『政府・中銀による異例の預金保護措置発表でトルコリラは大暴騰』
〇今週のトルコ円、エルドアン大統領の利下げ継続示唆に週明け早々6.17まで下落
〇その後トルコ政府によるリラ預金保護措置発表等に11.25まで暴騰、買い一巡後反落9.77前後で越週
〇トルコ政府はトルコリラのハードカレンシーに対する為替差損を補償、実質的ドルペッグか
〇トルコ政府の預金保護措置、トルコリラ下落の場合には多額の損失補填必要、下落スパイラルの恐れも
〇トルコリラ下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):8.00ー11.00
今週のレビュー(12/20−12/24)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初6.89円で寄り付いた後、@エルドアン大統領による追加利下げを示唆する発言(我々は金利を引き下げている。それ以外のことを期待してはならない)や、A株式市場の軟調推移、B上記Aを背景としたリスク回避ムードが重石となり、週明け早々に史上最安値6.17円まで急落しました。しかし、Cトルコ政府による異例の預金保護措置(ハードカレンシーに対する通貨リラの下げ率が銀行の約束する金利を上回る場合、預金者が被る損失分を政府が補償→実質的な米ドルペッグ)が発表されると、Dネバティ財務相による上記Cの措置の詳細化発表(預金保護措置には全ての金融機関が参加できる。保護される預金の最低金利はトルコ中銀の政策金利。保護される預金期間は、3、6、9、12カ月)や、
Eトルコ中銀による外貨建て預金からリラ建て預金への転換サポート措置(国内居住者で外貨建て預金を保有する人が、リラ建て預金に乗り換える場合に支援を受けられる制度。リラ建て預金の開設日と満期日の為替レートと金利水準を比較した上で、預金者に有利な方が適用される支援措置)、F上記CDEを背景とした大規模ショートカバー、Gトルコ中銀によるアゼルバイジャンとアラブ首長国連邦との通貨スワップ協定を巡る交渉進展期待、H国営銀行による大規模ドル売り介入観測が支援材料となり、週後半にかけて、11/16以来、約1ヶ月半ぶり高値となる11.25円まで暴騰しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、トルコリラは反落し、本稿執筆時点(日本時間12/25午前1時25分現在)では9.77円前後で推移しております。
来週の見通し(12/27−12/31)
トルコリラの対円相場は12/20に記録した史上最安値6.17円をボトムに反発に転じると、週後半にかけて一時11.25円まで暴騰しました(わずか3営業日で82.3%の上昇率)。但し、週末にかけて再
び反落に転じるなど、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(ショートカバー一巡後の反落リスクに要警戒)。ファンダメンタルズ的に見ても、@エルドアン大統領による低金利政策の長期化懸念(同氏は今週、追加利下げの可能性を示唆)や、A米FRBによるタカ派転換(早ければ来年3月に利上げに踏み切る可能性あり)、Bトルコ経済の先行き不透明感(深刻なスタグフレーション懸念)、C実質金利のマイナス幅拡大、
Dトルコ中銀による通貨防衛能力の脆弱さ(外貨準備が乏しいことから、介入余力は限定的)など、トルコリラ円相場の反落を連想させる材料が複数残っています。また、今週の大暴騰の引き金となったトルコ政府・中銀による預金保護措置についても、やむにやまれぬ苦肉の策(将来的にトルコリラが下落した際に、政府・中銀は多額の損失補填を迫られる危険性あり→将来的な財政悪化懸念→トルコリラ下落)と言えることから、トルコリラを下支えする効果は限定的と判断できます。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(TRYJPY):8.00ー11.00
注:ポイント要約は編集部
※来週(1/1)のトルコリラ週報は休載とさせていただきます。次回は1/8に再開いたします。
トルコ円日足
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