トルコリラ円見通し 大統領の為替差損補償発言からの急騰後も高値圏を維持(21/12/23)

トルコリラ円の12月22日は9.48円から8.77円の取引レンジ、23日早朝終値は9.45円で前日終値の9.17円からは0.28円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し 大統領の為替差損補償発言からの急騰後も高値圏を維持(21/12/23)

大統領の為替差損補償発言からの急騰後も高値圏を維持

〇トルコリラ円、前日終値から0.28円の円安リラ高、20日夜の大統領発言から3日間の暴騰
〇対ドルでも終値ベースでは3連騰だが暴騰商状はやや一服、新たな高値更新には至らず
〇前代未聞の国家による損失補填、リラ暴落となればリラ預金の実質的損失も拡大しかねない
〇トルコのイスタンブール100株価指数は12/22も前日比4.64%安と大幅続落
〇損失補填問題への不安心理が優勢となれば再びリラ売りが仕掛けられる可能性も
〇9.00以上での推移中は高値波乱余地ありとし、9.71超えからは10.00試しを想定
〇8.30以下は反騰注意とするが急落商状発生の場合は8.00前後試しへ下値目途を引き下げる

【概況】

トルコリラ円の12月22日は9.48円から8.77円の取引レンジ、23日早朝終値は9.45円で前日終値の9.17円からは0.28円の円安リラ高となった。
高インフレ下における4会合連続の利下げ強行から12月20日には6.17円まで暴落的な下げが続いてきたが、20日夜にエルドアン大統領がリラ預金に対する為替評価損を損失補填するとしたことでリラ買いが殺到、20日に前日比1.48円の円安リラ高、21日に0.77円の円安リラ高と暴騰型の上昇となり21日高値では9.71円を付けた。ベンダーによっては10円台も見られたが、11月後半からの凡そ1か月にわたる歴史的暴落を3日間の暴騰で一挙に解消した。
12月22日も9.0円を割り込んだところは買い戻されており、日足は3日連続の大陽線となり終値ベースで3連騰となった。

【対ドルでも大幅連騰】

ドル/トルコリラの12月22日は12.66リラから11.90リラの取引レンジ、23日早朝終値は11.98リラで前日終値の12.43リラからは0.45リラのドル安リラ高となった。
12月20日に18.36リラまで史上最安値を大幅に更新して底の見えない暴落に陥っていたが、エルドアン大統領によるリラ預金の為替差損の補填方針発表から急騰に転じ12月20日の当日安値18.36リラから高値13.50リラまで1日の上昇幅としては歴史的な大暴騰となった。21日は11.47リラまで高値を切り上げ、その後は暴騰商状もやや一服となり22日は新たな高値更新には至らなかったものの終値ベースでは3連騰となった。

【リラ預金損失補填騒動、トルコ株は暴落続く】

エルドアン大統領が12月20日にリラ預金における為替差損を補填すると表明したことからトルコリラは通貨危機的な大暴落から歴史的な急騰へと転じた。
12月21日にトルコ財務省は「満期が3か月から12か月のリラ建て預金についてはトルコ中銀の政策金利を適用する新たな保護措置を導入する」とし、リラの外貨換算レートと預金利回りの差を顧客の預金口座に入金し、源泉徴収も行わないとした。
国家による損失補填は前代未聞だが、投資家にとってはリラ預金がドル売り・リラ買いの実質的な為替取引となり、対ドルでリラが一段安となっても国家が損失補填し、リラ高が続くなら現在の政策金利でも14%という高金利を享受できることとなる。問題はその実効性であり、リラ高が続けばこの問題でのトルコ国家財政への影響はないが、リラ安が続けば国家財政の破綻リスクも生じる。また国家が損失補填を継続できなくなるようなリラ暴落となればリラ預金の実質的損失も拡大しかねない。大統領による強引で奇想天外な博打ともいえる。

トルコのイスタンブール100株価指数は12月22日も前日比4.64%安と大幅続落した。
12月16日の利下げ決定までの間はリラ安によるかさ上げ効果でリラ暴落の裏返しにより連日の大上昇となっていたが、リラ暴落が一段と進んだことと先行きの利下げ継続姿勢強調から市場不安が増して12月17日に前日比8.52%安の暴落商状となり、20日に同1.35%安、21日に7.99%安と暴落が続いている。サーキットブレイカーも何度も発動されている。
リラ預金に対する為替差損が補填されるとしてリラ安からリラ高へと転じたことで、今度はリラ高による通貨デフレ圧力が急激に強まったために株安となっている側面もあるが、リラ預金が損失補填されたとしてもトルコ株が損失補填されることにはならないため、金融市場の先行き不安を反映した暴落と思われる。また株売りによる現金化からリラ預金へという流れも考えられるところだ。
当面は損失補填問題への期待と不安が入り混じる状況とすれば、不安心理が優勢となれば再びリラ売りが仕掛けられる可能性もあるところとして注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月13日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして16日夜から20日夜にかけての間への下落を想定してきたが、12月20日夜へ一段安したところからの急騰により21日午前時点では12月20日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は13日深夜高値を基準とすれば20日深夜にかけての間と想定されるので既に反落警戒期にあるとしたが、通常レベルを超える急騰のためさらに伸びる可能性もあるとした。
12月21日午後と22日早朝の高値でダブルトップを付けてから新たな高値更新へ進めずにいるので、22日早朝高値を直近のサイクルトップと仮定する。高値更新へ進めないうちは23日夜から27日深夜にかけての間への下落を想定するが、高値更新からは新たな上昇期入りとして25日早朝から29日朝にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では12月20日深夜からの急騰で遅行スパンが好転、先行スパンを突破したが、その後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試しとするが、遅行スパン悪化からは安値試し優先へ切り替える。またその際は先行スパンの下限が下値支持線となりやすいとみるが、急落商状で先行スパンから転落する場合はリラ安再開の動きへ向かいやすくなるとみる。

60分足の相対力指数は12月20日夜に80ポイント台へ急伸した後は50ポイント台から70ポイントまでのレンジ内での推移にとどまっている。50ポイント以上での推移中は一段高余地ありとみるが、50ポイント割れからはいったん大きな下落へ進みやすくなると注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9.00円を下値支持線、9.71円を上値抵抗線とする。
(2)9.00円以上での推移中は高値波乱余地ありとし、9.71円超えからは10.00円試しを想定する。10.00円以上は反落警戒とするが、9.00円以上での推移なら23日も高値試しへ向かう可能性が残るとみる。
(3)9.00円割れからは8円台中盤(8.70円から8.30円)を試すとみる。8.30円以下は反騰注意とするが急落商状発生の場合は8.00円前後試しへ下値目途を引き下げる。

【当面の主な予定】

12月23日
 20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
 20:30 週次 外貨準備高 12/17時点 (12/10時点 841.5億ドル)
12月24日
 17:00 11月 観光客数 前年同月比 (10月 99.25%)
12月27日
 16:00 12月 製造業景況感 (11月 108.4)
 16:00 12月 設備稼働率 (11月 78.1%)
12月30日
 16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 99.3)
 20:30 週次 外貨準備高 12/24時点
12月31日
 16:00 11月 貿易収支 (10月 -14.4億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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