ドル高再トライに黄信号、上げ渋りも(週報1月第2週)

先週のドル/円相場もドルがさらに続伸。これで週足は5週続けての陽線引けとなった。

ドル高再トライに黄信号、上げ渋りも(週報1月第2週)

ドル高再トライに黄信号、上げ渋りも

〇先週のドル円、安値114.95以降一気に116円台へ、高値116.35示現後上げ渋り
〇調整後再び上方向トライとの見方有力も、米雇用統計冴えず115円半ばへ値を下げる
〇昨年FOMC議事要旨受けドル買い反応優勢だったが、安心感わずかに後退か
〇今週は12月米消費者物価指数、同小売売上高、パウエルFRB議長指名承認公聴会予定
〇今週のドル/円予想レンジは114.50-116.5、116円前後が最初の抵抗

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場もドルがさらに続伸。これで週足は5週続けての陽線引けとなった。週のザラ場ベースでは一時116円台を示現し、昨年高値を早々に上抜けている。

前週末は、世界の複数要人による年頭所感やメッセージが伝えられ、岸田首相からは「オミクロン株への感染拡大に対応」との意欲が伝えられたほか、「本格的に首脳外交をスタートさせる」と宣言も聞かれていた。
そうした状況下、ドル/円は115.10-15円で寄り付いたのち示現した114.94円が週間のドル安値に。以降はドルが買い進められると、一気に116円台まで値を上げている。しかしドル買いは続かず、116.35円の高値示現後は上げ渋り。注目されていた週末発表の米雇用統計が冴えない内容となったこともあり、ドルは小緩むと115円半ばへと値を下げ、週末NYはそのまま大引け越週となった。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「新型コロナ」と「米ファンダメンタルズと金融政策」について。
前者は、週間を通し好悪両サイドの報道が目に付き、市場も判断の迷う結果に。「好」の部分を指摘すれば、英保健安全保障庁が「オミクロン株の入院リスクはデルタ株の3分の1程度」とした分析結果を公表するなど、以前から指摘されていた「弱毒性」との見方がさらに明らかになったことだろう。対して「悪」の部分は、やはりその感染力の高さ。ロイターは自社の集計として、「米国の一日当たりコロナ新規感染は100万人に達した」と指摘し、物議を醸す局面も。仮に弱毒性であっても、感染者数の多さから医療逼迫への懸念などが取り沙汰され、危機意識を抱く向きも少なくなかった。

対して後者は、週央5日に発表された昨年12月14-15日に実施したFOMC議事要旨で、「急激なインフレの懸念から早期利上げをはじめ金融引き締めの加速が議論されていた」ことが明らかに。また「22年中にゼロ金利政策を解除し、利上げを3回する見通し」も示されており、予想よりもかなり強気な内容。さらに、同日発表されたADP雇用統計が予想を上回る好数字となったこともあり、為替市場でもドル買いの反応が優勢となっていた。しかし、週末に発表された米雇用統計・非農業部門雇用者数は、市場予想の半分程度にとどまるなど散々な数字。それが市場の強気ムードに冷や水を浴びせ、過熱感を殺ぐと調整のドル売りが断続的に観測されている。

<< 今週の見通し >>

先週4日に高値116.35円を示現後のドル/円相場について、筆者をはじめとする多くの市場筋の見方は「ドル高基調継続のなかの時間調整」−−といったもの。つまり、足もとの調整を経たのちは再び上方向をトライするとの見方が有力だった。しかし、前述したように先週末に発表された米雇用統計が予想外ともいえる悪数字になったことで、市場のドル買い安心感がわずかに後退したか。今週は、次の方向性を決定づける大事な1週間となりそうで、動静をしっかりと見極めたいところだ。

「ゼロ金利政策継続」の日本に対し、先週発表されたFOMC議事録要旨にも示されたような強気とも言える米利上げスタンスからすると、日本円を基本的に買い進めにくいという状況に変化はない。ただ、新型コロナの感染拡大が米ファンダメンタルズや雇用情勢、延いては金融政策へも影響を及ぼす危険性も取り沙汰されていることは気掛かり。ちなみに、米国では新型コロナとともにインフルエンザも流行っているとされ、医療逼迫などがさらに顕在化するようだと、たとえ一時的にせよドル売りが進む可能性も否定できない。

テクニカルに見た場合、ドル/円は「116.35円示現でドルの高値追い一服も時間調整」との見方−−。つまり、足もとの調整を経たのちは再び上方向をトライするとの見方が有力だったが、週末の下押しでそうした見通しに疑義が生じている。
なお、移動平均の21日線は114円台後半に位置。一連のドル高がはじまった昨年11月末安値112.54円を起点とした上げ幅のフィボナッチにおける38.2%押しは114.90円レベルだ。ドルが続落した場合には114円台後半の攻防に要注意。

材料的に見た場合、中長期的には、開催まで1ヵ月を切るなか北京五輪への各種警戒感が依然根強い「中国情勢」、引き続き各国の感染拡大状況に一喜一憂しそうな「新型コロナ・オミクロン株問題」、「原油供給問題」−−が注視されている。
そうしたなか今週は、12月の消費者物価指数や同小売売上高といった重要な米経済指標が発表されるほか、11日には上院銀行委にて「パウエルFRB議長の指名承認公聴会」が開催される予定だ。また、それ以外でも米要人による講演など発言機会は週間を通して多く、場合によっては波乱要因となりかねないだろう。

そんな今週のドル/円予想レンジは、114.50-116.50円。ドル高・円安については、先週割り込んできた116円前後が最初の抵抗で、上抜けると116.35円を目指す展開か。
対するドル安・円高方向は、115.20円レベルや115円などにも弱いサポートがあるうえ、割り込んでも前記したように21日線などが位置する114円台後半はなかなか強いサポートだ。大崩れするイメージには依然乏しい。

ドル高再トライに黄信号、上げ渋りも

ドル円日足

注:ポイント要約は編集部

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