『CPI加速でリラ売り再開。通貨安防止策の効果は限定的か』
〇今週のトルコ円、週初8.21-9.09レンジで乱高下の後週末にかけては8.34前後で上値重い
〇中銀追加利下げ観測、政府の預金保護措置への懐疑が背景
〇トルコ円、心理的節目8.00割れをうかがう動きテクニカルの地合い弱い
〇ファンダメンタルズもトルコ安連想させる材料多い
〇トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.00ー9.00
今週のレビュー(1/3−1/7)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初8.64円で寄り付いた後、年明け早々に週間安値8.21円と週間高値9.09円を共に記録する乱高下を繰り広げました。しかし、@注目されたトルコ12月消費者物価指数(結果36.08%、予想30.60%、※2002年9月以来の大幅な伸び率)及び、Aトルコ12月生産者物価指数(結果79.89%、予想68.10%)が市場予想を大幅に上回る結果を示すと、Bトルコ中銀による追加利下げ観測や、C昨年より始まったリラ建て預金保護措置への懐疑的な見方、D上記BCの副作用(連続利下げや預金保護措置にも係わらず、預金金利、貸出金利、国債利回りが全て上昇)、Eトルコ政府による「電力・天然ガス価格の引き上げ」措置(トルコ経済への下押し懸念)、Fトルコ政府による輸出企業に対する新たな資本規制の法令発布(米ドルやユーロ、英ポンドなどの外貨で支払いを受けた場合、当該収入の4分1をトルコリラに交換することを求める法令)、Gトルコ中銀の外貨準備減少などが重石となり、本稿執筆時点(日本時間1/8午前5時00分現在)では8.34円前後で上値重く推移しております。
来週の見通し(1/10−1/14)
トルコリラの対円相場は昨年12/23に一時11.25円まで急伸するも、足元では再び心理的節目8.00円の下方ブレイクを伺う水準まで下げ幅を広げつつあります。ローソク足が全てのサポートライン(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆するパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となっております。目先は昨年12/20に記録した史上最安値6.17円に向けて下げ幅を広げるシナリオが想定されます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@エルドアン大統領による低金利政策の長期化懸念(中銀は一般的にインフレを利上げで抑制する傾向にあるが、トルコはエルドアン大統領の独自理論のもと、インフレを利下げで抑制する方針を示している。事実、トルコ中銀はインフレ進行にもかかわらず、昨年9月以降、政策金利を500bp引き下げ済み)や、A米FRBによるタカ派転換(早ければ3月に利上げに踏み切る可能性あり→新興国から米国への資金流出懸念)、Bトルコ経済の先行き不透明感(深刻なスタグフレーション懸念)、Cトルコ中銀による通貨防衛能力の脆弱さ(1/6に公表された昨年末時点の外貨準備は約83億4000万ドルと2002年以来の低水準)、D資本政策の副作用(預金保護措置などの手段を打ち出すも全て裏目に出ている状態)など、トルコリラ円相場の続落を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(心理的節目8.00円を割り込めば、史上最安値6.17円まで一気に急落する恐れあり)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.00ー9.00
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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