『ドル円は一時5年ぶり高値圏へ急伸。ドル高地合いの継続を想定』
〇今週のドル円、1/4にかけて約5年ぶり高値116.36まで上昇後、反落115.60前後で推移
〇FOMC議事録のタカ派姿勢を受けた株価の軟調、ISM指数、雇用統計等米指標の不冴えが重石
〇ユーロドル、週末にかけ米指標の不冴え等で1.1360前後まで反発
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、三役好転等も成立地合いの強さ印象付けるチャート形状
〇ファンダメンタルズも、金利上昇の株安への波及は限定的とみる
〇来週はアップサイドリスクに注意を要する1週間か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):114.75ー117.00、(EURUSD):1.1200−1.1425
今週のレビュー(1/3−1/7)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初115.10で寄り付いた後、@中国恒大集団の株式が香港市場で売買停止とされたことや、A新型コロナウイルスの感染拡大懸念、B上記@Aを背景としたリスク回避の円買い圧力が重石となり、週明け早々に週間安値114.96まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線に続落を阻まれると、C日米金融政策格差を背景としたドル買い・円売りや、D株高を背景としたリスク選好の円売り圧力(大発会の日経平均株価が急上昇。欧米株もクリスマスラリーが継続)、E中国12月財新製造業PMIの力強い数字(結果50.9、予想50.0、前回49.9)、F昨年11/24に記録した約4年10ヵ月ぶり高値115.53を上抜けたことに伴うロスカット(逆張り勢による損失覚悟の買い戻し)が支援材料となり、翌1/4にかけて、2017年1月以来、約5年ぶり高値となる116.36まで急伸しました。
もっとも、その後は、G米12月ISM製造業景況指数(結果58.7、予想60.0、前回61.1)が市場予想を下回ったことや、H岸田首相による「感染再拡大して病床の逼迫が見込まれるなら、行動制限強化も機動的に考えなければならない」とのネガティブ発言、IFOMC議事要旨のタカ派的な結果(高インフレへの対応に向けて、予想より早期の利上げと、保有資産全体の縮小が必要になる可能性があるとの見解)を受けたリスク回避ムード(米長期金利急上昇→リスクアセット下落→リスク回避の円買い)、J米12月非農業部門雇用者数(結果19.9万人、予想40.0万人)の市場予想を下回る結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間1/8午前5時10分現在)では、115.60前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1365で寄り付いた後、早々に週間高値1.1381まで上昇しました。しかし、昨年末12/31に記録した直近高値1.1387をバックに伸び悩むと、@一目均衡表雲下限を背にした戻り売り圧力や、A上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り、B欧米金融政策格差を背景としたユーロ売り・ドル買い圧力、C欧州圏における新型コロナウイルス感染拡大リスク、D米金利急上昇に伴うドル買い圧力などが重石となり、翌1/4にかけて、週間安値1.1273まで反落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、E米12月ISM製造業景況指数の冴えない結果(ドル売り)や、Fドルロングの巻き戻し、Gユーロ圏11月生産者物価指数(結果23.7%、予想22.9%、※前年同月比)及び、Hドイツ12月消費者物価指数(結果5.3%、予想5.1%、※前年同月比)の伸び率加速、I米12月非農業部門雇用者数の市場予想を下回る結果が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間1/8午前5時10分現在)では、1.1360前後で推移しております。
来週の見通し(1/10−1/14)
<ドル円相場>
ドル円は11/30に記録した安値112.53をボトムに反発に転じると、今週前半にかけて、2017年1月以来、約5年ぶり高値となる116.36まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線やボリンジャーミッドバンドを上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や強気のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、米早期利上げ観測の高まり(今週発表された米FOMC議事要旨では、高インフレへの対応に向けて、予想より早期の利上げと、保有資産全体の縮小が必要になる可能性があるとのタカ派的な見解が示された)や、本邦の金融緩和長期化観測(米国とは対象的に日本は金融緩和の長期化が見込まれると共に、黒田総裁は昨年12月の日銀金融政策決定会合後の記者会見で更なる円安を容認)など、ドル高・円安トレンドの継続を示唆する材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(※市場では、米早期利上げ観測という最大のテーマが、「日米金利差拡大→ドル円上昇」といった経路で進むのか、「金利上昇を嫌気した株安→リスク回避のドル円下落」の経路で進むのか、見方が二分していますが、当方では前者の見方を支持。株式市場は既に金融相場から業績相場に移行済みである為、金利上昇→株安の波及経路は限定的なものに留まると予想)。
尚、来週は、1/12に予定されている米12月消費者物価指数や、1/14の米12月小売売上高に加えて、米当局者発言(クリーブランド連銀メスター総裁、カンザスシティ連銀ジョージ総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、ブレイナードFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁、シカゴ連銀エバンス総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁など)に注目が集まります。米消費者物価指数および米小売売上高が市場予想を上回る場合には、「米インフレ加速→米早期利上げ観測→米長期金利上昇→米ドル高」の経路と、「米経済回復期待→米株上昇→リスク選好の円売り」の経路が組み合わさることで、ドル円には一段と強い上昇圧力が加わるものと推察されます。また、米当局者がタカ派的なスタンスに徹する場合にも、米金利上昇を通じてドル円には上昇圧力が加わると考えられるため、来週はアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):114.75ー117.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は安値圏で方向感に欠ける値動きが続いております。但し、上方から分厚い雲が垂れ下がってくること、強い売りシグナルを示唆する弱気のパーフェクトオーダーが続いていることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(余程強いユーロ買い材料が出てこない限り、上値余地は限定的)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米金融政策の方向性の違い(早期利上げが織り込まれつつある米国と、金融緩和の長期化が見込まれる欧州との金融政策格差)や、A欧州経済を巡る先行き不透明感(欧州圏における新型コロナウイルス感染拡大懸念→連日で過去最多の感染者数を記録)、Bウクライナを巡る地政学的リスクなど、ユーロドル相場の上値を抑制する材料が揃っています(パンデミック緊急購入プログラムの買い入れペース鈍化を受けて欧州債利回りには上昇圧力が加わりつつあるものの、米債利回りの上昇幅を比べると軽微に留まるため、ユーロドルには緩やかな下落圧力が加わる見通し)。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は、ユーロ圏の経済イベントに乏しいものの、1/10の米露2国間安全保障協議、1/12のNATOロシア会談、1/13の欧州安全保障協力機構会合など、ウクライナ・ロシア情勢に係るイベントが複数予定されております。これらのイベントを通過しても尚、ウクライナを巡る緊張状態が緩和されない場合には、地政学的リスクの高まりを通じて、ユーロドルには強い下押し圧力が加わる展開が予想されるため、来週はややダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1200−1.1425
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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