レンジ上抜け、ドル高基調は継続か(週報12月第4週)

先週のドル/円相場はドルが続伸。いわゆるクリスマス週で商いは全般的に薄いなか、週足は3週続けての陽線引けを記録している。

レンジ上抜け、ドル高基調は継続か(週報12月第4週)

レンジ上抜け、ドル高基調は継続か

〇先週のドル円、週間高値114.51示現、週末NYも高値圏114.30-35で取引終え越週
〇基本的なリスクはドル高方向、115円台回復すれば年初来高値115.52までの戻り早い可能性も
〇一連の黒田日銀総裁発言で円売りに安心感、ドル円底堅く推移との見方有力 
〇今週は12月リッチモンド連銀製造業指数等発表予定、材料少なめで需給要因警戒する声も
〇今週のドル/円予想レンジは113.50-115.50、114.51が最初の抵抗

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが続伸。いわゆるクリスマス週で商いは全般的に薄いなか、週足は3週続けての陽線引けを記録している。

前週末は、デンマークが「オミクロン感染抑制に向け新規制導入」を明らかにするなど、依然として新型コロナの感染拡大が懸念されるなか、英国のブレグジッド交渉責任者が辞任を発表。様々な憶測を呼んでいたようだ。
そうした状況下、ドル/円は113.65-70円で寄り付いたのち、当初はドル売り優勢。週間安値である113.33円へと小幅に値を崩している。しかし切り返すと、その後は逆にドル堅調裡。週末にかけてじわじわと下値を切り上げる展開で、結果的に1円以上も値を上げた週間高値の114.51円を示現。週末NYも、そのまま高値圏の114.30-35円で取引を終え越週となった。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「新型コロナ」と「トルコリラ相場」について。
前者は、WHOの欧州地域事務局長が、欧州におけるオミクロン株について「新たな嵐が迫っている」と表現したうえで警告を発するなど、欧州を中心とした感染拡大は依然として危険な状態。また、米国でも「テキサス州で米国初のオミクロン株感染者の死亡を確認」と伝えられたほか、自身は陰性だったが、バイデン米大統領が「コロナ感染判明の職員と先週接触」ことが明らかになるなど、何があっても不思議はないのかもしれない。ただ、その一方で英保健当局は「オミクロン株、デルタ株より入院リスク最大7割程度低い」とし、弱毒性の可能性を示唆。若干の安心感を醸していたようだ。

対して後者は、前週末に「トルコのエルドアン大統領が利下げ継続を表明した」こともあり、先週は週明けからリラ安が進行し、対円で一時6円割れを意識するレベルまで軟化。しかし、そののちエルドアン氏が「リラ建て預金の価値を政府が保全する」と表明したことで、流れが一変した。対円やドルで急騰する展開となり、対円ではわずか数時間で11円台まで80%ほどの「暴騰」も記録している。その後も紆余曲折をたどったが、全般的には小じっかり。10円台半ばで週末NYを大引けていた。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円相場は、過去2週間程度推移していたレンジ上限の114.27円を上抜け114.51円まで一時値を上げている。基本的なリスクはドル高方向にバイアスが掛かりそうで、今週さらなるドル高進行を見込む向きも少なくない。ちなみに、フィボナッチの観点では高値115.52円を起点とした下げ幅の61.8%戻し114.40円レベルをすでに上抜けており、次のターゲットは76.4%戻しの114.80-85円。それも超えれば、いよいよ115円台乗せも。

日米欧英など主要国の金融政策を考えた場合、日本の金融政策は先進国のなかで異質な存在。米国などが金利引き上げに向けて動き始めるなか、黒田日銀総裁は先週も講演で、「現在の強力な緩和を粘り強く続けるのが基本だ」との見解を示すなど、引き続き独自のスタイルを貫いている。「金利差」が市場決定要因のすべてではないものの、やはり円は積極的に買い進めにくいと言わざるを得ない。また、黒田氏は先週さらに、「円安は基本的にプラスの効果が大きい」とも述べており、さらなる円安進行も容認するかのようなコメントを発していた。一連の黒田発言が円売り安心感を醸している感も否めず、年末年始の薄商いのなかドル/円は底堅く推移するとの見方が有力だ。

テクニカルに見た場合、先週のドル/円は一時114.51円まで上昇するなど、レンジを上抜け。薄商いのなか超えてきたというところだけが気掛かりだが、基本的なリスクはドル高方向で続伸には注意を払いたいところだ。115円台を回復すれば、年初来高値115.52円までの戻りは意外と早いのかもしれない。それに対するサポートは少し遠のいたものの、かつてのレンジ下限に当たる113.15円となりそう。

材料的に見た場合、中長期的には、米国を中心とした軋轢は来年も市場の波乱要因となりそうな「中国情勢」、クリスマス明けとなる今週の感染拡大が如何なるものか警戒感も強い「新型コロナ・オミクロン株問題」、「原油供給問題」−−が注視されている。
そうしたなか今週は、12月のリッチモンド連銀製造業指数や同シカゴ購買部協会景気指数といった米経済指標が発表されるものの、総じていえば週間を通し材料は少なめ。またクリスマス明け、ならびに週末にかけ年末年始を迎えることで、材料よりも需給要因などを警戒する声も聞かれている。

そんな今週のドル/円予想レンジは、113.50-115.50円。ドル高・円安については、まず先週高値の114.51円が最初の抵抗。上抜けた場合にはフィボナッチを参考にした114.80-85円がターゲットで、それも超えればいよいよ115円台へ。
対するドル安・円高方向は、114円前後などにも弱いサポートが位置しており、下値はかなり堅そう。また割り込んでも前回安値113.15円はかなり強いサポートで、大崩れする展開は予想しにくい。

レンジ上抜け、ドル高基調は継続か

ドル円日足


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