ドル安リラ高に押し上げられるも1月3日の高安レンジ内
〇トルコリラ円、早朝終値8.64で前日から0.29円の円安リラ高、3日のレンジ内での推移続く
〇対ドルも、米消費者物価上昇率発表によるドル全面安から買い戻され13リラ台でのもみ合い続く
〇トルコの消費者物価上昇率、市場予想では1月に40%、先行きは50%超えの可能性も指摘される
〇大統領の利下げ継続方針とリラ預金保護政策ではインフレ進行にはあがなえないとの懸念強まる
〇20日にトルコ中銀MPC、総裁は様子見姿勢強調だが連続利下げ強行ならリラ売り再燃警戒
〇8.70超えからは8.80前後を試すとみるが、8.80以上は反落警戒
〇8.50割れからは上昇一巡による下落期入りとみて8.40前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の1月12日は8.70円から8.22円の取引レンジ、13日早朝の終値は8.64円で前日終値の8.35円からは0.29円の円安リラ高となった。
12月20日に6.17円まで史上最安値を更新し、12月23日に11.14円まで反騰してから再び失速したものの1月3日に8.13円まで下げた後は下げ渋りの揉み合いとなり、1月3日の高安レンジ内での推移が続いている。
1月12日も1月3日の高安レンジ(9.00円から8.13円)の範囲にとどまっているが、米消費者物価の発表を通過してドル全面安となる中でドル円が114円台前半へ急落したもののドル安リラ高が勝ったことでトルコリラ円も円高圧力を超えて上昇した。
【対ドルでは13リラ台での揉み合い続く】
ドル/トルコリラの1月12日は13.84リラから13.13リラの取引レンジ、13日早朝の終値は13.18リラで前日終値の13.79リラからは0.61リラのドル安リラ高となった。
世界銀行が2021年のトルコの年間成長率が9.5%に達したとしたものの2022年については2.0%、2023年は3.0%へと大幅に減速した状況に陥るとしたことは、高インフレ下での利下げやリラ預金の為替差損補填政策等の通常では考えられない金融政策をとり続けていることへの先行き不安も踏まえてリラ売り材料ではあったが、12日は米消費者物価上昇率の発表からドル全面安の様相となったことでトルコリラもドル安を背景に買い戻されたようだ。
【ドル全面安】
1月12日夜に12月の米消費者物価指数の発表があったが、概ね市場予想通りとして発表後はドル全面安の反応となった。
米12月CPI上昇率は全体の前年同月比が7.0%で市場予想通りだったが11月の6.8%から伸びて1982年6月以来39年半ぶりの高水準となり、コア指数も前年同月比で5.5%上昇となり11月の4.9%から伸びて市場予想の5.4%をわずかに上回って1991年2月以来凡そ30年ぶりの高水準となった。
インフレ高進が続く中で米連銀による今年3回の利上げや総資産の圧縮による金融引き締め姿勢が一段と強まると思われるが、1月6日早朝のFOMC議事録から7日夜の米雇用統計における失業率改善での米長期債利回り上昇とドル高への反応も一巡、11日のパウエル米連銀議長再任に関する上院公聴会発言でも新たな内容は無かったとして雇用統計通過後のドル安基調が続いている。
ドル指数は1月12日に95.0ポイントを割り込むところまで続落して11月以降の96.00ポイントを挟んだ高値圏持ち合いから転落した。ドル指数と逆相関となるユーロドルは1.145ドルまで上昇して11月後半からの1.130ドルを挟んだ安値圏持ち合いから上放れしてきた。6月1日から下落基調にあったポンドドルも12月8日安値を底として反騰してきたが、11日と12日の連騰で勢い付いている。豪ドル米ドルも12月3日以降の高値を更新、南アランドも11月26日以降の高値を更新しており、ドル全面安の様相となっている。こうしたドル安感がトルコリラにも影響して1月12日の対ドルでのリラ高となった印象だ。
【1月20日のトルコ中銀MPCも迫る】
エルドアン大統領は1月12日の議会演説において、「金融システムを阻害する恐れのある外国の金融ツールを制御下に置いた」「トルコ政府はこうした攻撃から経済を守っている」と述べた。また「インフレ急伸はトルコ経済の実態を反映していない」が「不当な物価上昇の重しは近く緩和する」と述べた。
トルコの消費者物価上昇率は12月に全体の前年同月比が36.08%、コア指数でも31.9%へ急伸しており、市場予想では1月には40%超え、先行きは50%を超える可能性も指摘されている。原油や天然ガスの高騰も続いている中で、エルドアン大統領による利下げ継続方針とリラ預金保護政策ではインフレ進行にはあがなえないのだろうとの懸念も強まるところだ。
1月20日に次回のトルコ中銀MPC(金融政策委員会)がある。カブジュオール中銀総裁は12月の利上げ後はしばらく様子を見る姿勢を強調していたが、果たしてそれをエルドアン大統領が受忍できるのかどうか、市場の事前予想はまだまとまっていないものの、連続利下げが再び強行されるようだとリラ売りの再燃となりかねないと警戒しておきたい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月3日夜高値からの下落基調が続いてきたが、1月10日夜安値からの下げ渋りが続いたために12日午前時点では直近のサイクルボトムを10日夜安値として底割れ回避のうちは13日にかけての間への上昇余地ありとした。
1月12日深夜に8.70円台到達まで反騰した後も8.60円台を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、8.50円割れからは弱気サイクル入りとして13日夜から17日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月12日夜の急伸で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いた。その後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパンが悪化するところからは下げ再開に入るとみる。
60分足の相対力指数は1月12日夜の急伸で80ポイント台まで上昇してから反落しているが、50ポイント以上での推移中はまだ上昇余地ありとみる。ただし相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は下げ再開を警戒し、50ポイント割れからは下げ再開に入り30ポイント割れを目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)8.50円を下値支持線、8.70円を上値抵抗線とする。
(2)8.50円以上での推移中はまだ上昇余地ありとし、8.70円超えからは8.80円前後(8.75円から8.82円)を試すとみるが、8.80円以上は反落警戒とする。
(3)8.50円割れからは上昇一巡による下落期入りとみて8.40円前後への下落を想定する。8.40円以下は反騰注意とするが、8.50円以下での推移が続く場合は14日の日中も安値試しへ向かい8.30円台前半(8.35円から8.30円)を目指すとみる。
【当面の主な予定】
1月13日
16:00 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 0.6%)
16:00 11月 鉱工業生産 前年比 (10月 8.5%)
16:00 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.9%)
16:00 11月 小売売上高 前年比 (10月 16.2%)
20:30 週次 外貨準備高(グロス) 1/7時点 (12/31時点 725.6億ドル)
20:30 週次 外貨準備高(ネット) 1/7時点 (12/31時点 83.4億ドル)
1月17日
17:00 12月 財政収支 (11月 320億リラ)
1月20日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 14.0%)
20:30 週次外貨準備高 (1/14時点)
注:ポイント要約は編集部
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