終値ベースで5連騰、週間で55%の暴騰
〇トルコリラ円、25日早朝終値は10.74円で前日終値から0.99円の円安リラ高に
〇24日は取引時間中の高値更新には至らなかったものの終値ベースでは5連騰
〇対ドルも25日早朝終値10.64リラで前日から0.44リラのドル安リラ高、5連騰に
〇大統領は24日「リラ預金保護措置で外為市場のバブルを崩壊させた」と述べる
〇国の為替差損への損失補填は国家財政が破綻しないことが絶対条件、しばらく様子見必要
〇9.80円以上での推移中は上昇余地あり、11.14円超えからは12円試しへ向かうとみる
〇9.80円割れからは下向き、9.12円割れからは8円台前半を試す流れとみる
【概況】
トルコリラ円の12月24日は10.97円から9.12円の取引レンジ、25日早朝の終値は10.74円で前日終値の9.75円からは0.99円の円安リラ高となった。
12月16日のトルコ中銀による高インフレ下での4会合連続利下げ強行を挟んで12月20日には6.17円の史上最安値へと暴落が続いたが、12月20日にエルドアン大統領がリラ預金の為替差損を補填すると表明したことからリラ買いが殺到、それまでの暴落から一転して暴騰商状となり、12月20日に前日比1.48円、21日に0.76円、22日に0.28円、23日に0.30円と円安リラ高が続き、23日には11.14円までこの間の高値を伸ばした。24日は取引時間中の高値更新には至らなかったものの終値ベースでは5連騰となった。
週間では前週末12月17日終値6.92円から24日終値まで3.82円の円安リラ高、上昇率は55%高となった。
今年2月16日高値15.26円から12月20日安値6.17円まで9.09円の円高リラ安だったところ、12月23日高値までの戻り幅は4.97円となり凡そ54.7%の反騰率であり、10か月の下げ幅に対して5日間で半値強を戻したことになる。
【対ドルでも5日間の連騰】
ドル/トルコリラの12月24日は12.09リラから10.30リラの取引レンジ、25日早朝の終値は10.64リラで前日終値の11.08リラからは0.44リラのドル安リラ高となった。
12月20日に18.36リラまで暴落的な下落となり史上最安値大幅に更新したが、大統領による損失補填方針発表から急騰へと転じて12月23日には10.05リラまで高値を伸ばした。23日夜に発表された週次外貨準備高が大幅に減少したことでいったん売られたものの24日深夜に12リラを付けたところから再び買い戻されて最高値に迫った。
【外為市場のバブルを1日で崩壊させたと大統領は勝利宣言】
エルドアン大統領は12月24日、リラ預金の保護措置を打ち出したことにより外為市場のバブルを崩壊させたと演説した。「反対の声がある中で金利引き下げによる新しい経済モデルにより外為市場のバブルを1日で崩壊させた」「トルコ国内経済は来年夏には異なる(良好な)環境になる」とし、国内企業に対しては「リラ高を反映して値下げを期待する。値下げしない企業は政府が追跡する」と述べた。
大統領はまた、リラ防衛預金は24日時点で238億リラ(22億ドル)に膨らんだとし、リラの反騰によりインフレ率は今後低下すると述べた。国民に対して為替差損の損失補填政策で守られるリラを信用してもらいたいと強調した。
国が自国通貨の為替差損について損失補填するなどということは前代未聞の方策ではあるが、トルコの投資家と預金者にとっては国家の損失補填付きのドル売り・リラ買い取引であり、リラ高が継続すれば高水準の預金金利が手に入り、リラ安になっても損失は限定されることになるのだからリラ預金が殺到するのもうなづけるが、あくまでも国家財政が破綻しないことが絶対条件だろう。
外貨準備高が枯渇すれば市場でのリラ買いドル売り介入は難しくなり、預金者への損失補填が膨らめば国家財政が窮地に追いやられ、トルコ中銀がリラの増刷に走れば市場の評価は地に落ちることにもなりかねない。またその際には2023年の大統領選挙におけるエルドアン大統領の再選が危うくなるか、強権政治的な反政権勢力への弾圧等が国際問題化する可能性も出てくるかもしれない。しかし国内投資家の総動員によるリラ買いの支えが効けば、リラ高による通貨デフレ効果で高インフレも収まりトルコ景気が力強さを増すことも考えられる。大統領による博打であり、果たしてどこまで国内投資家がついて行けるのか、為替市場としての信用を維持できるのか、もうしばらくは様子を見る必要があるだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月20日夜へ一段安したところからの急騰により21日午前時点からは12月20日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとしてきたが、12月23日夜へ急伸してから1円を大幅に超える急落となったため、24日午前時点では23日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、10.70円超えからは新た強気サイクル入りとした。
12月24日深夜にかけて続落したものの25日早朝に10.70円を超える反騰となったため、20日深夜安値から4日目となる24日深夜安値を直近のサイクルボトムとし強気サイクルに入ったと思われる。高値形成期は28日夜から30日夜にかけての間と想定するが、23日夜高値とのダブルトップに終わる可能性もあると注意し、24日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして29日夜から31日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では12月24日深夜への下落で先行スパンから転落しかけたものの切り返しているため反騰継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開を警戒し、24日深夜安値割れからは下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は12月24日夜の50ポイント割れを切り返しているので上昇再開とみる。50ポイント台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地ありとし、45ポイント割れからは下落期入りとみて20ポイント台への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月24日深夜安値9.12円を下値支持線、12月23日夜高値11.14円を上値抵抗線とする。
(2)9.80円以上での推移中は上昇余地ありとし、11.14円超えからは12円試しへ向かうとみる。11.50円以上は反落注意とするが、10円以上での推移なら28日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)9.80円割れからは下向きとし、9.12円割れからは8円台前半(8.00円から8.50円)を試す流れとみる。8.30円以下は反騰注意とするが、9.30円以下での推移なら28日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12月27日
16:00 12月 製造業景況感 (11月 108.4)
16:00 12月 設備稼働率 (11月 78.1%)
12月30日
16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 99.3)
20:30 週次 外貨準備高 12/24時点 (12/17時点 783.7億ドル)
12月31日
16:00 11月 貿易収支 (10月 -14.4億ドル)
1月03日
16:00 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 3.51%)
16:00 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 21.31%)
16:00 12月 消費者物価コア指数 前月比 (11月 2.8%)
16:00 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 17.6%)
16:00 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 9.99%)
16:00 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 54.62%)
16:00 12月 イスタンブール製造業PMI (11月 52.0)
注:ポイント要約は編集部
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