勢いは続かずに13リラ台での持ち合いの様相が続いている。
為替市場全般は米連銀による金融引き締め姿勢を織り込みながら最近はドル安反応で推移してきたが、週末はドル高のぶり返しも見られた。米長期債利回りの上昇が一段と顕著になりドル高がぶり返すとトルコリラに対する売り圧力も再び増す可能性があると注意したい。

【1月20日のトルコ中銀は追加利下げ見送りか】

トルコ中銀は12月16日に4会合連続の利下げで政策金利の週間レポレートを利下げ開始前の19%から14%まで引き下げてきたが、リラ暴落を踏まえてカブジュオール中銀総裁は12月の利下げ後はしばらく様子を見る姿勢を示した。しかしその後もエルドアン大統領による利下げ政策は変わっていない。
12月20日のトルコ中銀金融政策決定会合に対する市場の事前予想は現状維持が中心だが、中には13.50%への利下げ予想もある。
1月13日に発表された週次の外貨準備高はグロスで709.9億ドルだったが、ネットでは79.5憶ドルまで減少している。昨年10月時点では300億ドルを超えていたところからの急減であり、リラ暴落過程における市場介入によるドル売りリラ買いにより急減したと思われ、実際にはすでに枯渇しているレベルにあるのではないかとみられている。昨年11月時点ではトルコ中銀とトルコ国内銀行によるスワップ取引分を除けば外貨準備高はマイナスとの報道もあった。

1月3日に発表された12月のトルコ消費者物価上昇率は前年比で36.08%となり11月の21.31%から一段と加速したが、生産者物価の上昇率も前年比で79.89%まで跳ね上がっている。トルコ中銀や政府は物価上昇は早々に落ち着くとしし、先週末にも財務相が2023年には物価上昇も落ち着くとしているものの、庶民の生活を直撃するインフレ状況にあり、原油相場が高止まりしていることを踏まえると簡単にはインフレの峠も越えられないと懸念される。
仮に1月20日の金融政策決定会合でわずかでも追加利下げを強行する(週間レポレートを据え置いても他の借り入れ金利などを引き下げるなどの可能性もある)場合は無謀な金融政策への市場の答えとしてリラ暴落が再燃する事が危惧される。また現状維持でも利下げ余地を探る姿勢を強調する場合にはリラ売り再開の可能性が高まると思われる。

【トルコ中銀は外貨預金への手数料導入を延期】

リラ預金に対する為替差損の補填政策も国民の信認を得られずに一時的な増加にとどまり、外貨預金からリラ預金への転換は進んでいないとされる。リラ暴落に対するリスクヘッジによる仮想通貨の売買も急増しているとの報道もある。
トルコでは、銀行預金の約3分の2がドルやユーロを中心とする外貨建てであり、トルコ中銀は外貨預金のリラ預金への転換を促進するために金融機関に対する手数料の導入を検討しているとされるが、1月14日時点での手数料導入を延期したと報じられている。
報道ではトルコ中銀がドル建て及びユーロ建て外貨預金からリラ預金への変更率が中銀の求める基準(4月15日までに10%、7月8日までに20%の転換等)に達しない場合には1.5%の手数料を徴収するという制度の導入が計画されていたが、導入を見送ったということはリラ預金への転換が進んでおらず、強制的な徴収に着手する場合には市中銀行と中銀の関係が悪化すること、預金者の外貨預金引き揚げや取り付け騒ぎを招きかねないとの懸念もあるのではないかと推察される。

【中勢のポイント 引き続き1月3日の高安レンジ放れ待ち】

【中勢のポイント 引き続き1月3日の高安レンジ放れ待ち】

トルコリラ円は1月3日の高安レンジ(9.00円から8.13円)内での推移が続いて持ち合いを形成している。
持ち合い放れから次の方向性が見えてくると思われるが、そのきっかけになるのはやはり1月20日のトルコ中銀金融政策決定会合だろう。それまでは新たな材料がでてこなければ持ち合いの範囲で推移しつつ、トルコ中銀の金融政策決定会合から先行きのリラ安不安が優勢になれば持ち合い下放れに入って史上最安値を再び試す流れへ進み、当面のリラ安不安が落ち着けば戻りをもう一度試す流れへ進みやすくなると思われる。

(1)中勢としては、8.13円を下値支持線、9.00円を上値抵抗線とする。
(2)8.50円以下での推移中か、一時的に超えても維持できないうちは下向きとし、8.20円割れからは8.13円試しへ向かい、8.13円割れからは8.00円、7.75円、7.50円、7.00円等を順次試してゆく流れへ進むとみる。7円を割り込む場合は史上最安値更新の可能性も高まると思われるが、その際は5円台後半を目指す可能性も出てくるとみる。
(3)8.50円超えからは8.75円前後への上昇とその後の反落注意とみる。リラ買い材料が新たなに浮上する場合は9.00円超えから9.50円前後へ向かうとみるが、信頼のおける中期的なリラ買い材料でなければ数日の反騰後は再び安値を試す流れへ揺れ返しとなるのではないかとみる。

【当面の主な予定】

1月17日
 17:00 12月 財政収支 (11月 320億リラ)
1月20日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合
 週間レポレート (現行 14.0%、予想 14.0%)
 翌日物貸出金利 (現行 15.5%)、 翌日物借入金利 (現行 12.5%)
    後期流動性貸出金利 (現行 18.5%)
 20:30 週次外貨準備高 グロス(1/14時点 709.9億ドル)
 20:30 週次外貨準備高 ネット(1/14時点 79.5億ドル)
1月21日
 16:00 1月 消費者信頼感 (12月 68.9)
1月25日
 16:00 1月 製造業景況感 (12月 106.1)
 16:00 1月 設備稼働率 (12月 78.7%)


注:ポイント要約は編集部

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